3月27日~31日の5日間、香港で「第3回 Baseball5 アジアカップ2026」が開催された。
侍ジャパンBaseball5は2大会連続で決勝へと進出し、準優勝の成績を収めた。
2年ぶりの国際大会、そして大会連覇を目指し臨んだアジアカップの戦いぶりを、本池太一監督と辻東倫選手(共に東京ヴェルディ・バンバータ)・六角彩子選手(5STARs)に伺いながら2回に分けて振り返る。
(取材 / 文:白石怜平、以降敬称略 ※表紙写真:©WBSC-Asia)
収穫となった若き侍たちの台頭
本池監督はアジアカップでの戦いを終え、まずは以下のように総括した。
「結果については残念でありますけれども、大会までの過程であったり、大会中のパフォーマンスにおいては前向きに捉えられる部分、あと明確に課題として出た部分がありましたので、とてもいい大会だったと考えてます」
本池監督が挙げたポジティブ要素、それは若い新戦力の台頭だった。今回の代表は前回アジアカップのメンバーから約半分が入れ替わった。新たに加わったのは5人。その多くが10代から20代前半の若い選手たちだった。
経験豊富な選手が軸として君臨しつつも、新戦力もその前線に据えて臨んだ。そしてその若手選手たちが持ち味を発揮したことが、指揮官の挙げる収穫だった。
「その若い選手たちも中心に使っていくことは考えていました。日本としても経験のあるメンバーだけに頼らず、新たな戦力が出てきた点ではすごくいい大会だったと感じています」

本池監督は大会で光った選手を男女1名ずつ挙げた。男子では上村将大(かみむら しょうた:桜美林大)。1月の日本選手権でも広角かつパワー溢れる打撃を見せた若武者は、世界の大舞台でもその実力を発揮した。
安立と並ぶチーム最多の16試合に出場し、打率は.878と脅威的な記録を残した。
「賞としては存在しなかったのですが、大会の首位打者でもありましたし、私の中では彼がMVPだったと思う活躍を見せてくれました。特に後半は上村選手頼みと言っても過言ではなかったです。
打球の速さもさることながら、相手が取りづらい打球を打っていましたし、今後日本の中心メンバーとしてやってほしいと思う選手です」

女子では安立梨子を挙げた。昨年3月に横浜隼人高を卒業し、ジャンク5エレメンツへ入団。1月の日本選手権では入団1年目ながら主力としてチームを優勝に導く活躍を見せ、女子MVPに輝いた選手である。
「安立選手も日本の中心メンバーとしてやってもらいたい選手です。ほとんどの試合で起用しましたが、初出場とは思えないほど落ち着いてプレーしていました。
打つ方も守る方もバリエーション多くプレーができますし、足も速くてスピードもあるので、総合力の高い選手です」

両名に加えた初選出の3選手も侍ジャパンに新たな風を吹き込んだ。日本選手権では男子MVPに輝いた東翔紀(ジャンク5エレメンツ)も、8試合に出場して打率は.824と監督の期待に応えるプレーを見せた。
「まず打撃はアジアの舞台で通用しましたし、とても持ち味を発揮してくれたと思います。打球の強さ、そして走力もあるので攻撃面ではとてもレベルの高い選手です。
守備でも複数ポジションを守れて体力もありますので、ユーティリティ性に加えて総合的での強さを発揮してくれたと感じています」

そして、本池監督と同じ東京ヴェルディ・バンバータでプレーする衞藤奈菜も、指揮官がかねてから評価していたメンタルの強さをここでも発揮してくれたと評した。
「衞藤選手が持ってるメンタリティと言いますか、どんな場面でも冷静にプレーしてくれました。男子選手の強い打球もしっかりと捌けると思いましたし、堂々としたプレーをコートでは見せてくれたと思います」

指揮官が将来を見据え選出した16歳のホープ
そして、16歳で代表入りを果たした城久美。現在高校生の城はユースではなくオープンの部で侍ジャパンの一員として、初めて世界の舞台を経験した。
城について本池監督は出国前に「守備では十分通用するレベルだと思います」と評価していたが、その成長ぶりに驚きもあったという。
「守備もしっかりこなせていたと思いますし、総合的に見ても最初に集合した日から大会を迎えるまでの成長度合いというのは驚くものがありました。ユース世代の中心を担う選手と感じましたね」
アジアカップでは4試合出場で、打率は.611をマーク。「最初は素手で打つことに慣れない部分もありましたが、打球も強くなってコントロールもできるようになってきました」と出国前に語っていた通り、大舞台で成長したところを見せた。

城の選出については、本池監督の戦略そして日本のBaseball5の将来を見据えた考えがあった。
「今回から選手枠が男女1人ずつ増えて5人ずつになりました。男子も想定はあったのですが、今年のユースオリンピックさらに来年のユース大会の両方参加できる選手と考えると城選手でした。
ワールドカップを懸けた緊張感など、日本のトップレベルの選手たちがどれぐらいの熱量でやっているかを間近で経験してもらいたかったんです。
これは日本の競技レベルが上がったからこそ、5人目の選手として迎え入れることができましたし、目先の結果にとどまらない部分ですごく良かった点でした。これはユースの監督もやってるからこそ分かることでもあるので、そこはこだわらせてもらいました」
「即決でした」辻東倫を新主将に任命
今回のアジアカップでは、主将は辻東倫が務めた。本池監督は就任後、辻を主将にすることを即決していた。
「私が監督になって、辻選手をキャプテンというのはすぐ決めました。誰もが認める実力を持っていますので、チームの中心となって背中でも引っ張っていってほしい。そんな想いで任命しました」
辻はかつて巨人で6年間プレーし、 Baseball5では24年に侍ジャパン入り。同年のワールドカップでは大会ベスト5に選ばれるなど、世界を代表する選手である。
指揮官が語った想いは辻自身も認識していた。侍ジャパンの主将という大役を担うに当たって意識していたことを明かしてくれた。
「今回のチームは16歳から34歳と、年齢層が幅広いのが特徴でした。上下関係なくチームが一つになれるように心がけながら、そしてプレーでもチームを引っ張っていこうと意識して臨んでいました」

辻の特徴は181cm/83kgの体格から放たれる強烈な打球、そして世界最強とされるキューバの選手の打球もダイレクトキャッチするなど、スピードと堅実さを兼ね備えた守備力。
この大会でも攻守に存在感を発揮し、大会最優秀選手に輝いた。ただ、本池監督は辻にも更なる可能性を期待している。
「守備は世界でもナンバーワンです。今回は守りで光ったことがMVPを獲得できた要因だと感じています。打撃では台湾戦で苦戦したところがあったので、まだまだ伸びしろがあるということだと思います」
国際経験豊かで世界を代表する選手と、未来をも担う新戦力とが融合した今回の侍ジャパンBaseball5代表。アジアカップでの戦いの軌跡を追っていく。
(つづく)

