コロナ禍を発想の転換に BFJ山中会長が感じた考えるきっかけ

 2021年、日本野球界悲願であったオリンピックの金メダルを獲得。そして、2022年、日本野球界としてリスタートの一年を迎える。アマチュア野球も国際大会の再開が予定される中、全日本野球協会会長(代表理事)である山中正竹氏に特別インタビューを行った。


第一弾は新型コロナウィルス感染症の影響で野球界の国際大会も全て中止になってしまった2020年、2021年の2年間を振り返ります。




ー コロナ禍の2年間、オリンピック以外の国際大会は全世代で中止。野球界・BFJとしても目の前の目標が見えない時に感じた「考えること」の重要性。

 まず、全日本野球協会という組織としての大きな役割の一つに日本の野球の国際的なプレゼンスを高めるというのがあります。国際組織の中で発言力を高めたり、競技力そのものの国際的な地位を高めていくといった強化を目指すものです。

 国際大会は若い世代にとっては教育的な効果という側面があり、「世界の野球を知ること」、「世界の仲間たちと野球を通して交流する」ということを通じて、自分の課題を見つめていく、自分の生き方を考えていくという、将来、人としての生きていく上で格好の機会であるというふうに捉えています。そんな経験ができる場が、この2年間失われてしまったことは、国際舞台を目指していた競技者にとってはもちろんのこと、我々も機会を提供できなかったことを非常に残念に思っています。

 しかし、この2年間が何もない2年間であったとは感じていません。むしろ、この間に改めて我々が「なぜ野球をプレーするのか」あるいは「野球の本当の魅力や価値は何なのか」そして、「これからの日本の野球界がどうあるべきか」という野球界として前進していくための考える時間になったのではないかな、と考えています。この考える時間は今後にも活かせます。特に学生や子供たちの競技者は、プレーをしながらも、野球の技術のことを振り返ってみる、あるいは考えてみるきっかけになると思いますし、指導者にとっては選手が野球を楽しいと感じるのはどんな時なのか、それをどう伝えていくのか、指導の仕方はどうなのかなどさまざまな考えるきっかけになったのではないかなと思います。

 もちろん世界中の多くの人々が本当に苦しんだ2年間でしたから、その中で安全や健康を考え、我々が楽しんでいるスポーツ、野球について、立ち止まって自ら「考える」という期間になったことは、ポジティブに捉えています。実際に指導者の方々から「集団で一緒に野球を語り合う場ができた」「中止や延期になり寂しい思いをしたけれど、その間にこんなことができた」という声も予想以上に数多くいただき、決して悪い2年間ではなかったと思っています。


ー BFJとしても働き方が大きく変わったコロナ禍。イベントやミーティングがオンラインに移行し、外部団体との潤滑なコミュニケーションのきっかけにも。   

 今までの業務では、国際的な視察や大会の現場に行くことがかなり多くの比重を占めていましたが、ほぼ全てなくなり、協会としてもリモートワーク、在宅勤務が導入されました。また定期的なミーティングや理事会などが、オンラインに移行され、徐々に慣れてくると、臨時的な意思確認の場や、短時間の打ち合わせなど日常的なコミュニケーションとして使われました。オンラインでの会話も増えることで、結果的に今まで以上に密なコミュニケーションが取れるようになりました。

 各団体とのコミュニケーションでは、国内統一組織としてWBSC(世界野球ソフトボール連盟)やBFA(アジア野球連盟)からの指示や考え方の国内での共有や、各カテゴリの主要な大会の中止や延期になる可能性が常につきまとう中で、アマチュア野球界全体のスケジュールへの影響の確認や感染症に対する野球界の方針(有観客での興行運営方法や専門家との連携方法など)の確認と共有、意見交換を行っていました。

 基本的にBFJの役割は、アマチュア野球界全体での普及振興や、育成年代の教育的観点での指導者問題、国際的な課題における旗振り役として指導していくことだと考えています。野球界の団体は、日本野球連盟、日本学生野球協会、全日本軟式野球連盟とそれぞれの組織に長い歴史があります。野球界としては、その歴史や背景など組織の多様性を認めながら、各々の組織が自立し、現場を理解しながら判断していく。この形が、アマチュア野球界の基本的なスタンスとなっていくと考えています。


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