「見られる環境」が選手を育てる パーフェクトゲームが日本にもたらす新たな価値

アメリカで行われている「パーフェクトゲーム」は、アマチュア選手とMLB球団や大学のスカウトを結ぶ”ショーケース”だ。近年、MLBドラフトで指名された大多数がこの舞台でアピールしてチャンスを勝ち取っている。

そのパーフェクトゲームがアジアや日本に活動の場を広げていることを前編で紹介した。2026年6月に中国で開催された同大会に出場し、ポニーリーグU12日本代表を初代アジア王者に導いたのが井戸伸年監督(関メディカルベースボール学院代表)だ。

「パーフェクトゲームという、大きな組織のなかでできることが一番のメリットだと思います」

井戸監督は、日本では聞き慣れない”ショーケース”をうまく落とし込むことで、選手たちの成長につなげられるのではと考えている。

ショーケースが育てる「本番力」

ショーケースとはプロ球団や大学などのスカウトを集め、選手たちがプレーしてアピールする機会のことだ。アメリカでその大きな舞台となり、プラットフォームになっているのがパーフェクトゲームである。

日本では耳慣れない言葉だが、海外ではその価値をよく知られている。井戸監督は今大会に臨む前から、パーフェクトゲームは気になる存在だったという。

「パーフェクトゲームのショーケースという機会はすごく興味がありました。自分もトライアウトを経てホワイトソックスと契約をしています。ショーケースやトライアウトって、子どもたちがスカウトに”見られる環境”じゃないですか。それが目的になり、普段の練習への臨み方が変わってくればいいと思います」

16歳でMLB球団との契約を目指す中南米では、ショーケースやトライアウトがよく行われている。

例えばドミニカ共和国でMLB球団との契約を狙う少年は、10代前半からトライアウトを受ける。打者ならライブBPでどれくらい結果を残せたか、どんなスイングをできたかをスカウトにチェックされる。トライアウトは一発勝負ではなく、何度も行われ、調子の良し悪しにかかわらずに集中力を発揮できることも必要になる。

メキシコのプロ球団のアカデミーに所属する10代前半から中盤の選手たちは、毎年6月にMLB球団のスカウトを招いたショーケースでプレーし、契約に向けてアピールする。本番に照準を合わせ、技術やコンディションをいかに上げていけるかが問われる。

以上のような機会が日本でもあれば、選手として磨きがかけられていくのではないか。井戸監督はそう考えている。

「例えば練習で『バッティング5本』と言っても、なんとなく5本打つのか、人に見られた状態で5本打つのかでは全然違いますよね。トライアウトでは、その5本で勝負をかけないといけない。そういった意味で練習の質が変わってくれば、選手としてもっとレベルが上がっていくと思います。”見られる環境”には違った緊張感があるので、味わったほうがいい。スポーツはファンも含めて見られたなかでやるものだと思うので、それをイメージしながらどんどん練習してもらいたいですね」

ショーケースやトライアウトというアピールの場があることで、普段の練習の質が変わる。そして、本番で力を発揮できる選手になっていく。それが井戸監督の描く道筋だ。

「大学の野球部に入るときにはセレクションがあります。その上に行けば、トライアウトの機会もあります。そこでいかに力を発揮できるか。入試も一緒だと思いますが、ここ一番でいかに力を発揮できるか。そういうシチュエーションをどんどんつくってあげたほうがいいと思います」

世界基準のデータが未来につながる

パーフェクトゲームの特徴の一つは、球速や打球速度、肩の強さ、足の速さなどというプレー指標が数値化され、ランキングで評価されることだ。

アジアや日本のチームが大会に出場すれば、当然そのなかに組み込まれることになる。それが井戸監督の言う「一番のメリット」だ。

「今、特定球場での計測データがアメリカに流れていると聞きます。メジャーリーグでは日本人選手が頑張ってくれていますが、そういった意味でも日本のジュニア期の段階でどういうレベルなのかをわかってもらえたらいいですね。それが早い段階でアメリカでの契約に結びつけば、面白いことになると思います」

井戸監督が代表を務める関メディカルベースボール学院では、今年高校を卒業した選手がアメリカの大学に進学する予定だ。過去には3人の卒業生が同じ道を選んだが、選手たちに選択肢を増やすという意味で「好ましい」と井戸監督は考えている。実際、アメリカの大学で野球をしたいという高校生は増えるばかりだ。

そうした道を臨む選手にとって、パーフェクトゲームは貴重な機会になる。

「いい選手」を数値で定義する

今回パーフェクトゲームに参加するにあたり、井戸監督は日本にうまく落とし込む方法を考えた。その一つが代表メンバーを選ぶ際、”いい選手”を定義することだった。

ポニーU12日本代表の結成に向け、まずは全国のポニーリーグに所属する中学1年生から参加希望者が募られた。NPB12球団ジュニアトーナメントに出場した選手が4人含まれるなどハイレベルの面々が手を挙げたなか、選考では「技術的な部分」だけを見るのではなく、「基準」を設けた。身長や体重、30m走や50m走などだ。

「まだわずかですが、基準値をつくりました。そのおかげで、中学1年生で平均身長168cmという代表チームになりました。50m走も大体6秒台なので速いほうです。全員がそこに入るわけではないですけど、それに足りなかったら何か補うものがあるなどと付け加えながら、”選ぶ基準”を設けました」

どうすれば代表チームに入ることができるのか。その基準を設ければ、メンバー入りを目指す選手にもわかりやすい。結果、練習で取り組むべきことが明確になり、チームの強化や個人の成長にも結びついていく。井戸監督が続ける。

「代表は基準値をどんどんつくったほうがいいと思います。アメリカでは野手の送球速度をスピードガンで測っているので、それも今後項目に入れようと思います。ほかには例えば左ピッチャーなら、いろんな球種を扱えること。自分が監督をしている間に、明確に答えられる基準をつくりたいです」

代表選考の基準をつくることで、”いい選手”が定義される。さらにスカウトたちに見られるなかで自分をアピールすることで、本番で力を発揮できるようになる。

それこそ、ポニーU12日本代表がパーフェクトゲームに参加しながら目指していくものだ。

(文/中島大輔)

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