審判歴30年の名審判が語る審判員が覚えるべき2つのコツ!

 近年、野球の「見る」「する」「支える」のうち「支える」で重要な役割を担う審判員の人数が減っています。なり手不足の問題の原因の一つとして、「難しそう」「ルールを覚えるのが大変」と良く言われますが、今回はアジア野球連盟審判長を務める小山克仁氏が、普段難しいと言われている子供の少年野球を始めるにあたってサポートするお父さん審判員を目指す人たちへ、簡単で重要なポイント2つを解説いたします。



 

 野球界では競技人口減少が問題となっていますが、それに合わせて審判員になる人の数も減っています。その原因と言われるのが、膨大なルールを覚えるのが難しいということです。プロ野球のようにプレーが複雑ではない学童や少年野球の現場でもルールを覚えることを苦に審判員を引き受けないという保護者の方もいると言われています。

 30年以上審判員を務めてきた私にとっては、とても悲しいことです。確かに、審判員の方には、ルールブックは睡眠薬だという人もいます。確かに、毎年何らかの項目が追加されたり、削除されたりする現在の公認野球規則(以下、ルールブック)を理解するのは、大変な作業です。私自身も先輩の審判員に「最初の1ページから最後まで3回読まなければいけない」と言われたことがあります。それだけ、熟読しなければ理解できない内容になっているのは確かですが、私は審判員になるには、まず、2つの要素を覚えることが重要だと考えています。

 

 その一つが、アレクサンダー・カートライトが考案した20項目のうち、プレーに関する13項目を覚えること。なぜ、それが大切かというと、世界への野球普及のためにアフリカへ行った際、初めて野球を体験する子どもたちに13項目を教えたことが影響しています。何も知らない子どもたちに、13項目だけを教えると、1時間ほどでプレーができるようになりました。つまり、複雑に思われている野球のルールは、それほど難しくないことを実感したんです。

※初めに覚えるべきプレーに関する13項目 
8 試合は21点で終了、アウト数は同じ
9 投手は下手投げで、打者の打ちやすいところに投げる
10 打者が一塁、三塁の線外に打ったらファール
11 投球を3回空振りして捕手が捕えたらアウト
12 チップを捕えたら打者アウト
13 走者は塁につく前に塁上の野手が捕球するか、タッグされたらアウト。走者にボールをぶつけてはならない
14 守備を走者が妨害したらアウト
15 スリーアウトで攻守交代
16 打者は順番に打つ
17 取り決め以外は審判が裁定。抗議は認めない
18 ファールは進塁はなし
19 投手がボーク・走者は一つ進塁
20 打球がワンバウンドでグラウンド外に出たらワンベース


 もう一つは、誰に優先権があるかを覚えること。これはルールを覚える上で、より理解を深めやすくなるためです。例えば、バッターが打席に立ち、マウンドでピッチャーが動作を始めたらピッチャーに優先権があります。また、ピッチャーの手からボールが離れた瞬間に優先権はバッターに移ります。さらに、バッターがボールを打った直後から守備に優先権が移行していきます。この流れを理解しているだけでも、多くのルール解釈が容易になると思われます。

 

 まずは、複雑に考えるのではなく、基本となる幹の部分を覚え、そこからいろいろな枝葉を付け加えていくという考え方をすれば、審判員は大変だという思いはなくなるはずです。

 

 私自身、野球には「する」、「見る」、「支える」という3つの要素が不可欠だと思います。審判は、その中では「支える」の重要なポジションを担っていると思います。野球の魅力を伝えるためにも、なくてはならない審判員。その役割をみなさんも、私たちと一緒にやってみませんか。


記事へのコメント

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玉城 健

野球のルールの複雑さや判定の責任の大きさを考えると、審判をすることに躊躇する方も多いと思いますが、小山さんの記事の通り、野球の成り立ちの基本的な部分から始め、野球をやる(または見る)なかで一つひとつの規則がどうしてこうなるのか?と考えを広げていくと無理なく覚えられるのかなと感じました。

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