「見落としがちなのはエネルギー不足」 身長を伸ばしたい野球選手に必要な“食べる力”

野球選手が高いパフォーマンスを発揮する上で、重要なのが体のエネルギーとなる「食事」だ。プロ野球を見ても、トップ選手の多くは栄養管理に気を配っている。

好例が西武の右腕投手・平良海馬だ。身長173cmとプロ野球の投手として小柄ながら99kgまで肉体を鍛え上げ、最速160km/hと日本最高峰のピッチングを披露している。

管理栄養士をつけて日々の食事を取る平良はほぼ毎日体組成を測りながら、食事の量をコントロールしているという。

「僕は『食べたいものを食べる』という考え方はそんなになく、『今の体組成だったら、これくらい食べてもいいかな。もう少し増えてきたら、食事量をちょっと減らしていこう』と日々取り組んでいます」(「週刊ベースボール」2026.5.25号より)

メジャーリーグでも栄養管理は日進月歩で進んでいる。ドミニカ共和国で16歳から20代前半の選手を育成するMLB球団のアカデミーでは、選手それぞれが1日に必要なエネルギー量や栄養を管理栄養士が指導し、3食のバイキングやプロテインバーなどで選手たちは実践する。

「食事は習慣です。自分で考えて取り組むのは、早ければ早いほどいいですよね」

そう話すのが、過去にサッカー男子日本代表のコンディショニングサポートなどに携わった管理栄養士の小澤智子さんだ。ジュニアアスリートが身長を伸ばし、試合で力を発揮する上でも大切になる「食事」の取り方について聞いた。

「こんなに食べる量が必要とは……」

「セミナーをすると、『身長を伸ばしたい』という質問は一番多く聞かれます。食事だけではないですが、食事が影響を与える可能性は高いです」

Homebaseの過去記事でも取り上げたように、身長の成長には「遺伝」に加え、「運動、栄養、睡眠」が影響する。そのなかで日々の体をつくる「食事」は非常に重要だ。小澤さんが続ける。

「身長を伸ばしたいとなると、『カルシウム』というイメージがあると思います。骨の最大の材料はカルシウムなので、その骨をつくるためにはもちろん必要なのですが、見落としがちなのが『エネルギー不足』です。小学生から高校生のスポーツをしている子どもに限らず、プロアスリートにもエネルギー不足は結構見られます。骨を縦に伸ばすためにはエネルギーも必要になるので、十分に取ることが必要です」

1日に必要なエネルギー量は体重や運動量によっても変わるが、厚生労働省による「日本人の食事摂取基準2025年版」に推定必要エネルギー量が記載されている。野球選手を想定し、身体活動レベルの「高い」を抜粋すると、以下が目安になる。

・10〜11歳:2500kcal/日
・12〜14歳:2900kcal/日
・15〜17歳:3150kcal/日
・18〜29歳:3000kcal/日

比較のために挙げると、18〜29歳で身体活動レベルが「普通」の場合、1日に必要なエネルギー量は2600kcal。成長期の野球選手は、たくさん食べる必要があるのだ。

実際、小澤さんが中高生に食事チェックとアドバイスをすると、母親に「まさか、こんなに食べる量が必要とは思いませんでした」と驚かれることがよくあるという。

「特に少食の子だと、本人から『もっと欲しい』と言わない場合、食事量が少ないまま成長してしまうのはよくあることです」

身長と一緒に体重も増えているか

成長期の理想は、身長が伸びながら体重も増えていくことだ。

もし身長が伸びているのに体重が変わっていなければ、見た目としては細く、シュッとしているように見えるだろう。その場合、貧血やエネルギー不足のリスクが、可能性として考えられると小澤さんは指摘する。

「家で身長を測るのは難しいと思いますが、体重が増えているかどうかは定期的に、できれば毎日測ってほしいです」

身長が伸びながら体重も増えていれば、食事量が足りていることの目安の一つになる。成長具合を定期的にチェックするためには、専用アプリを使用することや、エクセルなどでグラフをつくってみるのもいいだろう。グラフを冷蔵庫に貼っておけば、家族で確認することもできる。

体重と身長から算出する「BMI」(Body Mass Index) という肥満度の国際的な指標で「低体重」の場合、野球選手なら食事量の見直しも考えたほうがいい。

また、合宿などで運動量が増える場合には注意が必要だ。

「食事量が追いつかずに、気づかないうちにストレスが出ているのはよくあることだと思います。それが身長の伸びに影響することもあるので、そうならないようにしてほしいですね」

主食をしっかり食べることが成長の土台

エネルギー不足を起こさないために重要なのは、「主食を三食プラス補食でしっかり取ること。まずはそれを土台にできるように」と小澤さんは語る。日本人にとって主食とは、ご飯、パン、麺類だ。糖質が含まれ、体のエネルギー源になる。

一般的に朝食では食パン1枚というケースが多いかもしれないが、それでは約160kcal(※6枚切りの場合)。コンビニで売られているおにぎり1個のカロリーは約170〜250kcal(※具によって変わる)で、それより少ない計算になる。

「体重と運動量によりますが、食パンなら小学生でも2枚。ご飯にすると、小学生では200〜220g、中学生では220〜250g、高校生では250〜300gくらいを目指すのが目安になります」

個人によって必要なエネルギー量は変わるが、一食と補食で上記の量を目指すことが目安になる。練習前の補食では「ご飯150〜300gくらいを取るのが理想」と小澤さんは語る。

ただし、以上はあくまで机上の話。朝食を食べられないという人や、昼食は給食のために量が決まっているなど、さまざまな事情があるだろう。そこで小澤さんはこうアドバイスする。

「体重を測りながら、食事の量を調整していくのがいいと思います。体重が全然増えていないとか、2日連続で減っているとなれば、今の食事量では少ない可能性があります。その場合は『ご飯を50グラム増やしてみよう』とか、様子を見ながら少しずつ増やしていくのがオススメです」

ここまで見てきたように十分な「エネルギー量」を確保することに加え、大切になるのが「栄養バランス」をしっかり取ること。そのための秘訣が、「1日の食事計画」を立てることだ。

※後編に続く

(文:中島大輔)

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