今年9月に行われたU18アジア選手権で、日本は決勝で韓国に敗れて準優勝に終わった。両国の差として挙げられた一つが、体格差だった。
両国代表に選ばれた18選手の平均身長と体重は、以下のとおりだ。
・韓国 185.0cm&88.8kg
・日本 177.9cm&79.9kg
野球の競技特性を考えると、打者は打球を遠くに飛ばし、投手は速い球を投げれば勝利に近づきやすい。その点で、大きな体は優位になる。
前編でも見たように、体づくりで大事になるのが日々の「食事」と「栄養」だ。
食事への意識の差は「大人になったとき」に表れる
以前、「Homebase」ではMLB全30球団がドミニカ共和国に拠点を構えるアカデミーにおけるトレーニングや栄養摂取の取り組みを紹介した。

潤沢な資金を誇るMLB球団は10代後半の選手を5〜10年後にメジャーリーガーに育て上げるべく、いずれも食事や栄養に力を注いでいる。
翻って日本の同年代に目を向けると、食事の取り組みはチームによって大きく異なる。
力を入れているチームと、そうでないところでは、どんな差となって表れるのか。管理栄養士で全日本野球協会医科学部会員の廣松千愛さんが語る。
「そのときは大きな違いではなくても、選手たちが大人になったときに結構変わってくると思います。私はサッカーでユースの子たちを見ていましたが、プロになった選手もいます。プロになって、『試合前に体調を崩すことが多くて、食事を見直さないといけないと思っています。どうしたらいいですか?』と連絡してくれた選手がいました。食事への意識を持っていると、大人になってから違ってくるのかなと思います」
食事は、今日始めて明日すぐに結果が出る、というものではない。だからこそ子どもの頃から習慣や意識をつくり、長い目で取り組んでいく必要がある。
選手、保護者、指導者をつなぐ「うまく回る仕組み」
子どもの選手と接する大人にとって、大切になるのが食事への「意識」や「環境」をどう育んでいけるかだ。廣松さんは指導に入る際、選手と保護者、指導者を「うまくつないであげること」を大事にしている。
「親御さんにすれば、『私はこうしているのに、うちの子は全然やってくれない』ということもあります。子どもはお弁当を毎日つくってもらっていることを感謝しているとして、その気持ちを伝えられているのかや、白米が多くて食べきれないなど、うまく噛み合っていなければ仲介役が必要だと思うので、自分が現場に入るときはその役割を心がけています」
チームにおける、選手と指導者の間でも同じだ。廣松さんが続ける。
「チームでは、食に関してコーチが言っていることを翻訳して選手に伝えてあげることもあります。逆に選手たちが思っている本音を監督やコーチに伝えて、『じゃあどうしましょう』『私ならこうできますよ』と提案をするようにしています」
廣松さんが意識しているのは、選手と保護者、指導者の間で「うまく回る仕組み」をつくることだ。
年齢を重ねるにつれて、食事の大切さに気づく選手は少ない。だからこそ、より若いうちに意識できるようになればいい。廣松さんはそう考えている。
「高校を卒業後に海外へ行った選手は、『もっと高校のときに自分で食事づくりをすれば良かった』と言っていました。『高校生のときはお母さんが全部つくってくれるのが普通だと思っていたけれど、大学生になって食事を自分でつくる大変さがわかった』という選手もいます。そういうことも含めて、うまく伝えていければと思います」
技術やトレーニングと同様に「栄養のプロ」を頼りに
毎日三回の食事は、野球選手の成長にとって非常に大切だ。とりわけ将来高いレベルを目指す場合、早いうちから意識的に取り組んだほうがいい。その成果は大人になったとき、積み上がっているからだ。廣松さんが語る。
「例えば高校生になって甲子園を目指しているレベルなら、管理栄養士をしっかりチームに呼んでいただきたいです。教育の一環としてセミナーをするのもひとつの手段だと思いますが、個別でそれぞれの選手に合わせたアドバイスを受ける機会をを1回でも取り入れていただくと、だいぶ違うのではと思います」
前編でも述べたように、必要な栄養は一人ひとり異なる。それを的確に見極めるのは決して容易ではない。だからこそ技術指導やトレーニングの専門家を頼るのと同じように、栄養のプロをもっとうまく使ってほしいと廣松さんは言う。
「おそらく、『管理栄養士って何をしてくれるんだろう?』という人は結構いらっしゃると思います。なのでチームに、もっと管理栄養士を呼んでほしいですね。指導者の方には管理栄養士と接する機会をもっと増やしていただいて、頼っていただきたいなと思います。細かい指導もそうですけど、全体的な選手たちへの教育も含めてですね」
廣松さんが今年6月に出版した著書『食べて強くなる! 野球選手の栄養と食事』を読むと、栄養に意識的になることで野球選手の成長に結びつくことが理解できるだろう。食事は即効性のある取り組みではないからこそ、継続が大切だ。それを専門家としてサポートしていきたいと廣松さんは考えている。
「このサプリメントを1回飲んだからとか、この1回の食事で体がすぐに変わるということではありません。だからこそ、それを続けるためのサポートが必要ですし、並走する人も必要です。一人で頑張らずに、専門家と一緒にきちんと取り組む機会を1回でもつくっていただけるといいのかなと思います」
食事は人の体をつくり、野球選手の成長に大きく関わるものだからこそ、意識的に取り組んでほしい。
(文:中島大輔)

