【優勝/準優勝監督インタビュー】創価大・佐藤監督が振り返る神宮大会(前編)


創部以来初の全国の舞台で決勝進出を果たして神宮大会準優勝。

 

昨秋のそんな快挙にも創価大・佐藤康弘監督にはある種の達成感はない。


「創部50年でなかったことなのでOBや周りの方が喜んでくださったので勝ててよかったなというのはあります。ただ、私たちとしてはリーグ戦から必死で、一戦必勝の中での戦いでした。リーグ戦ではノーヒットで勝ったり、関東大会ではタイブレークで勝った試合もありました。

目の前の試合を戦った結果の中での決勝進出でした。だから、どの試合も必死にやっているいつもの試合の一つという感じでしたね」

 

優勝が目標だから決勝進出は通過点と捉えているわけではない。ただただ一戦必勝を目指した中でたどり着いた決勝というのが昨秋の創価大にはあった。

 

ただ、佐藤監督以下、創価大ナインがそんな気持ちを持ちながら戦ったのは昨秋の神宮大会に至るまでの背景にある。



まさかの春季リーグ戦4位

 

一昨年はリーグ戦を春秋連覇。投手に4年生が多く残り、打線も今季のドラフト候補・立石正広の存在など、それなりに戦えるチームと踏んで臨んだ春のリーグ戦でよもやの4位に沈んだのだった。開幕から勝ち点をずっと落とし、最後に4連勝するまで歯車が噛み合わなかった。


「緩んでいたというんですかね、後々、問題点を探していくと、やっぱりそういうことだったのかというのが出てきたんですよね。野球以外の部分です。

特に練習内容を変えたとかは全くないんですけど、取り組み方に問題が多かった。それまで成績が残っていたんで、簡単に勝てるやろうみたいな感じはあったんでしょうね」

 

佐藤監督は渋い顔でそう話す。


知らず知らずのうちに秩序が乱れていた。部則や寮則が守られていなかったことが後々に発覚していくが、練習などでもその影響が少なからず出ていたという。以前なら当たり前のように指摘しあっていたミスに選手どうしで声を掛け合ってということがなくなっていた。

 

野球や練習メニューの問題ではなく、野球以外の決まり事において見過ごしてしまうような環境に慣れていくうち、いろんなことに意見が出ないチームになっていったのだった。言い換えれば、それだけだった。

 

春を終えてやるべきこと、できていないことを見直した。寮の規則を守らず、朝に帰宅する選手もいたが、そうしたことを1から見直した。練習を厳しくしたりすることはなく、ただ、日常生活にフォーカスした。



大きかった人間的成長

 

その成果はすぐに現れたと、佐藤監督は自戒を込めて回想する。


「春まではノックを受けているだけだったんですよね。ただただボールを捕球してただ投げてって。


日常生活を見直してからは試合のイメージでしっかりやってるなっていう感じはしました。エラーをしても、周りからの声が何もなかったのが『今のプレーは何だ』って出てくるようになった。昔のいいときに戻りつつあるかなっていうのは感じていて夏のオープン戦もとにかくボールに集中してるなっていう感じたんですよね。


春はそんな感じがなかった。ライナーを弾いてしまったり、エラーではないんですけど、春の前半はもう集中してないなって感じというのがずっとあったんです」

 

元プロ出身の高口隆行コーチを中心にしていたから、練習内容が悪いというわけではなかった。そこへの意識が薄れていたのだった。だから、意識さえ元通りに戻れば、選手たちは元の粘り強さを手中にした。

 

リーグ戦も、神宮大会の出場権がかかる関東大会でも、ことごとく接戦を制することができたのは、人間的な成長が大きいということだった。

 

佐藤監督は続ける。


「大学野球は社会に出るまでの最後の場所。だから、野球だけをやっているだけでは駄目だと思っているんですけど、大学生たちはもう大人なんだから別にいちいち言われることないよっていうか、野球をやりに来たんだから野球やればいいじゃんっていう考えがどうしても出てしまうんですよね。


でも、それだとやっぱ勝てないなっていうのが今回わかったんで、それは大きな反省になりました」



決勝戦で感じた3年生の頼もしさ

 

決勝戦は青山学院大戦に3対7で敗れた。序盤に大きくリードを許して後半は粘ったが、強豪に遠く及ばなかった。打てない試合は投手が踏ん張り、逆の時は打線が奮起する。昨秋はそんな戦いだったが、決勝戦では力の差を感じた。

 

しかし、佐藤監督はそんな戦いの中でも、新チームに残る選手たちの意識の変化は感じたという。ドラフト候補として騒がれる立石らが決勝戦の舞台に進出したことに満足した様子がなかったからである。


「これは後で聞いたことなんですけど、当時の4年生の中には決勝戦まで来たんで楽しもうぜみたいな雰囲気があったんですよ。試合前のベンチ前でね。それに対して3年生の主力のメンバーは、立石や大島たちは『え?』って思っていたらしいですよ。『何が楽しくやるんだよ。俺たちは勝ちに来てんだよ』と。もちろん、そう思っても言えないですね。


僕はそれを聞いて頼もしいなと思いました。僕もすごい悔しかったんです。試合をやる前は、変な試合になったらどうしようとか。たくさんの観客がいて点差が開いちゃいましたけど、無様な試合だったらどうしようという気持ちもなくはなかった。


でも3年生の主力選手は『絶対勝つよ』って。『俺たちが負ける要素はないでしょ』ぐらいの気持ちで試合に臨んでいたんです。本当にあの試合は負けて悔しかった。3年生のそういう気持ちはすごく繋がるんじゃないかって思っています」

 

春4位から秋はリーグ優勝。そして、初の神宮大会決勝進出。一度はどん底を経験してから頂点までが見えた2024年は創価大にとって大きな転機となったことだろう。全てがチームの成長へと繋がっている。

 

ただ、今シーズンに向け、佐藤監督は帯を締め直す。


「うちの連盟のリーグ戦を勝つのが大変なんですよ。それを昨年は感じました。今季は創価大が全国大会の決勝まで行ったチームというのは意識されてくると思うので、今まで以上に手強くなってくると思います。でも、そこを倒して本物だと思いますので、まずはしっかりとリーグ戦を勝ち切りたいです」

 

神宮大会を終えてからも選手たちの日常生活への意識は高いという。それは1年を通しての結果が彼らの行動規範を改めさせたのだろう。後一歩の山を登るために。ドラフト候補・立石を擁して創価大は頂点に登り詰めるつもりだ。



※後編へ続く


(取材/文/写真:氏原英明)

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