【PR】13競技、800名の強化クラブ部員の怪我を予防するために、大学が主体となって推進する外傷・障害調査


≪ONE TAP SPORTS≫Webサイトはこちら!


新潟県新潟市に所在する新潟医療福祉大学。

看護・医療・リハビリ・栄養・スポーツ・福祉・医療ITの6学部15学科でチーム医療を学べる医療福祉系の総合大学だ。


近年では、体育系部活の13種目を強化クラブとして指定し、トップアスリートおよび指導者の育成にも取り組んでいる。


また医療系総合大学のメリットを活かし、トレーナーやリハビリスタッフ、栄養指導を行う専門の教員・学生スタッフを配置するなど、複数のスタッフが実践的に学びながらONE TAP SPORTSを活用して13の強化クラブの選手をサポートする体制を構築している。


ONE TAP SPORTSを媒介として13種目800名の強化クラブの部員の外傷・障害調査プロジェクトを推進している同大学の江玉氏に話を伺った。



バルセロナのようなアスリートのマルチサポートシステムを新潟でもつくりたい



ー新潟医療福祉大学で実施されている外傷・障害調査の全体像を教えてください。


本学では2016年にアスリートサポート研究センターを設立しました。設立にあたって、3つのビジョンを掲げています。


1つ目は、本学が多職種な医療・福祉職を育成する総合大学であることから、「多職種が関わるアスリートのマルチサポート体制を構築すること」です。

2つ目は、大学内で発生した傷害を適切に把握し、対応する必要があるという考えから、「外傷・障害調査のシステムを構築すること」です。

3つ目は、学生トレーナーが多数存在することから、「学生教育のシステムを構築すること」です。


2つ目の「外傷・障害調査のシステムを構築すること」が今回の取り組みを指しており、この情報収集・集計のシステムとして2023年からONE TAP SPORTSを採用しています。各強化クラブに本学の教員や関連病院のスタッフを派遣して、傷害調査とアスリートのケア、サポートをしています。


ーONE TAP SPORTSはどのような背景で導入されたのでしょうか?



女子バレーボール部の練習風景



先んじて本学女子バレーボール部で導入・活用しているため、実は数年前からONE TAP SPORTSのことは知っており、ずっと大学全体で導入したいと思っていました。


女子バレーボール部では、痛みを訴える選手がとても多かったので、日々選手にコンディションを入力してもらいながらそれを監督にも共有したところ、監督が選手のコンディションをより意識するようになりました。

痛みがある選手が無理をせずに休めるようになったり、長期離脱も減ったので、選手を守るという観点では非常に効果的だと感じています。女子バレーボール部での実践が説得材料となり大学と交渉し、昨年から全13強化クラブで導入することができました。

ー2016年にアスリートサポート研究センターを立ち上げることになった背景を聞かせてください。


私は本学に2012年から携わっておりますが、大学内の強化クラブがどんどん強くなっていく一方、どの強化クラブでどれぐらいの怪我が発生しているかすら把握できていないことは長年課題に感じていました。

また、スペインのバルセロナに行った際に、新潟県よりも人口が少ない都市であるにも関わらず、アスリートのマルチサポート(複数の専門家によるサポート)が進んでおり、サッカーでは世界一という環境を見てきました。

日本にはJISS(国立スポーツ科学センター)がありますが、同じような仕組みがここ新潟でも実現できないかと思ったのがきっかけでした。


ちょうど2016年に医師の大森先生をはじめ、協力いただける先生方の体制が整ったので、このタイミングしか無いと思い、アスリートサポート研究センターを立ち上げました。


ーバルセロナのご経験が強く印象に残っているんですね!


そうですね。FCバルセロナのチーフドクターであるDr Gillに、「なぜバルセロナはこんなにもすごいのか?」と質問をすると、「システムと人材だ」と言っていました。本学も人材では負けていないと思ったので、あと私たちに必要なものはシステムでした。


バルセロナのシステムはどういうものか、具体的に色々と聞いてみましたが、「それは自分たちで考えろ」と言ってほとんど教えてくれませんでした。実現したいこと、その土地や人材にあったシステムでないと機能しないので、教えるものではないと。

その言葉を胸に、新潟という土地、集まっている人材を考えながらさまざまな取り組みを進めています。


私は本学に来るまでは病院に勤務していました。病院なので怪我してしまった選手と関わることが多く、怪我をする前、怪我が治った後復帰するまでどう過ごしてるかは見てきませんでした。

現在は大学勤務になって週に2、3回練習を見に行ったり、練習を見ながらどんな選手が怪我をしていて、怪我した選手がどんな思いでリハビリをしているかを見るようになっています。


そこで衝撃的だったのが、痛いのを泣きながら我慢して練習をしている選手がいたことです。本人は「やりたいから」と言うのですが、私自身、理学療法士としてできることに限界を感じていました。痛みはすぐに取ってあげることはできないですから。

このようなシーンを目の当たりにして、なんとか自分にできることはないかと思い、やるならチーム単位かつ、栄養面やトレーニング面、生活面から包括的にアプローチできる方法はないか、ということでアスリートサポート研究センターを立ち上げました。




半年以上かかっていた傷害調査の集計作業を大幅に短縮


ー傷害調査は以前から取り組んでおられると聞きました。いつから始められたのでしょうか。


センター設立と同時に2016年からですね。当時は各強化クラブが紙に記入したものを集計していたので、かなり大変な作業でした。


今は整理され始めていますが、当時いろいろな学会で競技によって項目や用紙が統一されていないことが問題視されていました。

その点我々は最初からIOCの規定に沿って競技横断で同一のフォーマットを作って運用していましたので、紙ベースの情報の集計は大変でしたが、集計された情報の粒度は揃っており統計情報としての確かさはあったと自負しています。


ー紙での集計はどのような大変さがありましたか?


傷害情報を記入する作業自体は紙もONE TAP SPORTSも負担は大きく変わらないのですが、紙の場合、集計がとても大変でしたね。

シーズンが終わってデータを集計し始めてまとめるのに半年経っている、なんてことは当たり前でした。


その点、2023年10月からONE TAP SPORTSを利用するようになって、例えば2024年1月の現時点で2023年10-12月のデータがすぐに可視化されていますし、その結果をもとにすぐアクションを取ることができているので、非常に助かっています。


また、紙で管理していた時は、1年経ってからデータの欠損に気づくので、トレーナーが卒業してしまっていたり、半年以上前のデータを入れ直してもらうモチベーションも上がらず、正直網羅的にデータを取ることができていませんでした。

しかし、ONE TAP SPORTS導入後は、データの入力漏れは一部ありますが、欠損にすぐ気づくことができるので、データの正確性という意味でも精度が上がっています。



傷害調査の結果をもとに強化クラブと連携し、慢性障害や長期離脱の予防を実現

ー過去の傷害調査からわかったことや、調査結果からの取り組みによって改善されたことはあるのでしょうか?



フィードバックセミナーの様子



私がメインで見ている女子バレーボール部の場合、怪我がどの時期・どの年代に多いか傾向が見えてきています。この5、6年間では春先に年間の7割の怪我が起きていて、そのほとんどが1、2年生です。

この傾向は監督にも伝えて連携しながら、怪我の予防および、怪我が発生したタイミングですぐに復帰できるように我々も準備するようにしています。

また、慢性障害が多かったので、減らすために様々な取り組みをすることで、膝蓋腱炎以外の慢性障害での離脱はほぼなくなりました。バレーボールという競技特性上、避けることが難しい膝蓋腱炎をどう予防していくか今話し合いをしているところです。


他にも、バスケットボール部とサッカー部はACL(膝前十字靭帯)の損傷が多かったので、The11+(イレブンプラス)などのコンセンサスが得られている怪我予防プログラムを取り入れると、翌年から数年間はACLはなくなりました。


ただ、数年経つとまた発生したりもしますし、接触により防げない怪我もあるので、全てが介入による成果とは断言できません。水泳部は離脱するほどの怪我が少ないので、Oura Ringを導入しました。睡眠を含め、日々のコンディショニングやケアによって調子をコントロールできるのではないかという仮説がありました。今はまだ限られた一部分しか見ていないですが、色々な発見が見えてきています。


強化クラブによってセンターが介入できる領域にばらつきはありますが、年に複数回、定期的にメディカルチェックを実施している強化部もありますし、介入によって改善しているケースも増えてきています。



新潟県にとどまらず、アスリートの全国共通のデータ基盤の構築とサポートを実現したい


ーこのような取り組みを新潟医療福祉大学内だけにとどまらず、もっと広げて行きたいという思いはあるのでしょうか?


令和5年度のスポーツ庁委託事業「地域のスポーツ医・科学体制構築事業」の一環として、県内のトップアスリートの育成・支援を目的に新潟スポーツ医・科学コンソーシアムを設立しました。

新潟医療福祉大学のアスリートサポート研究センターと、新潟リハビリテーション病院のスポーツ医学総合診療センターがコンソーシアムの中心機関になっています。


新潟のような地域では、ハイレベルなアスリートが十分な支援を受けてない実情があります。新潟県に在住しているトップアスリートが、どこにいても中央機関と変わりないサポートが受けられる流れを確立させて、北信越にも広げて行きたいと思っています。

ー他にも今後の展望があれば教えてください。


短期的には傷害調査やデータをもとにした各強化クラブとの連携は引き続き強化していきます。傷害の発生だけでなく、栄養やコンディション、フィジカルもかけあわせて分析していきたいと思っています。


中長期的には全国共通のアスリートのデータ基盤を作りたいと思っています。今は本学および、新潟県に閉じた取り組みになっているので、データの蓄積・管理という観点では、県外から新潟に来るアスリートも、新潟で活躍して県外に出ていくアスリートもデータが断続的になってしまうという課題があります。


将来的には、選手や国民一人ひとりがどこへ行っても利用できる自分のデータを保有して、それを所属する団体やチームに共有ができるような仕組みが作れると、よりデータを活用した傷害予防やパフォーマンスの向上に寄与ができると思っています。


ー最後に一言お願いします!


アスリートサポート研究センターは今の状態に至るまで、各強化クラブの中に入って現場に出て選手一人ひとりと向き合いながら、長い年月をかけて進んできました。


傷害調査も紙からクラウド管理になり、部分的なサポートだったものが、栄養や睡眠など生活習慣まで含めた包括的なサポートになり、怪我が起きてからの対応が事前に傾向を把握した上での予防になり、起きたことをちゃんと振り返って、少しずつアクションにつなげてきたからこその今だと思っています。

決して一足飛びに今があるわけではないんです。アスリートサポート研究センターを立ち上げたきっかけにもなったバルセロナのドクターのDr Gillの言葉の意味が少しわかったような気がします。




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文/宮川雄希

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