存続の危機から“保護者参加型”で立て直し 原点に立ち返った子供たちのためのチーム運用

 

 富山県のほぼ中央にある舟橋村。同村を拠点とする舟橋ビクトリーズは、プロ野球選手を輩出したこともある少年野球チームであるが、数年前解散の危機にあったという。「チームがなくなってしまうのは子供たちのためにもよくない」と、チーム関係者たちが一致団結し、ゆっくりと時間をかけて作った新たな運営方針は“保護者参加型”だった。当番制などの枠を取っ払い、“子供たちが野球を楽しめること”という原点に立ち返って生まれ変わったチームの姿とは。

 今回紹介する舟橋ビクトリーズが拠点とする富山県中新川郡舟橋村は「日本で最も面積の小さい村」である。村には小学校が一校だけで、全校生徒は200人あまり。そういった環境下において、ビクトリーズも一時期は運営が難しい状況に陥っていた。

「3年前、部員が少なくなってしまったことによって、上級生は他チームと合同チームを組むことになりました。そのため、一から野球を習う下級生の練習環境が、地元で準備できなかったのです。我が子も合同チームに入ることを考えましたが、親としては子供が馴染めるか不安でしたし、子供自身も地元チームでの活動を望んでいたので、下級生だけで練習体制を組むことが大変でした」

 そう振り返るのは、保護者会代表の寺松氏。他地域との連携は前向きな取り組みである一方で、保護者・スタッフが分散してしまうことによって、“本体”側の稼働が難しくなる…。多くの地域で起こっている課題が舟橋ビクトリーズを襲っていた。

野球への向き合い方は人それぞれ

 同チームで昨年まで3年間監督兼代表を務めた野村氏は、ちょうどチームが佳境にあったころに息子の入団を機にチームに関わることになった人物だ。

「以前のビクトリーズは大会で優勝するなどの成果を残す“ガチ”なチームだったんです。それ自体は誇るべきことだと思いますが、我が子を参加させる保護者の立場からすれば、なかなか気軽に入れられるチームではなかったのだと思います。」

 選択肢が多ければ、なかった悩みなのかもしれない。たくさん実戦の場のある活発なチームもとても魅力的ではあるが、野球を始めさせるタイミングではもう少しライトに挑戦できる場がほしいというのも理解できる。少子化の現代において、子供の選択肢に慎重になる保護者の気持ちが理解できる人は多いはずだ。

 ビクトリーズは生まれ変わらなくてはいけないときに来ていたのである。

“対話”で改善。生まれた好循環

 これからの子供たちのことを考え、村唯一の野球チームが何とかして残せないだろうか―。そう思いを強くした当時のチーム関係者たちでチームの立て直しを決意した。選んだ方法は“対話”だった。

「野球をやりたい子は少なからずいます。要は親御さんの思い、どのような環境であれば野球をやらせても良いか、でした。子どもたちには野球が楽しいこと、親御さんには義務や負担が少ないことが重要でした。母親の共感も大事な要素だったので、ママ友ネットワークを通じて声がけし、たくさんの方の意見をチームの運営に反映させました。」(野村氏)



(写真:チーム提供)


 チームが続けてきた方針を踏襲するのが、これまでで言うところは“一般的”ではあっただろう。ただ、チームがなくなる危機に直面して、新たに生まれ変わるべく、様々な声に耳を傾けた。結果的に、舟橋ビクトリーズは


・練習の終了(解散)時刻を守ること

・練習回数や年間試合数は保護者の話し合いで決定したこと

・保護者の鍵当番や試合のお茶当番といったルールを廃止したこと

・保護者は『できる方ができる時にできる事を手伝う』としたこと

・練習時の喫煙をおこなわないこと


 などによって、子供たちのために、そしてサポートする父兄のために、野球を継続できる環境を作ることに注力した。

 加えて、“保護者参加型”も積極的に実施。前述のとおり、当番制といった“義務化”することはせず、各々でできることをできる範囲で手伝ってもらうことを推奨した。一見、時代と逆行するような取り組みにも思えるが、やってみたら生まれたメリットも多かった、と現在はリーグ役員を務める中山氏が振り返る。

「自分自身は野球経験者ではありませんでしたが、子供の野球活動に協力することで、子供との共通の話題が増えました。また、同じ地域の子供たちとの接点ができたこともよかったと思っています。日常生活の中でも挨拶や会話ができる関係性が作れたことは、チームに携わったからだと思います。そして何よりも自分自身が野球を楽しんでいます。」

「以前のビクトリーズとは大きく変わりました。練習への取り組み方をみんなで決められたので、親としても子供を参加させやすいことにつながりました。何よりも現在のビクトリーズはたくさんの保護者が自主的に練習に出ていることにビックリしました。」とはかつて上の子がチームに所属し、今年下の子が新たに入部することになった稲垣氏。

 今年監督を務める稲田氏も口を揃える。

「8年前、私がコーチをしていた時は、選手や保護者に対して何事も強制的にやらせているようなところがあり、保護者の協力は一部の方だけでした。現在のチームは、野球未経験のお母さん方や夜勤明けの方なども我が子のためにと積極的に練習や試合のサポートをしてくださっています。また、子供たちも親に見守られながら楽しく野球ができています。」

 取り組みは着々と実りつつあるようだ。

 また、子供が野球を始めるにあたっては、本人の意思と同じくらい、親、特に母親の共感も大事になってくる。

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