
第7回執筆者:山中正竹氏(全日本野球協会 会長)
※本コラムは、BFJ(全日本野球協会)HPに2月13日に寄稿されたものを転載しています。
プロ野球の春季キャンプは中盤に入り、アマチュア野球界も1月24日に第97回選抜高校野球大会の出場校が決まるなど、春の足音が近づいています。
そんな私たちにとって、とても大切なイベントが1月25、26日にありました。
野球指導者講習会(BCC)です。新型コロナウイルスの影響もあり、集合講習で開催できたのは5年ぶりになります。
その会場で少年野球指導者の方々に囲まれました。
「今日が私たちの元旦です」、「これでやっと野球シーズンを迎えられます」
主催している私たちにとって、これほど嬉しい言葉はありません。
BCCは1995年にスタートし、開催できない年もありましたが、今年で30周年を迎えることができました。その時代の要請にこたえ、あるいは時代を先取りして、座学と実技講習を実施してきました。現在は公認野球指導者の資格更新とも連携しています。
「コーチ2倍、監督3倍」という言葉があります。指導者ほど、勉強しなければならないということです。指導のポイントや方法はどんどん変化します。その速度が年々速くなっていると感じます。今は子どもたちが動画などで情報を吸収できる時代でもあります。
大切なのは常に学ぼうとする姿勢です。それさえあれば、野球がたくさんのことを教えてくれます。
「He is a good sport.」という英語は、「彼は信頼できる人だ」といった意味になるそうです。スポーツマンとはつまり、「リライアブル(信頼できる人)」だと私は思います。何に対しても努力し、よく考え、そして、あらゆる人をリスペクト(尊敬)することができる。
相手に対しても審判に対しても野球に対しても、もちろん他競技や、競技をやっていない人に対しても同じです。
これを私は「対等な立場でのリスペクト」と表現しています。
指導者も選手も同じ人間です。どちらが上とか下とかはありません。
東京五輪の野球競技で金メダルを獲得した日本代表の稲葉篤紀監督について、「山中さんの教え子ですよね」とよく言われます。「いえいえ、私が法政大学の監督だった時の選手の一人です」と答えます。
私たちの関係は恩師でも教え子でもありません。私は稲葉さんから多くのことを学びました。例えば選手が100人いたら、監督が100人から教わることの方がはるかに多いと私は感じていました。だから、一人一人の選手に敬意を払って接したつもりです。
野球と選手に日々向き合っている指導者の皆さんを、私は深く尊敬しています。今年も大いに野球を学び、野球から教わり、そして自分自身と選手を高めていってください。
やまなか・まさたけ
1947年、大分県出身。佐伯鶴城高から法政大に進学し、東京六大学野球リーグ歴代最多の48勝をマークした身長169㎝の左腕投手。住友金属では監督として都市対抗で優勝した。1988年ソウル五輪は日本代表コーチとして銀メダル、1992年バルセロナ五輪は監督として銅メダルを獲得。法大監督としても日本一に輝いた。2016年、野球殿堂入り。2018年から全日本野球協会会長。
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