(※第1回インタビューはこちら)
アマチュアの選手がプロ野球を目指す際、必ず評価されるのが各球団のスカウトだ。その仕事の特徴について、北海道日本ハムファイターズの大渕隆GM補佐兼スカウト部長はこう表現する。
(1)“人が人”を評価する仕事
(2)今ではなく、“未来”を予測する仕事
スカウト業の本質は昔も今も変わらない一方、昭和→平成→令和と時代が移り変わりゆくなか、主な“スカウト目線”にも変化が生じているという。
【昭和】足肩の強さ、本塁打を打てる、球が速い
【平成】打率、⾧打率、防御率、三振率などのスタッツ(「マネーボール」、セイバーメトリクス)
【令和】各種トラッキング機器の出現(選手個人の打球情報や投球情報の可視化)
例えば野手ならいつでも「打てる」ことを求められるが、時代が進むにつれ、「どうすれば打てるのか」という解像度が上がっている。そうして野球の精密化が進むなか、プロ野球では「選手個人の野球能力向上」がより求められるようになっている。
多様なタイプが活躍できる「ゲーム」
野球の「パワー&スピード化」が目覚ましく進む近年だが、NPB球団を見渡すと、多種多様な選手が在籍している。
・最低身長:勝田成(広島)163cm、70kg
・最高身長:ショーン・ジェリー(オリックス)213cm、113kg
・最重量体重:フランミル・レイエス(日本ハム)196cm、139kg
・最軽量体重:滝澤夏央(西武)164cm、65kg
昨季、ドミニカ共和国出身のレイエスは32本塁打、90打点と規格外のパワーで二冠に輝いた。運動能力に秀でる滝澤は二塁手でUZR8.0、遊撃手で同8.1と両ポジションでリーグトップの数字をたたき出している。
今季オリックスに新加入した右腕投手ジェリーはサンフランシスコ・ジャイアンツ時代の2024年、メジャーリーグで58試合に登板した実績を持つ。
体型だけでなく、才能が開花する時期も人それぞれだ。
宮城大弥(オリックス)は高卒2年目に開幕ローテーション入りを果たし、23試合で13勝4敗とエース級の活躍を見せた。村上宗隆(ヤクルト)も高卒2年目、全143試合に出場してOPS.814を記録。翌年にはリーグトップの同1.012をマークした。
かたや、晩熟型もいる。右腕投手の石川歩(ツインズ・オーステルハウト)は25歳の2013年に急成長し、同年ドラフト1位でロッテ入団。12年間に渡って活躍し、今年オランダに新天地を求めた。
身長194cm、体重104kgの杉本裕太郎は2015年ドラフト10位でオリックスに指名され、入団6年目の2021年、32本塁打を放ってホームラン王に。30歳の大ブレイクだった。
投手の球速に目を向けると、さまざまなタイプが活躍できることがわかる。昨季リーグ3位の28セーブを記録したアンドレス・マチャド(オリックス)は、ストレートの平均球速が156.2km/hで12球団トップだった。185cm、105kgで、まさに剛腕を武器にする右腕投手だ。
一方、同138.3km/hの加藤貴之は20試合で9勝6敗、同138.4km/hの山崎福也(ともに日本ハム)は20試合で7勝5敗という成績を残し、ともにチームのクライマックスシリーズ進出に貢献した。二人ともストレートは平均球速未満だが、投球術を武器に長らく活躍している。
以上のように、野球は他競技に比べて間口が広く、成長期が幅広い。そうした特徴を踏まえ、選手のスカウトも行われている。大渕スカウトが説明する。
「山の登り方からしたら、頂上まで真っすぐに近道で行くルート、くねくねと山を登っていくルート、裏の道を見つけて登っていくルートなど、いろんな道があるのが野球の良さだと思います。陸上のようにコンペティションなら砲丸投げで何メートルという記録を出すのが大事ですが、野球はゲーム。相手を察する能力、そして自分の能力を合わせて、相手の一つ上をうまく狙うのが野球の醍醐味です。加藤も山﨑も、そうした能力を持っています」
日本ハムで言えば、高卒から2021年ドラフト1位で入団した達孝太も、同年育成ドラフト1位の福島蓮も、高卒後に社会人野球の新日鐵住金かずさマジックで5年間プレーしてからプロ入りした加藤も、同じ土俵で羽ばたくことができる。それこそ、野球という競技の魅力と言えるだろう。
可視化できる能力、感性で判断される要素
多種多様な選手たちがトラッキングデータで能力を可視化される現在。明日のプロ野球を担うドラフト候補は「パワー」や「スピード」「肩の強さ」「精神面」など、さまざまな観点から評価されるが、大きく言えば”目に見えるもの”と“目に見えないもの”という二つに分かれる。
特に後者は、スカウトたちが玄人の目によって判断しているものだ。大渕スカウトが続ける。
「“人が人を見る”という全体像のなかで、トラッキングデータによって一部分の解像度が上がりました。例えばA選手という全体像を見て評価するなか、『大谷翔平の打球速度に匹敵します』と一部分が非常に明確になったということです。
でも、それを中心に採ろうとは思っていません。この場面でストレートが来るはずがないのに、ストレートを待っている打者はダメ。選手が持つ全体像のなか、どうしても数字は強いので引っ張られますが、俯瞰して判断します。今のところは“ちょっと情報が増えた”というくらいの意識でいます」
トラッキングデータから見える情報は大事だが、それがすべてではない。野球という競技で活躍するには、感性で見抜かれる部分も重要になる。
本稿の冒頭でスカウトは「未来を予測する仕事」と紹介したが、その意味において日本ハムで興味深いのが伊藤大海、北山亘基、達孝太という才能を見抜き、獲得して育て上げていることだ。
「この3人は、明らかに人物が違いました」
大渕スカウトも断言するように、彼らの台頭の背景を見ると、選手として成長するために大切な要素が浮かび上がってくる。
※第3回に続く。
(文・中島大輔)

