「審判になっても他団体では裁けない」 20年以上続く野球界の構造的課題

現在、アマチュア野球で各連盟に審判登録している3万7654人の実情だ。全日本野球連盟(BFJ)がアマチュア各団体(※)に対して2025年7月18日から9月30日に調査を行うと、明らかになったのが審判の「高齢化」&「なり手不足」だった。

(※調査対象は、日本野球連盟(各都道府県連盟/協会)、 全日本大学野球連盟(加盟27連盟)、日本高等学校野球連盟(各都道府県連盟)、全日本軟式野球連盟(各都道府県支部)、日本リトルリーグ野球協会(各地区連盟)、 日本少年野球連盟(各ブロック)、日本リトルシニア中学硬式野球協会(各地区連盟)、全日本少年硬式野球連盟(各支部)、日本ポニーベースボール協会(各地区連盟)、九州硬式少年野球協会(各地区連盟)、 日本中学生野球連盟、全日本女子野球連盟)

他競技の審判員数を見ると、サッカーは27万8100人、バスケットボールは5万9632人。野球界の審判不足が浮き彫りになるが、2023年から全日本野球協会でアマチュア野球規則委員長を務める桑原和彦氏は「20年以上続く問題」と警鐘を鳴らす。

「どの団体も審判の高齢化に困っている、なり手がいないというなかで、『交流を進めていこう』となっていない現状が改めて浮き彫りになりました。非常に残念と感じています」

「交流」が進まない野球界の現実

上記で言う「交流」とは、例えばある県の社会人連盟に審判登録している人が、軟式でも審判を務められることを指す。他競技ならカテゴリーにとらわれず、審判を務められるのは当たり前のことかもしれないが、野球の場合は必ずしもそうではない。野球界のNF(国内連盟)は、ピラミッド型の構造にはなっていないからだ。

その弊害が審判問題にも表れている。ある県で社会人連盟に審判登録した場合、同じ県の軟式野球では審判を務められないというような自体が起こっているのだ。

今回BFJが行った調査はHPでも公表されているが、「5 他団体との交流」を見ると上記の事実がわかる。あらゆる世代の団体と「交流できている」と回答したのは、以下のとおりだった。

・社会人:10(全39団体)
・大学:3(全26団体)
・高校:13(全32団体)
・軟式:10(全29団体)

※括弧内は、「交流できている」と回答した団体数 

この回答から見えることについて、桑原氏が解説する。

「4つの団体すべてで審判をできるのは、上記の数しかないということです。高校で言うと、『他団体との交流をできている』と回答したのは68.1%。裏返すと、31.9%は他団体と一切交流しないということです。普通は、『審判になったら、どのカテゴリーでも務められる』と思いますよね? それが今の野球ではできなくて、どこかの団体で審判を始めたら、全部のカテゴリーで務められるのは3割未満にとどまっています」

交流が進めば審判不足は改善できる

実際、「高齢化」について「困っている」と回答した団体は75.3%。「なり手不足」について「困っている」と回答した団体は79.3%。

こうした状況にありながら、審判をなんとかやりくりしているのが実情だ。それは「3 大会割当」を見るとわかる。土日に1日2試合以上担当することがあるかという質問に、「常にある」「ときどきある」と回答したのは以下のとおりだった。

・社会人:39(全45団体)
・大学:21(全27団体)
・高校:38(全47団体)
・軟式:42(全47団体)

ほほすべての団体で、1日2試合を担当することが常態化しているのだ。桑原氏が語る。

「昨今の夏の猛暑で、選手の健康管理や熱中症対策をしています。審判にも同様にやっていただいていますが、暑い日でも2試合以上担当しないと大会を回せないということです。審判員には土日に仕事が休みの場合が多いですが、その方々が出てきても、審判がまったく足りていない現状が明らかになったと思います」

以上の状況があるにもかかわらず、前述したように「交流」が活発でない理由はどこにあるのか。

「二重登録を認めていないからです。私が聞いている範囲では、昔の人間関係でそうなってしまったようです。組織のトップ同士がうまくいかなくなり、諸々の調整がうまくできなくなると、派閥みたいに分かれてしまう。それが今も続いた常態で、修復できていないのだと思います」

桑原氏は現役時代、群馬県野球連盟の審判員として活動した。群馬には軟式の同連盟しか審判部を持たず、高校や大学などから依頼を受けると審判を派遣するという形だった。そのため、あらゆるカテゴリーで審判を務めることができた。上記のような形は、群馬県に加えて東北に多いという。桑原氏が続ける。

「もし団体間で交流ができるようになれば、審判はだいぶ融通できるようになると思います。交流が進んでいないことの一番の問題は、若い人が審判になってくれた際の影響です。我々は『若い人、審判になろうよ。野球の魅力がよくわかる世界だよ』と言っていますし、いろんな世界で活躍できる道をつくるのが責務です。それなのに交流がない都道府県である連盟の審判になったら、他の連盟では審判ができないという自体を放っておいていいのか。各団体で審判を司る方々に、改めて考えてもらいたいです」

言わずもがな、審判なくして試合は成立しない。アマチュア野球がうまく運営されなくなれば、その影響は当然プロ野球にも及んでくる。

審判の「高齢化」&「なり手不足」は20年以上も放置されている問題であり、野球界全体としてもっと深刻に受け止める必要がある。

(文/中島大輔)

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