「できることから始める」 野球選手の“食べる力”を高める食事計画とは

成長期の野球選手が身長を伸ばすためには、適切な「食事」が大切になる。管理栄養士の小澤智子さんによると、重要なのは「エネルギー量」の確保と「栄養バランス」を整えることだ。

前編では主に「エネルギー量」の確保について教えてもらったが、後編では「栄養バランス」を整えるために意識すべきことと、実践方法などを聞いた。

【前編】

あわせて読みたい
「見落としがちなのはエネルギー不足」 身長を伸ばしたい野球選手に必要な“食べる力” 野球選手が高いパフォーマンスを発揮する上で、重要なのが体のエネルギーとなる「食事」だ。プロ野球を見ても、トップ選手の多くは栄養管理に気を配っている。 好例が西...

まずは「5種類を食べる」ことから

昨今のプロ野球では、球団が管理栄養士の下で選手たちの栄養面を管理したり、選手個人で契約するケースも増えてきた。それくらい日々の食事が大切だという重要性が浸透してきている。

だが、アマチュア野球でそこまで行うのは容易ではないだろう。そこで小澤さんが提唱するのは、「今は取り組んでいないけれど、“これならできそう”というものから取り入れていくこと」だ。

例えば毎日の食事で大切になるのが、「栄養バランス」の優れた食事を取ること。

「まずは『主食、主菜、副菜、牛乳・乳製品、果物』という5種類をしっかり食べてください。忙しい朝の食事でハードルが高ければ、まずは夕食でやってみる。練習から帰ってきてお腹が空いているのであれば、炊飯器のなかにご飯を残しておいて、子どもに自分でおにぎりをつくらせる。具には何を入れればいいのか。そういうことを自身で考えてやってもらう。栄養士と触れ合う機会がない人でも、実践できる方法だと思います」

偏食にならず、バランスの取れた食事はなぜ大切なのか。小澤さんは野球にたとえて説明する。

「野球にいろんなポジションがあるように、栄養もエネルギーという土台の上に、いろんな栄養で成り立っています。それぞれがカバーし合っているんです。栄養も野球と一緒ですね。炭水化物が足りなくなると、たんぱく質が使われてしまうなど、お互いが支え合っています」

主食の炭水化物はエネルギーになり、主菜の肉や魚に含まれるたんぱく質は筋肉や骨の材料になるというように、「主食、主菜、副菜、牛乳・乳製品、果物」にはそれぞれ役割がある。だからこそ、バランスよく食べることが大切だ。

一気に食べるより、分けて食べる

栄養バランスに気をつけた上で、1日に必要なエネルギー量をいかに確保するか。そこで立ててほしいのが「1日の食事計画」だ。

「1日に必要な量をどう食べていくか、と考えることです。よくあるパターンは、朝食が少なくて、昼食も給食で必要な量に届かず、足りない量を夕食でガンと取るというものです。そうではなく、できれば朝食にスライドして増やしてください。昼食は給食など、自分でコントロールできないところもあると思うので、練習前の補食でたんぱく質と炭水化物を一緒に取るのもいいと思います」

栄養補給のポイントは「なるべく分けて取る」こと。たんぱく質など栄養素によっては、1回で吸収できる上限があるからだ。

なかには練習中や練習前後の補食で“タッパ飯”を課しているチームもあるかもしれないが、それを負担に感じる選手もいる。体の小さい子は、消化不良を起こす場合もある。

さらに、急激に体重を増やすと脂肪量に変わりやすく、筋肉の増量にはつながりにくい。

以上を踏まえ、小澤さんはこうアドバイスする。

「できれば体重を測りながら、それぞれに必要な量を考えていくのがいいです。一気に食べるのではなく、分けて食べたほうが『体を大きくする』など求めている結果にもつながりやすくなります」

1個で終わらせない朝食を

昼食が給食の場合、野球選手にとって必要なたんぱく質の量に足りていないケースもある。特に体格の大きい選手の場合、不足しやすいと小澤さんは言う。

筋肉や骨、血液の材料となるたんぱく質を十分に取るためには、どういう工夫をすればいいのか。

「朝食は、卵1個で終わっている場合が結構あります。できれば卵と納豆や豆腐、そして牛乳をプラスするだけでもたんぱく質の量が増えます。高校生で体重が重くなったら、例えばハムをプラスする。前日に残ったおかずの肉や魚、野菜をプラスしてもらうなど、今より少し増やすのがいいと思います」

練習前の補食では、おにぎりとゆで卵を食べる。寮に1度帰る余裕があれば、納豆ご飯と牛乳もオススメだという。

手軽に飲みやすい牛乳は、1杯(200ml)あたり約220~230mgのカルシウムが含まれているので「カルシウム源としてオススメ」と小澤さん。日本の一般的な食事では必要なカルシウム摂取量に到達しにくいため、成長期の子は1日3回程度、牛乳やヨールグルと、チーズを取るのがいいという。

ただし、アレルギーがある場合はストップ。また練習前に牛乳を飲むと、運動中にお腹が緩くなる人や気持ち悪くなる場合、飲むタイミングを変えたほうがいい。

なかには牛乳を1日1リットル以上飲んでいる人もいるかもしれないが、脂質の取り過ぎになっている場合も。そこで小澤さんが勧めるのは低脂肪牛乳だ。

「牛乳の取りすぎは小中学生ならそこまで気にしなくていいと思いますが、中学生以上の場合、今後体脂肪が増えすぎるのを防ぐためにも低脂肪牛乳をオススメします。カルシウムのほかに鉄やビタミンDという成長に欠かせず、なおかつ取りにくい栄養素が強化されている製品がスーパーなどで売られているので選手には勧めています。それだと脂質の取りすぎを防ぎつつ、カルシウムとたんぱく質なども取れるからです」

プロテインは「なぜ飲むか」を理解する

気軽に取りやすいという意味では、プロテインやサプリメントもある。チームで摂取しているところもあるだろう。

「プロテインはたんぱく質なので、運動後に取ると筋肉量の増量や疲労回復が早まるという効果があります。でも『プロテイン』という言葉が先行し、取る意味や目的を理解できていない選手が多いように感じるので、指導者や保護者がなぜプロテインを取るのか教育しながら進めてほしいですね。

ジュニア選手の場合、練習や試合後にすぐにたんぱく質を多く含む補食を取ろうとしても環境や衛生面から難しい場合があるでしょうから、プロテインやゼリーのようなサプリメントを上手く使ってもいいと思います。ただしサプリメントを使用する前には、プロテインであればプロテイン粉末と牛乳を混ぜたドリンクに含まれるタンパク質は、他の牛乳や肉、魚で摂る場合、どれくらいの量が必要なのかなどと調べて理解してもらいたいです」

野球選手に限らず、日々の食事は人の体をつくるものだ。だからこそ、自分が口にするものをしっかり理解することが重要になる。

小澤さんのアドバイスを参考に、できることから実践してほしい。

(文:中島大輔)

【関連記事】

あわせて読みたい
どうすれば成長期の選手は身長をできるだけ伸ばせるのか? 「トレーニングは絶対やったほうがいい」と... 身長193cmの大谷翔平(ドジャース)が象徴するように、野球選手は身長が高ければ大きな力を発揮しやすく、投手はより速い球を投げられたり、打者は打撃でより遠くに飛ば...
あわせて読みたい
成長期の野球選手はいつベンチプレスやランニングを頑張るべきか? スケールの大きな選手になるために... 野球人口減少がさけばれるなか、選手数を増加させているカテゴリーが「大学野球」だ。全国にある大学野球部の総部員数を見ると、2007年に2万146人だったのが、2025年に...
あわせて読みたい
「練習より睡眠」 身長を伸ばしたい野球少年に専門家が勧める“成長への投資” メジャーリーグで二刀流としてプレーする大谷翔平(ドジャース)は、1日10時間の睡眠を取ることで知られている。そうしたコンディショニングが投手&打者としてトップレ...
あわせて読みたい
「ベッドの上では寝るだけ」 専門家が教える野球選手の“睡眠力”を高める習慣 183cm、95kgの左腕投手・菊池雄星(エンゼルス)は毎日最低でも8時間以上、できれば9〜10時間、そして登板前日には13〜14時間の睡眠を取るという。 プロ野球選手のよう...
この記事をシェアする
  • URLをコピーしました!