監督を置かない高校野球チームは機能するか? 「リーガ・サマーキャンプ」の“異例”の取り組み


高校3年夏の甲子園に出場できなかった52人の選手たちが参加費26万9500円を払ってエントリーし、8月7日から18日にかけて北海道栗山町民球場とファイナルのエスコンフィールドHOKKAIDOを舞台に「リーガ・サマーキャンプ」が開催された。


一般社団法人「ジャパン・ベースボール・イノベーション」の主催で行われたこの取り組みでは、チーム単位ではなく個人で参加者が募られたことに加え、さまざまな独自ルールが設けられた。


・リーグ戦で実施(※全4チームが2回戦総当たり形式で順位を決定。1位チームと、プレーオフを勝ち抜いた1チームがエスコンフィールドでのファイナルに進出。下位2チームは同球場で打者一巡方式のミニゲームを実施)

・木製バットを使用

・球数制限を設定(1試合120球が上限で、登板間隔の推奨ルールとして100球以上投げたら中3日、100球未満は中2日、80球未満は中1日、60球までは連投可能)

・7イニング制で行った試合も(第1節とファイナルは9イニングで実施)

 

加えて大きな特徴の一つが、各チームに監督は不在で、代わりにコーディネーターが置かれたことだった。



“即席チーム”をどうまとめるか


「全国各地からいろんな高校生がやって来て“即席チーム”のような感じです。練習は1日だけで次の日から試合だったので、サインプレーやチームワークをどう築き上げていけばいいのかという不安がありました」


そう話したのが、慶應大学1年生でアギラスのコーディネーターを務めた寺井幹太だ。普段は母校の慶應高校野球部で学生コーチとして指導し、リーガ・サマーキャンプの企画趣旨を聞いて「面白そう」と参加した。

 

寺井と同様、普段は慶應大学に通いながら慶應高校野球部で学生コーチを務める細井克将も、エストレージャスのコーディネーターを務める上で心配があったと語る。


「育った環境や異なる教育を受けてきた選手たちが一つのチームとして試合をするなか、打席の入り方やポジショニング、リードの取り方などをチームとして統一するべきか。高校野球ならそうすると思いますけど、選手たちには2年半やってきたものがあります。そこに葛藤があったけれど、それぞれ積み上げてきたものをやってもらうことにしました」

 

リーガ・サマーキャンプに参加した全52選手にはドラフト候補に挙がる者や、大学経由でプロを目指す者、強豪校で一度もベンチ入りできずに消化不良の者、普段はアメリカのIMGアカデミーでプレーする者など、実力や志望動機は多岐にわたった。



「自信を持って羽ばたいてほしい」

 

一方、コーディネーターを務めたのは4人の大学生だった。慶應高校時代の2023年夏に107年ぶりの日本一を達成した寺井と細井、そして弘前聖愛高校野球部出身で現在は弘前学院大学に通う工藤天晴と平間一基だ。


「リーガ・サマーキャンプを開催するにあたり、『選手たちに自信を持って羽ばたいてほしい』と目標を掲げました」

 

細井がそう考えたのは、自身の高校時代と関係がある。慶應高校3年時の春季関東大会まで内野手としてベンチ入りしていたが、全国制覇を達成した“最後の夏”は肩のケガでメンバー外となった。戦線から離れるなかで自信をなくし、「野球が楽しくない」と思う時期もあったという。


「リーガ・サマーキャンプに来た人たちにはそういう思いをしてほしくないので、うちのチームでは出場機会をできるだけ平等にしました。試合でもサインはなしで行こう、と」

 

高校野球では監督がチームの方針を決めるケースが多いだろうが、リーガ・サマーキャンプではコーディネーターがまとめ役となって選手たち自ら決定した。



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