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1月13日、アリーナ立川立飛で「侍ジャパンチャレンジカップ 第2回 Baseball5 日本選手権」が行われた。
野球型アーバンスポーツ「Baseball5」における日本の頂点を決めるべく、立川で熱戦が繰り広げられた。
(取材 / 文:白石怜平)
ボール一つでどこでも、誰でもできる野球型アーバンスポーツ
野球・ソフトボールの国際振興の一環として2017年に誕生し、現在世界で普及を見せている「Baseball5」。
現在は80以上の国・地域以上で行われており、2026年にはダカールで行われる15歳から18歳までを対象にしたユースオリンピックの正式競技となるなど、更なる発展が期待されている。
選手権ではユースの部も設けられた
ルールは男女混合の5人制。内野手4人に加え、”ミッドフィルダー”と呼ばれるポジションで守る。5イニングの2セット先取制で行われ、「5」が競技名の所以となっている。
大きな特徴は「ボール一つでどこでも、誰でもできる」こと。軟らかいボールを使うのみで、グローブやバットは使用しない。
男女混合、ボール一つでプレーが展開される
21m四方のフィールドという野球の内野よりも小さな構成で屋内外問わずプレーでき、1試合の時間は約30分(2セット先取制)というスピーディーさもあるなど、野球と異なる魅力を各所で感じることができる。
さらに会場ではDJブースで音楽が流され、MCの掛け声と共にスタンドからの歓声が選手のプレーを引き立たせ、時代の先端を走るアーバンスポーツらしい雰囲気が醸成されている。
DJやMCと共に会場のボルテージも上がっていった
国際的な観点でも日本は「WBSC Baseball5 ワールドカップ」で2大会連続準優勝の成績をマークしており、野球同様に世界を代表する国として強さも誇っている。
ユースでは2年連続で横浜隼人と市立船橋の対戦に
この日は日本選手権のFINALとして行われた。
昨年11月下旬から12月にかけて、15歳以上が対象のオープンの部で3ブロック(西日本・中日本・関東)とユース(ここでは14歳〜18歳)の予選が行われ、勝ち抜いたチームが集結した。
本大会ではまた一つ大きなムーブメントが起きた。高校・大学野球史に残る活躍を見せ、プロでは北海道日本ハムでプレーした斎藤佑樹氏がBaseball5 JAPANのスーパーバイザーに就任した。
斎藤氏はBaseball5について開会式での挨拶や、直後に行われた記者会見で「野球界に革命を起こすと確信しています」と述べた。
開会式の最後には始打式で打者役を務めた
斎藤氏が”革命を起こす”要因として挙げた一つが、現役の高校球児もBaseball 5の選手として参加したことだった。
従来の慣習からアップデートされた画期的な取り組みで、昨年同様に野球部やソフトボール部、さらにはマネージャーもユースの選手としてプレー。
そのユースの決勝は現役高校生のチームである「横浜隼人Aggressive」と「市立船橋5」の対戦となった。
横浜隼人高校は男子・女子それぞれ硬式野球部員で構成され、昨年は「横浜隼人高等学校A」として優勝している。今回はAggressiveに加え、「横浜隼人Brave Heart」と3年生による「NEXUS65」の計3チームが出場した。
横浜隼人高校からは”Brave Heart”(写真左)と”NEXUS65”(同中央)が出場した
また、市立船橋高校からは「ICHIFUNA5」と2チームで構成され、市立船橋5は昨年決勝へと進出しており、2年連続同校での対戦となった。
決勝戦は第1セットから白熱した展開となる。両者一歩も譲らず、5回を終え3−3の同点に。その後延長戦は8回まで進み、市立船橋5が先取した。
2大会連続決勝進出となった市立船橋5
しかし第2セットは横浜隼人Aggressiveが取りタイにすると、最終第3セットも勢いそのままに点を加え、7−3でゲームセット。
ユースの部は横浜隼人Aggressiveが頂点に輝き、同校としては2連覇を達成し。男性MVPは星優大、女性MVPは蛭田真白が選出された。
優勝した横浜隼人AggressiveとMVPを受賞した蛭田(写真左)・星(同右)
5STARsが”守り”と”絆”で初優勝
オープンの部で優勝したのは「5STARs」。3試合の激闘を制し、初の選手権制覇を果たした。
5STARsは21年9月に誕生して以降、第1回の覇者である「ジャンク5」らとともに日本のBaseball5を牽引している。
上述の国際大会で日本代表を務める六角彩子と村山智美の2人で立ち上げ、現在は六角とともに世界の舞台で戦い続けている數田彩乃も中心を担う。
チームそして日本の中心選手でもある六角(写真右)と數田(同左)
「Baseball5でみんなと笑顔に」を理念に掲げ、拠点を置く埼玉県加須市を中心に強化そして普及活動を行っている。
5STARsの初戦は昨年に続きジャンク5と対戦することになった。
ジャンク5も日本代表を輩出しており、侍ジャパンBaseball5代表の指揮官でもある若松健太監督のもと、同じく侍ジャパンで主将を務めた島拓也など4人の代表経験者が名を連ねている。
昨年10月のワールドカップで共に日の丸を背負った選手同士が、ここではライバルとしてしのぎを削った。
昨年は0−2で初戦に敗れた5STARsは、一年かけて鍛え直した。主将の小暮涼はこの間の取り組みについてこう語った。
「まずは個人の能力アップ。代表2名がチームに戻ってからはチームでの連携や、守り勝つ試合運びを想定した練習をメインに取り組みました」
”守り勝つ”方針を一年間かけて徹底させた(写真は村山智美)
また、男性選手で小暮と共に攻守で牽引する金城義もここまでのテーマを挙げた。
「テーマは明確で”ロケットスタート”。Baseball5は展開が速く、一度傾いた流れを動かすのは難しいスポーツです。ゲームの流れを先に掴めるように、打撃は一打席目、守備は一つ目の打球、この一球に120%の力を発揮できるような準備に時間を使いました」
迎えたジャンク5との一戦は2-0で勝利。計10イニングで失点は1のみと、日本代表選手も多く出場した相手に得点を許さなかった。小暮は試合を振り返り、
「昨年の我々はミスから失点が多く、相手有利に試合が進んでいたので思い通りにならなかったですが、今年は失点が少なく有利に試合運びができたので、そこが勝負の決め手になったと思います」
と、方針通り守備から主導権を握った試合となった。
小暮も積極的な守備でアウトを重ねた
続いてSpirit Bondsとの対戦。六角は「この試合が一番難しいと思っていました」と、その理由を語った。
「初戦の大一番をなんとか切り抜けた次の試合、チームの気が緩みやすく、負けてしまうことはよくあります。だからこそ、『集中して行こう』『気合い入れて行こう』とより意識して試合へと入りました」
試合はフルセットまでもつれたが、最終セットを5−2で制し決勝へと駒を進めた。
Spirit Bondsとも最後まで熱い試合となった
そして決勝は昨年準優勝のGIANTS。その名の通り、読売ジャイアンツに所属しているメンバーで構成されている。
ワールドカップで代表コーチを務めた中濱瑞樹や元巨人選手の黒田響生、そして読売ジャイアンツ女子チーム所属で22年にはBaseball5でも日の丸を背負った田中美羽らが出場した。
日本代表経験もあるGIANTSの田中美羽
大会の最後を飾る決勝戦、5STARsは第1セットを奪うとGIANTSも奪い返し、ここでも勝負は最終セットへ。お互い絶対に落とせない試合前の状況を六角が明かしてくれた。
「1セット目を取った後、チームで明らかに"疲れ"を感じさせるプレーが増えました。私自身もそうでした。だからこそ3セット目が始まる前に、『最後の最後、試合が終わるまで疲れは見せないようにしよう』とチームで約束しました。選手達全員疲れはピークだったので、最後は気力勝負でした」
最終セットは5STARsが着実に走者を進めながら点を重ね、スコアは10−1。快勝で締め、選手権初優勝を決めた。
優勝を決め、歓喜に沸く5STARs
両MVPが語った自身と感謝
決勝戦後に行われた表彰式。ここで特別ゲストが登場した。
ワールドカップで日本と優勝を争った発祥国キューバの大使館から、ダイロン・オヘダ 一等書記官が駆けつけた。
表彰式で挨拶したダイロン・オヘダ 一等書記官
オープンの部ではそれぞれ5STARsから男性MVPが金城・女性MVPは六角が選出された。
金城は3試合全てで打率5割以上をマークし、守備では昨年から挑戦したというミッドフィルダーとして相手の目の前に立ちはだかった。
「大きな波がなく高いアベレージでプレーができました。5STARsの得点源という自覚はあるので、とにかく出塁ができて良かったです。
守備に関しては準決勝と決勝で、相手の進塁打をノーバウンドでキャッチしてダブルプレーというのもあり、ゲームの流れが大きく変わりました」
と自身も手応えを述べた。続けて、
「初戦(ジャンク5)の一打席目にしっかりヒット打てたことは大きかったです。緊張は一切なく、ライバルとのひとつひとつの勝負を楽しめたことがMVPという結果に繋がりました」
と上で述べた”ロケットスタート”を大一番で発揮できたことが要因となった。
気迫溢れるプレーを見せたMVPの金城
六角は自身の活躍もさることながら、ここまでのプロセスとして大きな感謝を述べた。
「間違いなく仲間の存在が大きいです。大会前に悩んでた時でも声をかけてくれた仲間がいて、監督・コーチも一緒に練習に付き合ってくれた。
さらには中学生選手達もチームが勝つために共に一生懸命練習してくれて、応援もしてくれた。全員で勝ち取った優勝なので本当に嬉しいです。MVPを頂けた事は大変光栄で嬉しい事ですが、仲間への感謝が大きいです」
仲間への感謝を厚く述べた六角
また、その仲間で特に刺激を受けたという選手の名を挙げた。
「梅林(遼太)さんが試合に向けてコツコツと一生懸命に練習する姿勢には本当に刺激を受けました。私だけではなくチームみんなの良い刺激になっていたと感じます。その梅さんが試合で大活躍だったのがとても嬉しかったです」
全試合に出場し活躍を見せた梅林遼太
今回も大きな盛り上がりを見せ、幕を閉じた日本選手権。各チームさまざまな形で普及活動を行うとともに、今年はユースの国際大会(アジアカップ)も控えている。
Baseball5がさらに広がる2025年は、熱狂から幕を開けた。
(おわり)
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