9月2日〜8日に台湾で行われた「第13回 BFA U18アジア選手権」。
侍ジャパンU-18代表はスーパーラウンド初戦まで4連勝を飾り決勝に進出。4連勝目を飾ったチャイニーズ・タイペイと再び対戦し、惜しくも敗れるも準優勝の成績を収めた。
この7日間は、打撃技術で感じたことや今後日本が世界で戦う中で必要なことなど、気づきと確信を得た期間になった。
代表として戦った期間を振り返るべく、チームの指揮官を務めた小倉全由監督(前日大三高監督)に話を伺った。全3回に分けてお送りする。
打撃で小倉監督が感じた”違和感”とは?
侍ジャパンU-18代表はオープニングラウンドの3試合(香港・スリランカ・フィリピン)で52得点を挙げ全勝、スーパーラウンドへ進出。
しかしここでは、チャイニーズタイペイ・韓国と対するも、2試合で1得点と打線が相手投手陣に抑えられるシーンが目立った。
実は、その前から小倉監督はある違和感を感じていた。
「自分が感じたのは、選手たちがスイングするときにバットが体から離れていたんですよ。もしかしたら、フライボール革命などでスイングが違ってきたのではないのかと。
大谷翔平選手らが高校生だった当時(12年)に世界選手権で監督をしていた時には、バットの出方に違和感を感じなかったんです。でも今回はすごく感じたんです」
違和感が残った小倉監督は帰国後、指揮を執っていた日大三高時代の映像を見直したという。
「そしたら、体から離れて振ってる選手はいなかったんですよ。やはり、正しいバットの軌道というのはあるよなと感じました」
ただ、チャイニーズ・タイペイと再び相対した決勝戦では、10安打と打撃陣が盛り返していた。その要因は決勝前の練習にあった。
「決勝戦の前には選手たちがティーバッティングの時にバットの出方を意識してきたんです。
自分たちが打てなかったと感じたんじゃないかなと思います。韓国とチャイニーズ・タイペイの投手の球は速かったですから。それを踏まえて、次の試合はどうしたらいいのかと自分たちで考えて変わったんです。
練習の中では『バットの出方はこうだよ』・『こうヘッドを走らせるんだよ』などと伝えてはいましたが、この短期間で今までのバッティングスタイルを変えるというのは難しいですよね。
でも、自分がティーバッティングを見てからあの試合で変わったと感じましたし、選手たちの意識は私にも伝わってきました。実際、2試合ヒットがほぼ出なかったのが、最終戦は10本も出てくれたわけですから」
選手たちが自ら考えて打撃を見直した
その中で、特に活躍を見せ印象に残った2人の名前を挙げた。
「広陵の濱本(遥大)くんと明徳義塾の山畑(真南斗)くん。あの小柄な2人(※)が、ヒットをよく打っているんです。
濱本選手が表彰されて帰ってきたから『濱本それ何の表彰?』って聞いたら『首位打者です!』って言われてそうか!と。嬉しくなりましたよ」
(※濱本は172cm / 70kg・山畑は165cm / 58kg)
濱本は19打数12安打でなんと打率.632、山畑も8打数4安打の打率.500。決勝でもそれぞれ3安打、1安打と結果を残した。
大会首位打者に輝いた濱本
本大会で改めて掴んだ”確信”
打撃で好成績をマークし、その例として挙げた山畑。小倉監督は、当初はこのような意図で選んだという。さらにそこから得た”確信”があった。
「私は当初、山畑くんは内野をどこでも守れるということで選びました。仮にヒットが出なくても、山畑くんであれば堅実な守備で凌いで、バントなどで繋いでくれるなと。しつこく粘れる選手ですし、塁に出れば走ってもくれますから。
彼の活躍を見て、自分が指揮を執る中で『こういう選手が9人の中に必ず入れないといけないな』と確信したんです」
打撃だけでなく、守備・走塁でも力を発揮した山畑
日大三高での監督時代は”強打の日大三”と称され、2度の全国制覇を成し遂げた。ここでは打ち勝つ野球が主にクローズアップされてきた。
しかし百戦錬磨の名将はそのまま踏襲するのではなく、対戦相手や大会に合わせた野球を展開できるようメンバーを考え抜き、チーム作りを行っていた。
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