
6月19日、新たに「ジャパンサマーリーグ」が開催されることが発表された。高校球児たちの最後の夏が、人生の新たな可能性が見出される期間となる。
(取材 / 文:白石怜平、写真提供:株式会社ジャパンリーグ)
ジャパンリーグとして初、夏季新リーグが発足
ジャパンサマーリーグは高校3年生を対象にした夏のリーグで、8月2日〜8日までの7日間、沖縄・嘉手納球場で行われる。
22年から3年間開催している「ジャパンウィンターリーグ」では、主に国内外の社会人選手を対象にしてきた。
昨年は初めてNPB3球団が参加し、さらに独立リーグも含めたプロ野球選手も参加するリーグへと発展を遂げている。ただ「プロアマ規定」が存在するため、学生選手は参加することができない。
株式会社ジャパンリーグは22年の発足時から、「陽の目を見ない場所に光を」を掲げており、今回は高校3年生の高校球児にスポットライトを向けた。
同代表の鷲崎一誠氏は、ジャパンサマーリーグ開催に向けた想いをこのように語っている。
「甲子園出場を目指した予選を終えて、出場が叶わなかった選手たちが個人参加できるプラットフォームとして開催します。
参加選手はさまざまな目的があっていいと考えています。スキルアップ、思い出・仲間づくり、さらには進路についても考える場所としても提供していきます。
全国からさまざまな選手が集まる、“アスリートとしてのオープンキャンパス”をつくっていきます」
「アスリートとしてのオープンキャンパス」を構築する
ジャパンウィンターリーグに参加する選手も、十人十色の目的を持つ選手が門を叩きに沖縄へと足を運んでいる。今回も一貫した方針を掲げているのは、鷲崎氏の経験がルーツになっている。
慶大野球部で内野手だった鷲崎氏は、大学時代に公式戦への出場が叶わなかった過去を持つ。引退後、自らを見つめ直し挑戦したのが米カリフォルニアのウィンターリーグだった。
そこで活躍を見せた鷲崎氏は、野球への未練を断ち切ることができたのだという。
「例えば、これまでベンチ入りもできず、出場できずに悔しい思いをしてきた選手たちも、ぜひ参加してほしいという思いがあります。僕としてはそういった選手に光を当てる目的が一番強いので。
今まで3年間継続してきたので、どれだけ自分の力がついたのか試してみたい。そんな選手もいると思います。ここで披露することによって、自分の努力の成果やレベル感が分かってきます。
そこでもしかしたら『自分でもっとやれるかもしれない』と、一度諦めかけても継続したいと思える可能性が湧くのではないかと。もちろん選手として区切りをつけて、次の挑戦に向いている人たちも大歓迎です。
18歳という年齢は、未来の可能性が無限大だと思っていますし、人生において糧となる一週間にする自信が我々にはあります」
展開される4つの特徴
ジャパンサマーリーグの代表を務めるのは知花真斗氏。代表に就任するにあたり、鷲崎氏に続いて意気込みを語った。
「不運な怪我やタイミングのずれでチャンスを潰してしまった選手や、実戦機会に恵まれない選手もたくさんいます。
そういった選手たちに、真剣勝負で野球をする環境を提供します。
野球を通して人とつながり成長できる、このジャパンサマーリーグを経験した人材が社会に貢献していくことで、沖縄から世界の野球を変えていきたいです」
ジャパンサマーリーグ代表の知花真斗氏
知花氏からは、ジャパンサマーリーグには4つの特徴があることが説明された。
一つ目は実戦環境の提供。参加人数は80名で、7日間の期間中全員が毎日試合に出場する機会を設ける。4チームに分けて、打者は7試合で22〜28打席・投手は7試合で6〜9イニングが予定されている。
二つ目がスキルアップ。ジャパンウィンターリーグ同様に、BLASTやトラックマンといった最新の分析ツールが全試合・全打席で導入される。
そのデータはコーディネーターやアナリストが試合中に即時フィードバックし、感覚と数字をすり合わせながら短期間での修正へとつなげていく。
ヘッドコーディネーターに元ポーランド代表監督でもある渡辺龍馬氏が就任。
その他コーディネーターにはソフトバンクで10年間コーチを務めた佐久本昌広氏などが名を連ね、科学的な側面だけでなく配球やメンタル面についてもアドバイスを受けることが可能である。
知花氏が三点目に挙げたのが人との出会い。
ジャパンサマーリーグも“野球界のプラットフォーム”としての役割を担うことから、全国から集まってくる同じ高校3年生の球児たち・コーディネーターやトレーナーなど多種多様な人が集まってくる。
この新たな出会いが、参加した球児たちの今後のキャリアを考える一つのきっかけになってほしいという願いが込められている。
最後はそのキャリア形成に向けて将来を考える機会の提供。
ジャパンウインターリーグでも講習会が展開されており、毎度大盛況となっているが、サマーリーグでもレベルアッププログラムと題したカリキュラムが用意される。
鷲崎氏や渡辺氏に加えて、パフォーマンスコーディネーターやモチベーションマネージャーの面々が講師を担当。野球のスキルアップからキャリアプログラムまで、全6回が予定されている。
沖縄県の高校野球に感じた“高いポテンシャル”
開催地は沖縄県であるが、それはジャパンリーグが掲げる「野球界の登竜門を沖縄に」というもう一つの理念に基づいている。
鷲崎氏や知花氏らがウィンターリーグを通じて築き上げてきた地域、そして関わってきた人たちとの固い信頼関係があった。
加えて鷲崎氏が県外出身者かつ野球経験者としての立場から、沖縄県の高校野球を見て感じたことがあったのだという。
沖縄の高校球児のポテンシャルを感じている
「沖縄県の選手のポテンシャルがとても高いと感じています。身のこなしや動き方もですし、県外に多くの選手が飛び立っているにも関わらず、今春のセンバツに2校(エナジックスポーツ・沖縄尚学)出ています。
ただ私から見て、沖縄県の高校野球選手を見ると卒業後の野球継続者が割合的に少ない印象を抱いています。
勉強面や経済面など理由はさまざまあると思いますが、これらの選手が1%でも多く野球を続けることができたら、日本の野球界はさらに変わるのではないかと。それほどレベルが高いと思いました。
今チームで10番目、11番目であっても可能性を秘めた選手がいるので、そういった選手にもチャンスを与えたい。そんな考えもありました」
日本高校野球連盟や沖縄県高校野球連盟とも会話を重ね、開催の実現へと至ったというジャパンサマーリーグ。
ウィンターリーグに続く新たな柱として8月、ついに幕を開ける。
(おわり)
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