【日本ハム・大渕スカウトインタビュー③】伊藤大海、北山亘基、達孝太に見る、球界トップへ“成長するための条件”

(※第1~2回インタビューは以下からご覧ください)
日本ハム・大渕スカウトインタビュー①
日本ハム・大渕スカウトインタビュー②


プロ野球のスカウトが選手の“未来”を予測する上で、大きな判断材料となる一つが人間性だ。普段は高校生、大学生のドラフト候補との接触を禁じられているなか、プロ志望届を提出した選手には面談をすることができる。

「面談は、あくまで確認という位置づけです」

そう話すのは、北海道日本ハムファイターズの大渕隆GM補佐兼スカウト部長だ。確認ということは、普段の試合や練習を視察して目を凝らしていることがある。

「基本的には言動を見ています。プレーや試合への準備、試合が終わった後にどうしているのか、あるいは大きなミスした直後の反応とか、“その人間”が出そうなところをよく見るようにしています。だいたいこんな感じだろうなと思って、興味がある選手ほど面談してみたい。深いところまで聞いてみたいなと思います。思考がどうなっているのかな、と」

大渕スカウトがドラフト前に面談を行い、特に驚かされたのが伊藤大海、北山亘基、達孝太の3人だった。

生徒の3倍の知識量を持つ“伊藤先生”

2020年ドラフト1位で苫小牧駒澤大学から入団した伊藤は、1年目から開幕ローテーション入りして23試合で10勝9敗の成績を残した。

プロ入り前、苫小牧駒澤大学の4年生だった伊藤と初めて話した際、大渕スカウトが驚かされたのは「探究心」だった。

「彼の場合はYouTubeを配信していたので、それは明らかに違いますよね。人に何かものを伝えられるということは、頭の中が整理されているということなので。つまり、先生側に立っている。生徒ではない。先生側ということは、少なくとも生徒の3倍の知識量があって、物事が整理されているということです」

ドラフト1位で指名された伊藤は1年目から活躍し、プロ入り4年目に14勝を挙げて最多勝を獲得。翌年には再び14勝を記録し、最多勝、最多奪三振、沢村賞に輝いた。

その伊藤と同じような探究心、そして豊富な知識を備えていたのが、2021年ドラフト1位で天理高校から入団した達だった。大渕スカウトが振り返る。

「入団前から『サイ・ヤング賞を2回取る』と言っていました。話す能力があることはわかっていたので、いろいろ突っ込んだ内容を聞いても、すべて食らいついてくる。びっくりしました」

達がドラフト1位で入団した2021年、同8位で京都産業大学から入団したのが北山だった。同年のドラフトで12球団に支配下指名された77人のうち76番目の指名と、決して高い評価だったわけではない。だが、本人はずっと先を見ていた。大渕スカウトが語る。

「北山は入団前、変化球が課題だったので『どうするの?』と聞いたら、『変化球はプロに入ってから修正します』と言うんです。その年に指名されるかどうかもわからないのに、本人はそう考えているのか、と。活躍する選手って、そんな感じなんですよね。自分がプロに行かないわけがない、というくらいに思っています」

“ドラフト最下位”からWBC日本代表へ

北山は学生時代から山本由伸(ドジャース)と同じ矢田修トレーナーの下で研鑽を積み、プロ入りを果たした。日本ハムに入団直後、知識量の豊富さから「教授」というニックネームをつけられている。

筆者は2024年の第3回プレミア12を控えた日本代表の宮崎合宿で取材すると、自身の取り組みを明瞭に説明する言語化能力に驚かされた。

「これも特訓したというか」

北山は京都成章高校、京都産業大学で野球部のキャプテンを務めたことで、表現力が磨かれたという。

「人に何かを伝える時、自分のなかでしっかり噛み砕いて頭のなかでまず理解できないと、たぶん人には伝わらない。人に話す前に、どう話そうかとイメージしてから話すのは、学生時代にけっこう訓練されたと思います」

北山によれば、学校の勉強は「普通」の出来だったという。だが探究心が強く、物事を論理的に捉えようとする傾向があった。

「中学生くらいから、『全部、原因があって結果がある』という考え方が自分のなかで漠然とありました。何かをモヤモヤした状態でとっておくのが苦手で。『なんでここはこうなっているんだろう?』とか『ここがこうなっているから、こうなんだ』って突き詰めるまで、すっきりしないタイプなので。そういうところはひとつ、今も生きているのではと思います」

身体を鍛えるのと同じように、考え方も成長させられる。北山はそう考えて努力し続けている。

「本当にそれしかないと思うので。地道にコツコツ。そっちのほうはだんだんうまくなってきたんですけど、技術的なところとか野球面はまだまだ。自分の思考の仕方にまだ追いついてない部分があるので、そこはもっともっと練習して、そのギャップをなくしていかないとなって思っています」

そう話した翌2025年は22試合に登板し、リーグ2位の防御率1.63を記録。ストレートの平均球速150.3km/hはリーグの先発投手で2位だった。

ドラフト時の評価は決して高くなかったが、入団5年目の2026年シーズン開幕前、ワールド・ベースボール・クラシックには日本代表として出場した。今や、球界を代表する投手の一人だ。

一流に共通する「圧倒的な向上心」

スカウトの仕事は、選手の未来を予測することだ。大渕スカウトは常に「この選手は成長するのか?」という目で視察している。

「地方の高校生が、北山と同じような真っすぐを放っているとします。では、変化球はどうなのか。コントロールはどうか。そもそも、やる気があるのか。何かいいものを持っていても、それ以外の部分も見ないといけない。選手として北山レベルまで行くのかと言ったら、“成長するための条件”があるわけです。トラッキングデータによる絶対値があっても、それ以外の部分で伸びしろを見ることが、今後より大事になってきます」

“成長するための条件”とは何か。大渕スカウトは以下のように表現する。

<人の成長=(能力+環境)×圧倒的な向上心>

この方程式で言えば、最たる成功例が大谷翔平(ドジャース)だろう。圧倒的な向上心があるからこそ、世界一の選手に上り詰めた。

いつの時代でも大事な「圧倒的な向上心」は、令和の現在、特に重要性を増している。

なぜなら、指導者と選手の関係性が大きく変わってきたからだ。

※第4回に続く。

(文・中島大輔)

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