本記事は前後編の後編。前編を読む。
千葉県市川市のスポーツ科学R&Dセンターである「NEXT BASE ATHLETES LAB」。
22年8月にオープンしてからは、世界最高性能の機器を活用した計測からトレーニングへの介入により、約1500名以上の選手のパフォーマンスアップを手がけてきた。
民間企業としては日本初の施設であるこのラボは、実は長きにわたり描かれていた構想だった。
後編では、NEXT BASE ATHLETES LABが誕生した経緯から今後実現した世界観などを追っていく。
ルーツは20年前に見たアメリカでのラボ
「NEXT BASE ATHLETES LAB」の構想は8年ほど前からあった。
当時野球データ解析の世界では、トラックマンやラプソードなどの計測器がNPBでも続々と導入され、回転数や打球速度といったトラッキングデータ解析のフェーズに入っていた頃だった。
株式会社ネクストベースの代表取締役社長・中尾信一氏は当時のことを振り返った。
「速いボールを投げる・打球を遠くに飛ばすにはどう体を動かせばいいのか。それが日本で一番詳しいのが神事だと思います。目指す方向からアドバイスする”逆算の考え方”ができていたのです。この考えがスタンダードになる世界が必ず来ると当時から感じていました」
ラボの基礎をつくったのがバイオメカニクスにおける博士号を持つ、同社上級主席研究員の神事努氏である。その構想は20年ほど前にさかのぼる。
「大学院の助手だった2005年にアメリカのASMI(アメリカスポーツ医学研究所)に興味があって単身で行ってきたんです。
そこにあったバイオメカニクスのGlenn Fleisig先生のラボが、病院とトレーニング施設、更に動作分析がワンストップでできる場所で、当時メジャーリーグのサイ・ヤング賞を獲った選手も訪れていました。
そこでは計測結果を指導に活かすためにデータが公開されていて、アカデミックに選手を育成していく土壌がアメリカにすでにあった。それを日本にも作りたいとずっと考えていました」
20年前に見たアメリカでのラボを基に形にした
ラボの強みである”バイオメカニクス数学的な解析”と”人”
神事氏が単身アメリカへ学びに行き感じたのは、施設だけではなかった。
「人の部分です。アメリカでは大学や大学院で専門性を学んだ人が、球団や施設での職に就いています。大学での専門的な学びが仕事に直結する文化を日本でも作っていきたいなと考えていました」
現在このラボにいるアナリストは大学ないしは大学院で学び、バイオメカニクスのデータを扱える人が揃っている。
また、パフォーマンスコーチ、コンディショニングコーチはアカデミックなだけでなく、スポーツの現場での経験を積んだ精鋭メンバーで構成されている。
ネクストベース アスリートラボ のメンバー(提供:ネクストベース)
ラボの強みは数値を用いて客観的に解析し、パフォーマンスアップへと伴走することである。それは専門的な学びと現場での実践があるからこそ行うことができる。
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