2021年、日本野球界悲願であったオリンピックの金メダルを獲得。そして2022年、日本野球界としてリスタートの一年を迎える。アマチュア野球も国際大会の再開が予定される中、全日本野球協会会長(代表理事)である山中正竹 氏に特別インタビューを行った。
第三弾は2021年に大きく話題となった国際舞台での日本人の活躍、オリンピックの未来について聞きました。
ー 日本人選手の国際舞台での活躍が未来の野球選手を増やすきっかけになる。後押しできるように国内からの強化も必要
2021年の野球界でいうとMLBの大谷選手をはじめとした日本人選手が国際舞台での活躍が目立ちました。これは本当に素晴らしいことだと思いますし、私自身も皆さんと同じように一ファンとして活躍に喝采をしたり、応援をしたりしています。しかし、視点を変えると、やはりまず国内を充実させなければと感じています。これまで学生野球や軟式野球、プロ野球とそれぞれ先人たちが努力をしながら築き上げてきた歴史は大事な野球の文化です。これは我々が次の世代である子供達の世代のために守り続け、さらに発展させていかなければなりません。
今の時代は、選手も子供たちもファンの人も、国際的な視点で物事を見るようになりました。これはスポーツだけでなく、教育、福祉、環境問題など、我々の社会活動全てが、世界の中でどう捉えられるだろうかという基準に変わってきています。そんな時代の中で大谷選手がMLBでMVPをとったとか、ダルビッシュ選手ってすごい球、投げるよねとか、オリンピックで日本が金メダル取ったよとか。やはり国際の舞台での活躍や日本のプロ野球選手の活躍は、日本の子供たちにとって喜び、憧れ、学び、様々な要素において大きな影響があることは間違いないので、どんどん活躍して欲しいなという思いで喜びながら応援をしています。
ー 2024年パリオリンピックで正式競技から野球が外れ、2028年のロサンゼルスオリンピックで正式競技に復活できるかまだ見えていない状況の中でやれるべきことに取り組んでいく
世界的なスポーツイベントを考えたときに、オリンピックは歴史、レベルなどアスリートにとって最高の舞台であることは間違いありません。しかし、野球とオリンピックの歴史は、そこまで長くありません。1992年のバルセロナオリンピックで野球が正式競技として採択されてから、2008年北京オリンピックまでの5大会連続で途切れました。そして、2大会の空白があり、東京オリンピックでの一時的な復活があったわけです。このように、正式競技になかなか定着されない背景には大きくふたつあります。
ひとつは世界の競技者数です。世界的スポーツとして見た時に、野球は他競技に比べ、実施されている国が少なく、国ごとの選手の数に偏りがあるのが実情です。また、選手数が少ない国ではプレー環境も整備されておらず、観客が入れる球場がある国は多くありません。
そしてもうひとつが有力選手の不参加です。それぞれの競技の最高のプレーイヤーが競い合う場であるのに、メジャーリーグの選手はいつも出場しないという点やそこに追随する国のプロの人たちの不参加という状況は世界最高の舞台と言えるのか、という問題があります。
2008年はアメリカ・ロサンゼルスでの開催だから、結局最後には野球は実施正式競技に入るでしょうという声が上がったり心の中で思ったりしている人も多いと思いますが、そう簡単ではないと私は思っています。そのため、今はロサンゼルスに対して「アメリカでは、歴史的にも野球は実施すべきだよね。」2032年のブリスベンに対しても「オーストラリアでも、野球は根付いているから実施すべきだよね。」といった世界の野球人がこのでの共通認識を各地で発言することで、復活に向けたて後押しになるように取り組んでいるところです。
ー ひとりひとりが行動することで野球の正式競技への後押しになる
そして正式競技復活へのアクションという部分では、協会から世界への動きもそうですが、日本国内・小さな所からでも皆さんに動いていただきたいと考えています。もちろん直接的な交渉は必要ですが、前提として、野球が行われている国での盛り上がりが必要だと考えています。盛り上がるというのは、試合を観戦して、盛り上がることはもちろんですが、それぞれの野球人が野球の価値を発信していくことでの盛り上がりに期待したいと思っています。発信された情報を通して共感する人同士が繋がり仲間になる。その仲間とさらに発信することで絆を深くする。野球には人それぞれに様々な形での価値があります。ひとりひとりが野球の価値を認識して、自分の言葉で伝播していく。そうしたコミュニティ(野球界)になることで、野球界に入っていきたいという親御さんや子供たちが増えてくる。そこで、適切な指導をすることで、競技の強化につながっていく。これを日本だけでなくアジアの仲間たちと一緒に行い、徐々に野球の質もあげていき仲間も結束を固めていく。やがて、コミュニティは世界に広がっていく。壮大ですが、野球界としてはこの形を目指していくことでサスティナブルな繁栄につながっていくと思っています。
ぜひ、一緒になって日本の野球の未来を作っていきましょう。
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