一般財団法人全日本野球協会では、2016年5月に普及・振興を最大の目的にプロアマ合同の「日本野球協議会」を設立しました。同協議会の「普及・振興委員会」及び同委員会下の「資格制度検討部会」にて指導者資格の導入を検討、協議してまいりました。ここでは、指導者資格導入に関する背景ならびに、現在の進行状況について、説明していきたいと思います。
指導者資格の導入の根幹には、「野球の指導を通じ、健やかで夢のある豊かな社会づくりに貢献する」という理念があります。ここには野球を知らない人たちにも魅力を知ってもらい、社会に役立つことを教えているスポーツであることを示す意味も込められています。
そのため野球の指導者には、技術指導をするだけでなく、選手の人間性を高める役割もあると考えました。しかし、現状をみていくと、勝利至上主義に偏るあまり、スポーツマンシップの大切さ、考えてプレーすることの重要性などを伝えきれていない指導者も見られます。
また日本の野球界は、多くの団体(下記)が存在するため、成長のたびに所属する団体が異なります。
一部、指導者資格制度を設けている団体もありますが、所属団体がかわることで、多くの懸念が心配されてきました。特に指導者資格制度が設けられていない団体では、指導者が自身の経験値に頼り、今の時代にあった必要な知識や指導方法を身に着けずに指導を続けているケースが多くみられます。
このような状況を改善するためにも、全日本野球協会は、アマチュア野球界を代表する団体として、野球界共通の指導者資格制度の骨格、指導者テキストの作成を進めてまいりました。そして格制度検討部会の設立から4年後の2020年3月に「公認野球指導者 基礎 I U 12 に関する規程」が理事会にて承認され、2021年1月の野球指導者講習会より資格の付与が始まりました。
全日本野球協会において作成している指導者資格の骨格は、下記のような形で進行しており、現在は「U-12の基礎I」を付与しております。また、変更して「U-15基礎I」のテキスト作成なども進めており、詳細がまとまり次第、理事会の承認を得た上でスタートさせる運びとなります。
この指導者資格作成において重視した点は、世代別に指導の基準となるものを示すことでした。そこには、野球経験者は、自身の経験から得たものだけでなく、基礎に立ち返ることで自身の経験値に頼りすぎない指導をしてもらうという狙いが込められています。また、野球経験者でない人でも、根幹部分となる基礎を身に付けることで、指導者の道を切り開いてもらうとも考えています。
野球の技術指導は、人によって異なるもの事実です。これは指導者の工夫により生まれたものも多いため、すべてを否定するわけではありません。しかし、技術指導において、共通する部分は何かを探ることで、これまで曖昧な側面が多かった根幹部分を整理し、指導者の共通認識にしてもらうということも狙いのひとつになっています。
この指導者資格では、技術の基礎以外に関する項目も重視していることもポイントになります。技術指導に入る前に野球で培ったものを役立て、社会に貢献できるような選手を育てるために必要な、スポーツマンシップについても詳しく解説しています。また、選手が考えてプレーする大切さを教えるために重要となるティーチングとコーチングの違いについても説明されています。また、多くの選手を預かる大人として、知っておかなければいけない医学知識などの情報も学んでいただきます。
全日本野球協会といたしましては、資格制度を浸透させることで、より多くの指導者に正しい知識を得たもらい、野球の魅力や楽しみ方をたくさんの子どもたちに伝え、社会に貢献する人材を育成してもらいたいと考えております。
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