【スポーツマンシップを考える】 これからの人を育む「共育」的思考


注目される非認知能力の育成


教育の世界において注目されている「非認知能力」についてはご存じの方も多いことだろう。IQ(知能指数)や学力に代表されるように、記憶力、計算力、言語力、論理的思考力、問題解決能力などといったテストで評価できる数値化しやすい能力を「認知能力」と呼ぶ。

それに相対する概念が「非認知能力」である。すなわち、感情、コミュニケーション、モチベーションなどに代表される「情緒的」「社会的」「行動的」なスキルや特性、いわば数値化しづらい能力のことをさす。


これらの認知能力と非認知能力を複合的、総合的に合わせたものが「人間力」といえるだろう。

しかし、日本における教育は、これまで認知能力を磨くことが重視されてきた。教員が伝えられる知識を記憶し、試験という場でその記憶した正解を表現する。このスキルが高いものが優秀であると評価され、いわゆる「偏差値が高い」と呼ばれる世界観に身を置くことになる。

実際、私たちが生きるこの世界には、必ずしも唯一無二の正解があるわけではなく、そうした中でコミュニケーションを図り、ディスカッションしながら、自分たちにとってよりよい解を探っていくのが社会で求められることである。


非認知能力は社会情動性能力などとも呼ばれるが、個々人の人生の成功、豊かさ、幸福感などにつながると考えられている。だからこそ、認知能力を鍛える一方で、非認知能力を高めることがより重視されるようになってきているのである。

ノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学の研究者ジェームズ・ジョセフ・ヘックマンは、認知能力以上に、IQや学力試験などでは計測できない非認知能力こそが人生の成功や豊かさに影響するという研究成果を示している。


我が国においても、コロナ禍にあった2021年、それまで行われていた「大学入試センター試験(センター試験)」が「大学入学共通テスト(共通テスト)」にとって変わることとなったが、これは単に名称が変わっただけでなく、センター試験が始まった1990年代から社会が大きく変化し、未来を予測しにくい現代社会となったその時代の変化に対応するための施策である。


知識、技能だけでなく、それを活用するための思考力、判断力、表現力を持ち、主体性、多様性、協働性を備えた人材が必要であるという考えに基づき、新たに導入された共通テストでは、知識を活用しながらより思考力、判断力を発揮して解くような問題を出題することをめざしたのである。

しかしながら一方で、思考力、判断力、表現力、あるいは、主体性、多様性、協働性といった能力はまさに非認知能力の領域であり、数値化しづらいがゆえに、テストでその能力を測るのは難しいことも事実なのである。



非認知能力を育むカギは「遊び」


目標に向かって粘り強く取り組んだり,他者と協働したり、思い通りにならないことがあっても感情を整えたりするなどといった力、すなわち「非認知能力」は、幼児期に顕著に発達すること、そしてそれが長期にわたって持続するとともに学力向上や社会で活躍する鍵となることが、欧米における長年の研究を通して明らかになってきている。

後天的に大人になってからも伸ばすことができるものの、とくに、子ども主体の遊びを通して育つものであり、また、親や大人の関わりの中で自分が愛されていることの実感や、他者への信頼感が醸成されることによってそれを基盤に非認知的な性質が積みあがっていくとされている。


非認知能力を伸ばすにあたって、とくに幼児期における「遊び」が鍵になることを考えると、スポーツにかかる期待は大きい。誰かにいやいややらされるようなものではなく、自ら「Play」する遊びであるスポーツは、主体的な遊びとして非認知能力の発達に有効であると考えられる。


なおその際、以下の4つが重要と言われている。

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