
6月にさいたまスーパーアリーナで開催された「さいたまスポーツフェスティバル2025」。
埼玉県に拠点を置く各競技のプロスポーツチームや団体が出展し、ここではベースボール型スポーツの普及活動も行われた。
(写真/文:白石怜平)
5STARsの新戦力が尽力し、参加が実現
本フェスティバルではベースボール型スポーツとして、アーバンスポーツ「Baseball5」と野球体験の場が設けられた。
Baseball5では、加須市と上尾市を中心に活動している「5STARs」が今回担当した。「Baseball5でみんなと笑顔に」を理念に掲げ、強化と普及の両立を実現している5STARs。
六角彩子選手・數田彩乃選手・小暮涼選手らを擁し、1月に行われた「侍ジャパンチャレンジカップ 第2回Baseball5 日本選手権」では初の頂点に輝いた。
普及活動においては、加須市で毎年行う地域イベントの他にも国際交流も行っており、4月にフランス選手団を招いて「Baseball5 FRIENDLY GAMES in Kazo」を開催。Baseball5を通じて国境を超えた交流を深めてきた。
フランス選手団を招いた「Baseball5 FRIENDLY GAMES in Kazo」
今回はアリーナに訪れた子どもたちを対象にBaseball5の体験コーナーを用意した。2日間にわたり選手・スタッフが一つとなり、ボールを捕る・投げる・打つ楽しさを伝えた。
さいたま市が共催する大型イベントに進出を果たしたのだが、それは田中龍之介選手の尽力で実現したものだった。
学生時代は野球に打ち込んでいたという田中選手は、Baseball5の日本代表として今も活躍を続ける六角選手の特集記事を見て競技を知った。
今年の1月にチームへ入団後はプレーヤーとしてその魅力を肌で知りながら、自身の知見を活用した競技の展開に向けアプローチを行っていた。
「イベントの主幹をしている『さいたまスポーツコミッション』さんと仕事で関係がありまして、ぜひ一緒に取り組ませてくださいと提案させてもらいました。
Baseball5を子どもたちだけでなく、アリーナの来場者にも体験していただいたのですが、ぜひ今後は(屋外フィールドの)けやき広場でも実施したいというお話もいただきました」
今回イベント出展の立役者となった田中龍之介選手
5STARsはオープン・ユースから選手たちが時間の許す限り参加し、田中選手も教えながら子どもたちと触れ合った。
「未就学児や小学生の子たちも道具を使わずに自分たちの体だけでプレーできることから、Baseball5は非認知能力(主に日常生活・社会活動で必要とされる力)の向上につながると考えています。
5STARsとして普及活動にも力を入れているので、今後も一緒に取り組んでいきたいです」
2日間行い、多くの子どもたちが競技を体験した
“球場以外で行う”野球普及活動
本フェスティバルでは野球普及に向けた取り組みも行われた。全日本軟式野球連盟(全軟連)も出展し、「野球って楽しいよ!」イベントが催された。
昨今野球界の課題として言われているのが、野球人口の減少。全軟連も危機感を持っており、率先して野球の楽しさを伝える活動を企画・展開している。
その一つの例が「野球であそぼー!」という体験イベント。
野球や他スポーツ経験の有無問わず、「投げる」・「打つ」・「走る」という野球の動きを通じて体を動かす企画である。
昨年は、神宮球場で開催された「高円宮賜杯 第44回 全日本学童軟式野球大会 マクドナルド・トーナメント」の開会式後に実施し、プロ野球選手も普段使用するグラウンドを子どもたちが元気いっぱいに駆け回った。
昨年8月に神宮球場で開催した野球体験イベント「野球であそぼー!」
今回行われた「野球って楽しいよ!」イベントも上記同様に、野球やスポーツ未経験で特に野球と接点が薄い層の子どもたちを対象に展開している。
競技人口減少に歯止めをかけると共に、気軽にできる野球体験の場を提供することで、子どもたちの心と体の健全な成長に寄与することを目的としてスタートした。
24年3月に第1回が行われて以降、東京・神奈川・埼玉で9回行われている。
特徴は会場を野球場やその付近に設定せず、フリーマーケットやショッピングモール、今回のような総合スポーツイベントの場であること。
従来の体験イベントは野球場を中心に行われていたが、野球経験者や馴染みのある子どもたちが中心となっていた。そのため、全軟連は「野球に接点のない子どもは野球場には来ない」ことを踏まえて再考した。
家族で行くスポットで野球体験の機会を設けることで、「もう一度やってみたい」、「野球チームに入ってみたい」と次のアクションに繋げる発想へと至った。
多くの親子が参加し、投球や打撃を存分に楽しんだ
今回は昨年11月に同じさいたまスーパーアリーナで開催実績があったことに加えて5STARsとも連携。六角選手からの声かけもあり、出展が実現した。
この日参加した子どもたちやその家族も、野球とBaseball5の両方を楽しむ貴重な機会となった。
「野球って楽しいよ!」イベントは首都圏3都県で行われているが、今後全国での開催を目指している。全軟連の吉岡大輔事務局長は展望を以下のように述べている。
「イベントを継続しつつ、全国47支部への展開に向けて各支部でも開催しやすい形態を作り上げている段階です。
直近では9月に茨城県水戸市で開催予定でして、西日本でも奈良県でもショッピングモールで開催する構想で進めています。
東・西でモデルケースとなるような地域を選定しつつ、より多くの子どもたちに野球への第一歩を踏み出してほしい想いです」
ベースボール型スポーツの普及拡大は各チーム・団体で工夫を凝らしながら行われている。今後も全国へと拡げ、野球を通じて地域も活性化させていく。
(おわり)
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