Baseball5「5STARs」 フランス選手団と国際交流イベント開催 ボール一つで国境をも超える“インクルーシブな”2日間に


4月19日〜20日、埼玉県加須市で「Baseball5 FRIENDLY GAMES in Kazo」が行われた。


フランス選手団が来日し、Baseball5を通じた国際交流が実現する期間となった。


(写真 / 文:白石怜平、以降敬称略)


開催のきっかけは約3年前の交流から


本イベントは、Baseball5のトップランナーの一つである「5STARs」が中心となり行われた。


5STARsは、21年9月に「このスポーツの未来を見せるために」と、六角彩子と村山智美の2人で結成。埼玉県加須市と上尾市を中心に活動している。


メンバーも地道な普及活動などを通じて希望者が集まっていき、在籍数は30人を超えた。ユースチームが22年春に立ち上がるなど、小学校低学年〜50代という幅広い年齢層で構成されている。


競技においても、世界を代表するプレイヤーである六角と數田彩乃という侍ジャパン戦士や、昨年の日本代表選考会に選出された小暮涼などが名を連ね、強豪チームとして君臨。


今年1月に行われた「侍ジャパンチャレンジカップ 第2回Baseball5 日本選手権」では初の日本一に輝くなど、今も普及・強化の両面で日本のBaseball5界を牽引している。


1月の選手権では日本一に輝いた5STARs



「Baseball5でみんなと笑顔に」を理念に掲げる5STARs。


この2日間は、国境を越えてみんなが笑顔になる場をつくり上げた。今回フランス選手団が来日し、交流試合やレセプションパーティーが行われた。


フランスはBaseball5が国内で約90チームあるなど国内で活発な普及を見せている。


昨年の「WBSC Baseball5 ワールドカップ2024」では日本に次ぐ3位に入賞し、世界ランキングも昨年末現在で日本(4位)を上回る3位と、世界的にもトップレベルを誇っている。


世界の強豪でもあるフランス選手団が今回来日した



この国際交流は、約3年前から深められてきた絆から実現したものだった。六角は開催の経緯を明かしてくれた。


「22年に加須市で行ったBaseball5のイベント時、ちょうど同じタイミングでフランスの選手が来日していたんです。その時メッセージをいただいたのでお誘いして、一緒に参加してくれました。


翌年にはフランスへBaseball5の指導という形でご招待いただき、その選手のご自宅に約1週間ホームステイさせてもらいました。


第二の家族と呼べるほど家族みんなと仲良くなって、その時お世話になった方々から、『今度は日本に選手達を連れて行くから、試合等を組んでくれないか』と連絡をいただきまして、今回のイベントが実現しました」


日本のチームとフランスのチームで計30試合以上が行われた



開催にあたっては5STARsのチームスポンサーをはじめ、加須市そして全日本野球協会など多くの関係者の尽力で実現に至った。


今回のイベントに向けてフランス選手団からはステファン監督、ラッセンコーチそしてオープンの選手12人とユース選手4人の計18名が来日。


27日に到着したフランス選手団は、うどんや蕎麦打ちを通じて日本の文化に触れるなど、5STARsもチームを挙げておもてなしをした。



真剣と笑顔が交わり、試合を重ねるごとに深まる絆


イベント当日は、8チームが集結。5STARsと日本一に向けてしのぎを削っている「ジャンク5」や「東京ヴェルディ・バンバータ」、桜美林大学Baseball5部も参加し、豪華に彩られた。


さらにこの日は「茨城アストロプラネッツ」、「千葉USシーマリンズ」、「栃木NSカウボーイズ」も参加。


3チームは車いすソフトボールチームとして活動するとともに、今年から「パラBaseball5」の両輪で本格的にBaseball5への挑戦をスタートした。


各チームの練習には5STARsのメンバーが駆けつけ、Baseball5のレクチャーを行うなど競技の輪が一層広がっている。


車いすを用いた「パラBaseball5」も同時に開催された



会場の加須げんきプラザでは、体育館とグラウンドに分かれて初日は2ヶ所合計23試合が組まれた。


体育館で行うBaseball5の試合では、対戦するチームが合同でウォーミングアップを行うなど和やかに交流する雰囲気がコートを包んだ。


しかし、いざ試合が開始すると自然と勝負師の顔となり、お互い全力プレーで一つのボールを追いかけた。


この2日間は優勝を競う形式ではなかったが、真剣勝負が繰り広げられ、終えた後は両者とも笑顔で讃え合った。


試合後にハイタッチを交わすフランス選手とジャンク5の面々



フランスチームは2チームに分かれ各チームと対戦。特に昨年ワールドカップで日本と対戦した際にも出場していたハスラー・フラビアンや、ユース代表のジャド オバール・コジャンらが世界で戦った技を披露した。


5STARsやジャンク5にも勝利するなど、そのレベルの高さに他の選手たちも興味津々に試合を見入っていた。


フランスを代表するユース選手であるジャド



外のグラウンドでは競技用の車いすが用意され、パラBaseball5の試合が行われた。


独特の打球の弾みや、車いすを操っての走塁や守備などの難しさを楽しさへと変え、ヒットを打つ・アウトにする喜びを全身で表した。


普段はコートの上でアグレッシブに躍動する選手たちからは、車いすソフトボール選手たちの軽快かつ正確な動きに目を奪われるシーンも見られるなど、純粋に競技を楽しむ雰囲気であふれた。


「パラBaseball5についても初めての取り組みだったのですが、従来のルールを尊重したままプレーできることがわかりました」(六角)


フランスの選手たちも挑戦し、競技の形を変えて友情を育む時間になった。


パラBaseball5も体験し、笑顔をたくさん見ることができた



両日の最後にはこの日参加したメンバーで組んだ日本選抜とフランス選抜とのエキシビジョンマッチを開催。


侍ジャパンBaseball5代表経験のある選手たちを中心に、国同士による“絆の真剣勝負”が行われた。



フランス選手団から数々の感謝の言葉


2日目には全チームをシャッフルした混合チームで構成し、2日間で合計35試合を実施した。


フランスと日本の友情はより強固となり、互いに再会を約束しイベントを終えた。帰国にあたり、フレビアンは六角を通じて以下のようにメッセージを送ってくれた。


「日本に来ることができて、とても嬉しかったです。新しい日本の選手たちと出会い、彼らがどのように取り組んでいるかを見ることで、フランスとの違いを知ることができる貴重な機会になりました。


加須市の素晴らしい施設で、宿泊場所のすぐ隣に体育館があるなど、とても良い環境で迎えていただきました。


さまざまなチームと対戦することができ、またワールドカップで知り合った日本代表の選手たちと再び対戦し、自分たちのBaseball5のレベルを確認できました。本当に素敵な機会を頂きありがとうございました」


昨年のワールドカップで日本と直接対戦したフレビアン



そして今回の最年少選手(15歳)であるセングリー トラン・セン。


実は上で述べた22年に来日し、5STARsのイベントに参加した選手。それがセングリーである。


2回目となる加須の地でBaseball5を存分にプレーし、喜びと感謝の言葉を寄せた。


「加須に来るのは今回が2回目で、22年に初めて六角さんと出会った場所でもあります。それ以来、私たちは強い友情を築いてきました。合宿では皆さんに迎えてもらい本当に嬉しかったです。


世界でもトップレベルのBaseball5の国である日本を相手に試合をして経験を積むこと、そして強いチームとの対戦を通してたくさんのことを学べました。


そして別れが寂しくなるほど本当に楽しい時間でした。これからも今回の経験を活かして頑張っていきたいと思います。本当にありがとうございました」


セングリーが送った一通のメッセージがこの場を創った



そして最後に首脳陣から。両国が手を組んだBaseball5の発展に向けてこのように語っている。


「今回は意義のある素晴らしい経験をさせてもらいました。ありがとう!本当に感謝しているよ。FRIENDLY GAMESという名前も素晴らしいです。これからもフランスと日本で協力していきましょう。ぜひフランスにも来ていただき、この大会をやりたいです」


フランス代表を率いるステファン監督とラッセンコーチ



「国境を越えて誰とでもつながれる」


イベントをリードし、大成功へと導いた5STARs。試合に出ながら奔走し続けた六角はチームを代表して振り返った。


「フランスと日本の選手達の交流を見ていて、言葉は違ってもつながれる“スポーツの良さ”を感じました。とてもハイレベルな試合が繰り広げられたので、お互いの強化にも寄与できたかなと。


選手同士がとても仲良くなっていた場面も印象的でした。国際交流をする事で私自身とても視野が広がった経験があるので、その場を作れた事はとても嬉しいです」


Baseball5が果たす意義をまた一つ形にした



六角はWBSC公認インストラクターとして各国の選手たちと交流しているとともに、22年・24年には選手としてワールドカップを戦ってきた。


世界のBaseball5を誰よりも熟知しているからこそ、自身の経験を還元する場としても意義の深いイベントにもなった。


「私自身の経験から、国際交流を通して一気に視野が広げられると考えています。世界中に、自分と同じようにBaseball5が大好きな仲間たちがいることを改めて感じました。


Baseball5はたったひとつのボールさえあれば、国境を越えて誰とでも心からつながれる。そして、どこでも誰でもできる“インクルーシブな”スポーツだと実感することができたと思います」


世界を代表する2国が一緒に創り上げた共生の場。これはBaseball5の国際化を推進するにおいて、モデルケースにもなる価値ある2日間となった。


(おわり)

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