限られた時間の中で、“効率的”なものを求めがちな現代社会。スポーツの現場においてはそれがトレーニングや練習メニューに影響を及ぼし、かつてのような根性論を盾にした取り組みに対する風当たりは、以前よりも強くなっている。加えて、プレーをする選手たちのメンタリティーも、自主性という言葉に逃げて、効率的な取り組みの“はず”が、そうではない実態となってしまっているケースが多い。
逃げてしまう理由のひとつは、選手たちが本質に気づけていないということだ。
効率性を求める選手たちの、向上心を刺激して、必然性を上げる=自ら取り組ませる、というのがいまの時代の指導のヒントかもしれない。
「キャリアの最後がトーナメントで決まってしまう高校野球における現実とのギャップがあり難しいのですが、スポーツの本質は、勝つか負けるかがわからないから楽しい、という部分がひとつなのです。プロ野球の世界においても、優勝チームの勝率は6割ぐらいなわけで、10試合戦えば4回は負ける。打撃で言えば、10打数のうち3回成功すれば優秀とされるスポーツなのです。効率化を求めて最短距離を走って、なにを成し遂げたいのか。そのゴールの部分が、“勝利至上”なのであれば、自分を追い込むといった方向性になると思いますが、決してそうではなく、よりよい戦いができるようにパフォーマンスを上げる!ということなのであれば、そこに注力できるようにコントロールしてあげることが必要になってくる。そうすれば選手たちがモチベーションを理由にサボるようなことはないと思います」
恵まれた環境にいるいま、未来を描きながら取り組む必要がある
野球人口の減少が謳われるようになってから10年以上のときが過ぎている。いろいろな施策を投じながらも、まだ、そこに歯止めはかかっていない。ここに対する答えのひとつに、考え方の変更があると高畑先生が語る。
「正直に言って、野球界というのは恵まれているとは思います。シーズン中は毎日のように興行が行われていて、何万人という多くの人たちが球場に足を運んでくれている。これって特別なことですよね。それぐらい大きな文化になっているからこそ、プロの選手たちの中にも、なぜ、野球をやっているかということに悩んでいる選手がいます。給料をもらうために野球をやっているのか、野球をやっていて、結果的に給料をもらえているのか。プロの世界でいくと、前者のような考えに至ってもよいわけですが、学生において考えるべきは、野球をやらされている、義務的にやっている、とことでよいはずはないと思います。そこからは、なにも生まれないと思いですよね。野球のさらなる普及、という観点においても、たとえば小学校から中学校に上がるなどといった次の舞台に進むときに野球を続けたいと思ってもらうためには、指導者を含めて考え直すべきだと思います」
目標に向かって、一心不乱で努力させるのはよいことだが、あくまでそれは目標であって、そこに向かっていくことを目的としてはいけない。かつ、選手たちの顔色をみながら、道を逸れぬよう、また逃げぬようにサポートしてあげることが必要である。
「指導者の方にも、もっと野球を好きになって取り組んでもらえればいいなと思います。そうすればきっと、好きな野球を続けてもらえるようにという風につながると思います」
選手たちの考え方を変えるため、指導者も学ぶこと。メンタルの観点から考えても、必要なことは一緒だ。

