ジャパンウィンターリーグがいよいよ開幕!”世界中の野球の登竜門”はさまざまな進化を見せ、新たな道を拓く1ヶ月に

11月23日からジャパンウィンターリーグ(以下、JWL)が沖縄で開幕する。

第3回を迎えるにあたり、1年の間で大きな進化がいくつも起きた。

今回はその見所でもあるアップデートを振り返るとともに、注目すべきポイントを紹介していく。


ここ沖縄で「自分自身が成長できる」1ヶ月に


JWLは22年から行われている日本初のトライアウトリーグ。


11月下旬から約1ヶ月の間、沖縄県で行われている本リーグは、日本のみならず海外の選手も参加しており、計139名が一堂に会する。


海外選手も挑戦の場として参戦している(提供:ジャパンウィンターリーグ)



集まったメンバーでチームを結成し、リーグ戦を開催。

試合では球場内にデータ測定機器を設置し計測結果を都度フィードバックするなど、実戦経験を積みながら選手の技術向上のサポートを行っている。


NPBやMLBなど30チーム以上のスカウトが視察に訪れており、JWLをきっかけに新天地が決まる選手もいる。


その他にも所属チームでのステップアップ、そして次なるステージに向けた場になるなど目的・成果はさまざま。


運営方針として、


「陽の目を見ない場所に光を」


「野球界の登竜門を沖縄に」


という2つを掲げており、この場に集った野球人にとって新たな可能性が広がる1ヶ月となっている。



JWLを立ち上げた鷲崎一誠代表は、以前Homebaseの取材にて、


「僕の願いはこの1か月間参加して『自分自身が成長できた』と実感していただくことです。NPBやMLBに行くといったアピールの場でももちろん活用いただきたいですが、野球にピリオドを打つ選手がいてもいいと思うんです。

選手が長年やってきた野球を”やりきった”と思える、そんな環境にもなればいいなと考えています」


と、自ら作り上げている場について語っている。


また、試合以外でも講習会が用意されており、上述のデータ活用方法そしてメンタル面についても学ぶことができる。


海外のウィンターリーグは決まった期間に試合を行うのみであるが、鷲崎代表は”日本のウィンターリーグならではの付加価値”を考えて構築している。


「JWLに来た選手には何かしら成長してもらいたいのです。なので技術面に加えて、メンタルさらにはキャリアなど様々な角度から刺激を与え、選手の満足度を向上させていくのが日本のスタイルだと考えました」


「アラボーイベースボール根鈴道場」の根鈴雄次さんも講師を務めた(提供:ジャパンウィンターリーグ)



今年はNPB球団が参加するなど大幅なアップデート


JWLでは参加する選手を6チームに振り分け、1日3試合・18日間かけてリーグ戦を行う。


加えて最終日に上位チームでのプレーオフ、さらに日本選手と海外選手との交流試合も開催され、全体で60試合近くが予定されている。


リーグは、15歳以上の野球経験者で新たな挑戦を目指す選手が参加する「トライアウトリーグ」と、プロや社会人・海外プロチームの選手が実戦を通じたスキルアップを図る「アドバンスリーグ」の2つが設けられている。


6チームをそれぞれ3チームずつに振り分け、全員が出場機会を得られるような形となっている。


第3回を迎えた今年、第2回から大きな変化が見られている。


まずは参加選手の数で、昨年101名から139名へと増加した。その中で最も大きなアップデートとなったのが、今回NPB球団が参加することである。


6月に埼玉西武ライオンズが初めて参加を表明。加えて10月には東北楽天ゴールデンイーグルス、11月には横浜DeNAベイスターズがアドバンスリーグへの派遣を発表した。


6月には西武が記者会見にて参加を発表した(筆者撮影)



DeNAが2選手に楽天が5選手、そして西武は3選手に加えて指導者育成のためにチームスタッフを4名派遣する。


西武は6月に記者会見を開き、鷲崎代表とともに出席した飯田光男 球団本部長(現:常務取締役)は、


「NPBの球団からJWLに派遣することでリーグの認知度が向上し、参加団体がさらに増えることを期待しています。

プロとアマチュアの交流がさらに深まることで、野球界の発展に寄与できると考えています」


と参加する意義を語っていた。


10月の会見では、リーグの大野倫ゼネラルマネジャー(GM)もプロ野球選手としてプレーした経験を踏まえ、以下のように説明した。


「ウィンターリーグは主に中南米を中心に行われていますが、日本人選手が参加する目的としては、”海外勢の速い球や変則的なボールを打ちたい”・パワーヒッターを相手に投球を組み立てたい”といったものがあります。


日本の選手とは全く性質が異なり、私も選手時代に外国人投手を攻略する難しさを感じていました。


昨年のJWLでも海外選手が多く参加し、150km/h以上を投げる投手もいましたので、我々が評価いただいたのは、中南米に行かなくても日本で経験を積める点です。

このようなアクセスや環境にメリットを感じ、参加表明をいただいたと思います」


また、第2回では31名だった海外選手も79名へと大きく増加。アメリカや中南米の選手に加え、ヨーロッパやオーストラリアの選手もラインナップに名を連ねている。


アジアにおいても中国野球協会から選手の派遣が行われることになり、中国代表U23をメインとした構成で、「TEAM RISING STAR OF CHINA」として26名の選手が参加する。


また、CPBLからは統一ライオンズ2名と中信兄弟から5名、そしてKBOからは斗山ベアーズ1名の参加が決まっており、国際色がより豊かになったウィンターリーグが展開される。


鷲崎代表も立ち上げ当時から海外選手の参加には特に力を入れており、


「アマチュア選手のみならず、世界中の選手たちにも光を当てたい。”世界のジャパンウインターリーグ”をアピールすることが挑戦です」


と、今後もさらに海外選手の受け入れを図っていく。


”世界のジャパンウインターリーグ”への挑戦は着実に身を結んでいる(提供:ジャパンウィンターリーグ)


DAZNと業務提携し、全試合無料視聴が可能に


今年のJWLは11月23日(土)〜12月19日(木)の27日間、沖縄市のコザしんきんスタジアムで行われる。


試合は球場で入場料無料で観戦できるとともに、今回は「DAZN」と業務提携を締結。全試合を独占無料ライブ配信が行われることになった。


上述の10月での会見は、JWLとDAZNの共同記者発表会として行われており、「DAZN Japan Investment合同会社」最高経営責任者の笹本裕氏も出席していた。


ユーザーからは「一年間野球を観たい」という声が多く届いているそうで、笹本氏はその意見を踏まえて、


「日本シリーズを終えた後でもファンのみなさんとお繋ぎできるメリットは大きいと思います」と語った。


DAZNで全試合を配信することになった背景については、野球人口の減少に危機感を抱いていることがトリガーだとし、


「DAZNとしてできることは、何か力になれないかを考えていました。我々は『スポーツで日本を元気にする』という想いで、配信を超えて日本のアスリートを応援できることに意義を感じている。


プロを目指すアマチュア・ユース世代に光を照らすことで、日本野球という世界に誇るべきスポーツの発展に寄与したい想いで提携を決定しました。


プロ野球とは一味違った、選手の方たちが貪欲に自らの夢を追いかける姿は心に訴えるものがあると考えていますし、DAZNを通して未来のプロ野球選手を応援できたら嬉しいです」


と笹本氏は想いを述べた。なお、試合終了後も見逃し配信を実施し、リアルタイムで視聴できなくても後からチェックすることが可能となっている。


DAZNと業務提携し、全試合を無料で視聴できる(提供:ジャパンウィンターリーグ)



第3回目を迎え、大きく進化を遂げているJWL。


鷲崎代表は今後の展望として、


「世界の野球界での登竜門にしていきたいです。世界中の選手が集まることで、世界No.1のウィンターリーグが日本の沖縄にあることを示したい。

野球界の”ハブ”になれる存在だと思っていますし、海外含めて様々な団体を巻き込んでJWLというプラットフォームをつくり上げていきたいです」


という想いを抱いている。世界中から様々なレベルの選手が沖縄に集結し、同じグラウンドで切磋琢磨する1ヶ月間。


沖縄で培われる新たな絆が化学反応を生み出し、世界の野球界のハブはさらに広がっていく。



(取材 / 文:白石怜平)

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