「第3回 Baseball5 アジアカップ2026」を戦った侍ジャパンBaseball5代表。
大会連覇まであと1セットに迫った中、アジアのライバルであるチャイニーズ・タイペイに1点差で敗れ、惜しくも目標には届かなかった。
それでも堂々の準優勝を成し遂げ、12月に行われるワールドカップの出場権を獲得。世界の頂を掴むステップとして、侍ジャパンは明確な収穫と課題を手にしていた。
戦いの軌跡を本池太一監督と辻東倫選手(共に東京ヴェルディ・バンバータ)・六角彩子選手(5STARs)に引き続き伺いながら紐解いていく。
(取材 / 文:白石怜平、以降敬称略 ※表紙写真:©WBSC-Asia))
本池監督にとって“再々戦”となったチャイニーズ・タイペイの進化
侍ジャパンはオープニングラウンド2試合をいずれもストレート勝ちを決めてスーパーラウンドへと進出。同ラウンドでもベトナム・香港相手に1セットも落とすことなく勝ち進み、3試合目のチャイニーズ・タイペイ戦を迎えた。
チャイニーズ・タイペイはアジアのライバルとして挙げられる。前回24年の同大会決勝、ユースでもアジアカップ・ワールドカップの両方で熱戦を繰り広げてきた相手である。
迎えたオープニングラウンドでの一戦、1セット目は5−7・2セット目は8-10といずれも2点差で敗れてしまう結果に。本池監督は相手チームのラインナップとフィールドでの姿を見てあることに気づいていた。
「10人中5人がユースの選手で、特に出場する5人うち4人がそのユースの選手でした。去年のアジアカップとワールドカップを経験して、さらに進化してこの大会に臨んできいましたし、日本に照準を合わせて対策してきたと感じました」

昨年のユースワールドカップでチャイニーズ・タイペイはキューバに次ぐ準優勝を果たすなど、世界的に見ても上位に位置する。
本池監督が率いたユース代表のアジアカップではオープニングラウンドで敗れるものの、決勝でリベンジを果たし優勝を勝ち獲っている。
しかしワールドカップで再戦した際には敗れており、「世界的に見ても高いレベルに男子の3選手がいて、3選手共にフィジカルが一層強くなって大会を迎えていた」と当時語っていた。
今回はオープニングラウンドで敗れてしまったが、「決勝で必ず台湾に勝つ意識でいましたし、切り替えて臨めたと思います」と述べた通り、同日行われた韓国戦では2セットで1点も取られず連取し準決勝へと進出。
準決勝でもタイにストレート勝ちして決勝へと駒を進め、2大会連続でチャイニーズ・タイペイと覇権を争うこととなった。

決勝戦は最終セットまで1点を争う展開に
迎えた決勝戦、指揮官の采配が1セット目から光った。主に遊撃を守っていた辻を三塁手で起用し、相手の強い打球を封じる作戦が功を奏した。
「彼の守備力は相手も理解しているので、私の想定通りいつもと違う方向に打とうとしてきたり、意識してファウルでアウトになったり、そういったプレーが急に増えました」
1セット目から互角の展開を見せ、5回を終え4−4で試合は延長戦に。6回表に六角彩子が決勝打を放ち、5−4と1セット目を先取して連覇に王手をかける。日本が世界に誇るプレーヤーは、極限の場面も力に変えていた。
「とにかく打ち勝つことを目標に、自分がやるべきことを整理しながら打席に入れました。経験もありますので強い気持ちで臨めました」
しかし2セット目は1−2と落とし迎えた最終セット。3回まで3点リードを保っていたが終盤に逆転され4−5と敗れ、目前に迫った連覇はならなかった。
ただ全セット1点差での展開であり、どちらに転んでもおかしくない戦いだった。決勝戦の3セットで計6打点を挙げた六角は、紙一重の激戦をこのように振り返った。
「打撃の精度と気持ちの部分ではないかと感じています。もちろん“絶対勝ちたい”という想いで臨んでいましたが、『これだけ練習してきたのだから負けるはずがない』というのが、自信ではなくどこかで慢心になっていたのかもしれません。ワールドカップに向けてやるべきことがたくさん見つかりました」

また、指揮官も悔しさを噛み締めながら振り返った。
「ワンプレーの重要さを感じましたね。うん…本当にどちらに転がってもおかしくなかったですし、あとはその流れをいかに掴めたかどうかだと思います。
五分五分の戦いで掴みきれなかったと感じていますし、私も監督として大きな経験になりました」
前回大会は選手として、そして昨年のユースからは監督として臨んでいる本池監督。数々の大会を戦ってきた中、今回は特に他国の変化を肌で感じていた。
「2年前と比べて、打撃の精度はどの国も上がっていたというのが一番実感した点です。特には今はYouTubeなどで世界のトッププレーヤーの打ち方が見れるような環境です。
なのでいかに点を奪うかがポイントになるというのは、ユースでも感じていました。今回その意識を強く持って臨んでいたのですが、台湾はよりその精度が高いチーム作りをしてきた印象でした。
他国を見ても完全に戦術が変わっています。その要因としては様々な国が国際大会を経験して、研究も重ねたからこそ強くなっているのだと思います」
辻も世界の舞台で戦い続ける中で、この2年間で同様のことを感じていたと語る。
「全体的に各国のレベルが上がっています。日本も底上げからしていかないと今後勝てないと感じましたし、個人的にもバッティングの面でレベルアップしていかないと世界では戦えないと思いました」

守りで発揮された総合力と攻めで見えた課題
本池監督はチーム結成時から“総合力”を日本の強みとして掲げ、底上げを図ってきた。ここでの総合力とは全員がどのポジション・どの打順をこなし、攻守における引き出しの数で勝負することを意味する。
「日本は固定メンバーで戦わずに、誰が出ても勝負できる。そういうチームだと考えています。選手個々のレベルが高いので、誰がエースということではなく、誰かが調子悪くても別のメンバーがカバーできる。
本大会でも経験豊富な島(拓也)選手をベンチスタートにして、途中起用をした試合もありました。彼も複数ポジションを守れますし、いつでも勝負強さを発揮できる選手なので、引き出しを増やすことができました」

上述の島の起用や決勝で辻を三塁へ配置したように、その引き出しの多さは守備面で大いに発揮された。
ただ一方で、攻撃面には課題が浮き彫りになったとも語った本池監督。日本でもケース別での打撃練習を行うなど緻密さも磨いてきたが、他国の守りはまた一味違うものだった。
「守り方が独特なチームに対してプレッシャーを感じてしまい、ミスショットしてしまった部分がありました。
特に台湾戦ですとショートが前に来てミッドフィルダーと並列させ、セカンドが二塁ベースに付いて守ってきた時がありました。
海外チームの守備は日本とは異なるので、その点もいい経験ができたと感じています」
12月、ワールドカップで目標の世界一へ
侍ジャパンBaseball5代表は準優勝のため、12月にプエルトリコで開催される「第3回 Baseball5 ワールドカップ2026」の出場権を獲得した。
日本は過去2大会ともキューバに次ぐ2位であり、本池監督も「常にキューバを意識しながら取り組んでいる」と世界一に向けて再度手綱を締める。
今後世界で日本が勝ち続けるための伸びしろはどこにあるかを、指揮官は明確に理解していた。
「攻撃面、特に打球の強さ・速さです。これは男女共に必要な力です。ランナーがいる状況で、野手の正面でも相手が弾くような打球を打ったり、広角に打ち分けたり前後を揺さぶる打球でも必要です。
揺さぶるには緩急をつける必要がありますし、そのためには強い打球を打てないと緩急を使えないので、その点を12月のワールドカップに向けて高めたいです」

選手たちもその点を理解していた。日本がこれから向上させていくべき点を問うと、辻・六角共に同じ答えが返ってきた。
「狙ったポジションに打ちミスなく、低くそして強い打球を打てるように鍛えていきたいです。後はスピード面、もっと試合を通して走りきれるようにならないと勝てないです。
男子選手の観点で言うと、さらに出塁率を上げて相手にプレッシャーを掛けれるようにしないといけないです」(辻)
「打撃の精度や走塁や守備のスピード。それは個人でもチームでも伸ばせるところはたくさんあります。とにかく練習あるのみです」(六角)
アジア連覇まであと一歩だったが、その一歩を明確にできたことは日本が世界で勝つための確かな収穫でもあった。侍ジャパンBaseball5代表は打倒キューバと世界の頂点を掴むため、早くも切り替えて12月を見据えている。

「“アジアカップでこの敗戦があったからこそ世界で勝てた”。そう言えるように一度自分たちを見直して12月まで全力で駆け抜けます。
今年のワールドカップは、前回の決勝でキューバに負けたあの日から本気で優勝を目指してきた集大成になります。必ず世界一を獲るためにあと半年強、仲間のみんなとともに頑張りたいです」(六角)
「この悔しさを忘れずに12月に世界一を獲りにいきます。しっかりと分析を行い、また練習していこうと選手たちにも伝えました」(本池監督)
守備力を中心とした総合力そして新戦力の台頭。このアジアカップで築き上げた土台に加えて、スピードとパワーをこの半年で積み上げる。侍戦士たちはこの伸びしろを力に変えるべく、早くも挑戦を重ねている。
(了)

