野球人口減少がさけばれるなか、選手数を増加させているカテゴリーが「大学野球」だ。全国にある大学野球部の総部員数を見ると、2007年に2万146人だったのが、2025年には2万7446人に増えている。
大学で実力を伸ばし、プロや社会人へと飛躍する選手も少なくない。一般的にプロ野球選手のピークは、20代後半から30代前半と言われている。
選手の競技人生は長い。そう考えると、ジュニア期の育成に携わる指導者にとって大切になるのが、一人の現役生活を一定のスパンで見ることだろう。
子どもの成長の「4つの段階」
スケールの大きな選手になるためには、成長期にできるだけ身長を伸ばすことが重要になる。実際、「できるだけ身長を伸ばしたい」という小中学生は多い。
身長の成長には「遺伝」に加えて「栄養、睡眠、運動」が影響するなか、運動については何を大事にし、どのように取り組めばいいのか。
青山学院大学プロジェクト准教授で日本バスケットボール協会の技術委員会スポーツパフォーマンス部会に所属する星川精豪トレーナーは、「子どもの成長を4つのフェーズに分けて考えることが大切」と語る。「標準化成長速度曲線」に基づく考え方だ。
「いわゆる『プレ・ゴールデンエイジ』と言われる、神経系がすごく発達している時期があります(※3〜8歳頃)。その後、身長が急激に伸び始めますが、この時期(=「Take off Age」)は人それぞれ異なります。その前の時期は、身長が伸びにくくなるんです。例えば年間に5cmくらい伸びていた子が、いきなり身長が伸びにくくなった後、ドカーンと伸び出します」
星川氏の言う4つのフェーズとは、生まれてから「Take off Age」までがフェーズ1、「Take off Age」から「PHVA」(Peak Height Velocity Age)という1年間で最も身長が伸びるタイミングを迎えるまでがフェーズ2、「PHVA」から「FHA」(Final Height Velocity Age)という身長の伸びが1cm未満になるタイミングまでがフェーズ3、それ以降がフェーズ4だ。子どもの成長期はこの4つの段階で考えられるという。
(※「グラフでイメージしたい人は、「TORCH」の記事を参照)

単純動作で“下地づくり”
身長が急激に伸び始めると、身体の感覚が大きく変わるため、今までできていた動作ができなくなる。「クラムジー」と言われる状態だ。
例えばコントロールを持ち味としている投手が、いきなりストライクが入らなくなるケースもある。それくらい運動動作が難しくなる一方、「単純動作はすごくできる」と星川氏は語る。
「だから、身長が伸びている時期には『単純動作をいっぱいしよう』と言っています。スクワットなどですね。ただし腕立て伏せも単純動作ですが、テコの原理を働かせて行なうので、身長が伸びて手足が長くなっている時期には難しい。
でも、ベンチプレスはできます。おもりはつけず、バーだけを挙げてもいい。そうやってトレーニングのフォームづくりをしておくと、身長が伸びなくなってから筋肉量が増えてパワーが上がってくると、重い重量を上げられるようになります。だからこそ、身長が伸びている頃に単純動作をしておくのが大事です」
前述したフェーズ2からフェーズ3、4へと移る頃を見越し、動作の下地をつくっておく。そうすれば本格的にウエイトトレーニングを始める頃、筋量をつけるための動作を効果的に行いやすくなるのだ。
自分は今、何を頑張るべきか?
フェーズ2の頃に行う単純動作では、「走ること」が大事だと星川氏は語る。
「どんなに野球の投球や打撃フォームが不器用でも、単純に走ることはできます。身長の伸びている人が走ると、心肺機能がすごく発達します。骨が伸びているので、胸骨や肋骨も一気に広がるからです。つまり、この時期にランを頑張ると、単純に肺活量が増えるので持久力も増していきます」
指導者にただ「走れ」と言われても、選手はモチベーションが上がりにくかもしれない。だが、上記のように理由をしっかり説明すれば、「走ること」に意義を見出して取り組みやすくなる。星川氏が続ける。
「指導者が選手に対し、『君は今この状態だから、今これを頑張っておけば、将来的にここが伸びるぞ』としっかり説明してあげることがすごく大事です。例えば『今は成長期なのでピッチングはなかなか伸びない。でも今これを頑張っておけば、2年後くらいにピッチングも伸びてくる。だから今はこれに取り組もう』とか、『大事な大会が近づいているけど、今は時期的に高いパフォーマンスを発揮するのは難しい。でも高校に行った頃には伸びてくるので、今はまずこれを頑張りなさい』と言ってあげられればいい。あとは、本人が納得してくれるかどうかです」
フェーズ3で身長の伸びが緩やかになると、筋肉を増強するトレーニングの効果が大きくなる。次のフェーズ4では身体の成長が落ち着き、成人と同じようなトレーニングを行えるようになる。
以上のようにフェーズ1から4までを段階的に捉え、運動選手としてのキャリアを形成していく。それが身長をできるだけ伸ばすためにも、パフォーマンスを高めていくためにも重要になる。
「大事なのは正しい知識を得ること。そして、選手に納得して取り組んでもらうことです」
ぜひ、星川氏のアドバイスを活かして取り組んでほしい。
(文:中島大輔)
【記事前編はこちら】


