身長193cmの大谷翔平(ドジャース)が象徴するように、野球選手は身長が高ければ大きな力を発揮しやすく、投手はより速い球を投げられたり、打者は打撃でより遠くに飛ばせたりする。
では、どうすれば身長を伸ばすことができるのか。一般的には「遺伝による影響が大きい」と言われるが、“例外的”に伸びるケースもある。
2025年ドラフト5位で山村学園高校から西武に入団した遊撃手・横田蒼和が好例だ。高卒1年目から二軍でアピールし、将来を期待される有望株が身長180cmの大型ショートに育ったのは、成長期の過ごし方が大きかったと振り返る。
「小学6年くらいから中学2年くらいの成長期でしっかり身長を伸ばすために、『9時半には寝ろ』という決まりがうちの家ではありました。兄はずっと塾に行って10時まで毎日勉強していて、寝る時間が十分ではなく、身長が伸びなかったんです。それで兄が『蒼和(そうわ)は絶対塾に行かせないで寝かせよう』と両親に言ってくれて、自分は兄より10cmくらい大きくなりました。兄には『小さい頃からいっぱい食べておけ』とも言われて、自分のなかで実践してきました」
横田も口にしているように、身長を伸ばすためには「睡眠」と「栄養」、そして「運動」が影響すると言われる。そこでそれぞれ留意すべきポイントについて、Homebase編集部では3人の専門家に話を聞いた。
日本人と欧米人、発想の違い
「どうすれば、身長は伸びますか?」
青山学院大学プロジェクト准教授で日本バスケットボール協会の技術委員会スポーツパフォーマンス部会に所属する星川精豪トレーナーは、子どもたちや保護者からよくそう聞かれるという。
ところがアメリカやヨーロッパに行くと、日本人とは発想が異なっていることに気づいた。
「向こうでみんなに聞かれるのは、『何をしてしまうと、身長は伸びなくなりますか?』ということです。日本人は小さいことにコンプレックスがあるからか、『何をすれば、身長が伸びるのか』と考えるのかもしれません。そもそも欧米とは“入り口”が違うなと思いました」
身長がどこまで伸びるかは、遺伝による影響が大きい。80%程度とも言われる。だからこそ、何をしたらマイナスに働く可能性があるかを知ることが大事だと星川氏は語る。
「例えばトレーニングをしすぎて、アフターケアをしなければ身長は伸びなくなります。炭水化物を取りすぎるとか、牛乳を飲みすぎるのも下痢につながる可能性があるので良くありません。そういうことを通り越して『何を食べればいいですか』となるのではなく、まずは基本を知ることが大切です」
トレーニングを正しく行うための“条件”
身長が伸びるのは、つまり骨が伸びるということだ。発育中の子どもの骨は先端が軟骨で、そこが伸びていく。レントゲンを撮ると黒く写り、骨端線と言われる部分だ。
大谷翔平は花巻東高校入学後にレントゲン撮影をすると、足の付け根に骨端線が写った。そこで野球部の佐々木洋監督は「成長のピークを22、3歳くらいと考えなければいけない」と設定し、練習やトレーニングで過度の負担を掛けさせず、周囲より睡眠時間を多くとらせるなどして成長を促した。それが以降の飛躍の背景にある。
軟骨は壊れやすい。衝撃や負荷を多く加えると、ケガが起こりやすくなる。ケガをすると身長の伸びに影響するため、日本では「成長期にはウエイトトレーニングをやらないほうがいい」と言われることもある。
はたして、この考え方は正しいのだろうか。星川氏はこう答えた。
「結論から言うと、トレーニングは絶対にやったほうがいいです。というのも、いろんな動作ができるようになるので、競技で上達するにはやったほうがいい。アメリカにあるNSCA(National Strength and Conditioning Association)という世界で最も権威のあるトレーニング資格を認定している団体でも、『負荷調整をするスタッフがちゃんといて、プログラムさえしっかりしていれば、トレーニングはやったほうがいい』と言われています。逆にやったほうが、ケガ予防になるということです」
星川氏はそう言うと、一定の条件を付け加えた。
「ただし、やり過ぎたらダメです。日本では高校生以下のチームでトレーナーのいるところはほとんどないので、『やらないほうがいい』と止まっているのだと思います。大事なのは、さじ加減をちゃんとできる人が近くにいるかどうかです」
アメリカの高校には国家資格保持者が在籍
アメリカの高校には、ATC(Certified Athletic Trainer)という国家資格を取得したトレーナーが必ず在籍している。専門家がプログラムを組み、その上でトレーニングを行うシステムができ上がっているのだ。
対して、日本の高校野球やそれ以下の年代でトレーナーが常駐するチームはほとんどないだろう。そのために“適切なトレーニング”の線引きが難しく、「身長が伸びている間は、やらないほうがいい」という選択になるのかもしれない。
現実的に考えれば、運営予算の限られるアマチュアチームでトレーナーを常駐させるのは難しいだろう。
では、どうすればいいのか。星川氏が重要と説く一つは、栄養面だ。“タッパ飯”や牛乳を過度に飲むなど偏った栄養補給は行わず、「五大栄養素」(タンパク質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラル)と言われるようにバランスのとれた食事を継続的に適量取ること。
そしてトレーニングでは、年代別に「やったほうがいい動作」を知ることだ。
*後編に続く
(文:中島大輔)

