データ測定会で“お宝”発見。ドラフトで多くの選手が指名されるため、BCリーグの新たな挑戦

「こういう測定会は、効率よく選手を見られていいね」

4月14・15日に栃木市のエイジェックスポーツセンターで行われたBCリーグの測定会を視察に訪れたNPB球団のスカウトが本音をこぼした。

両日合わせて、同リーグの9球団から220選手が参加。昨年5月の第1回はNPBのドラフトにかかる可能性のある37人を対象に行ったが、NPBのスカウトから「せっかくBCリーグには選手がこんなにたくさんいるので、 数多く取ったほうがデータとして価値がある」とアドバイスされ、今年の第2回は規模を拡大して開催された。

測定種目の根拠

昨今、各種データ計測の重要性がさけばれる一方、日本球界では十分に浸透しているとは言えない。

独立リーグでは2024年に四国アイランドリーグPlusで初めて開催され、BCリーグは翌年から追随した。開催の目的を上野馨太社長が説明する。

「データ計測に対してのアプローチを自分たちの球団ではできないという人たちも多いので、そこはリーグが押し上げていく必要を感じています。データ計測にはどういう価値があり、『あなたは今、球界全体でどういう位置にいるのか』を見せていきます」

今回計測したデータは「インボディ(体組成)」「ジャンプ(スクワットジャンプ、垂直跳び、リバウンドジャンプ)」「スプリント(30m走)」「メディシンボールスロー(3kgのボールをバックスロー)」「投手測定(トラックマン)」「打者測定(トラックマン)」。

エイジェックスポーツセンターでアナライザーを務める関口雄大さんは、「ベーシックな測定です」と説明する。

「メディシンボールスローはスイング速度や投球速度に相関している種目と論文でも言われています。スプリントやジャンプもそうですね。インボディも体組成で、除脂肪体重はスイング速度や球速と比例関係にあると言えます。そして、実際のパフォーマンスの測定。投手は投球速度と各球種の球質の測定、打者はトラックマンで打球速と角度、ブラストでスイング速度やスイングプレーンの測定をしています」

打者の測定は置きティーで行われるため、「スイングスピードと打球速度くらいしか正直あてにならない」と関口さんは言う。対象選手が約100人にのぼり、フロントトスで実施すると再現性にバラツキが出てしまうため、置きティーで行っているという。「将来的には、マシン打撃で本来的な当て勘まで見たい」と関口さんは今後の改善点を口にした。

フィジカルモンスターの躍進

測定会はBCリーグが費用を負担し、計測データはNPBやMLB、韓国のKBO球団などに販売。測定会の2週間後、オンラインで全選手を集めてフィードバックが行われる。上野社長が語る。

「一人ひとりへのフィードバックはなかなか難しいので、『この数字はどう意味があるのか』という一般的な話をします。そこから伸ばしていく部分や改善点は、各球団にトレーニングやドリルがあるのでそれで補っていきます」

計測したデータは四国アイランドリーグと共有される。Homebaseの別記事では日本ハムの大渕隆GM補佐兼スカウト部長の「トラッキングデータがスタッツと違うのは、絶対値でプロとアマの選手を比較できること」という話を紹介したが、上野社長も同様の趣旨を語る。

「自分が今、野球界でどのレベルにいるのか。NPBに行きたいなら、どの辺の価値を出せる選手なのか。それらを客観的に見るための一つのアプローチとして僕らは使っています」

2025年の測定会では当時・栃木ゴールデンブレーブスの外野手・三方陽登が打球速度、スイングスピード、除脂肪体重で際立つ数字を出した。コンタクトに課題を抱えていたものの、IPBLグランドチャンピオンシップ準決勝で逆転の3点本塁打を放つなど勝負強さを発揮。ドラフト会議ではオリックスに育成1位で指名された。

計測でわかる客観データは、選手としてのポテンシャルも映し出している。身体的な能力があれば、技術を磨けば飛躍する可能性があるからだ。

今年の測定会では茨城アストロプラネッツの右腕投手・三浦遼大が151km/hを計測した。「この環境でそれだけ出れば、試合ではもっと出る」と関係者は評価したが、秋のドラフト指名はあるだろうか。

日本とMLBの差

関口さんによると、BCリーグのなかで茨城は「データ計測を唯一意識高くやれている球団」だ。以前からフィジカルアップに力を入れ、2020年から5年続けてNPBにドラフト指名された。2024年から率いる巽真悟監督は今年も計測会に同行し、自チームの選手はもちろん、他チームがどんな数字を出すかまで目を凝らしたという。

対して他球団の指導者は、データ計測に興味の薄い者も少なくない。先を走る者はどんどん進化しており、もし現状維持に甘んじると、どんどん差が開いていく。野球界を俯瞰すると、そうした現状が見られると関口さんは言う。

「現状、めちゃくちゃ差ができているなと感じています。それこそメジャーリーグはもう 1周半くらい回っているような状態です。日本とMLBとの差として、球速や打球速度の部分でかなり乖離が出てきて、どんどん追いつかなければいけない速度が速まっていると感じます。独立リーグにしろアマチュアにしろ、やらない人とやっているチームでは、どんどんその差が広まっている一方です。格差が本当にすごいなと感じますね」

一例としてワールド・ベースボール・クラシック(WBC)での球速を挙げると、日本は優勝した2023年大会では95・5マイル(約153.7km/h)で1位だったが、準々決勝敗退に終わった2026年大会では5位に下がった。

(1)ドミニカ共和国 96.6マイル(約155.4km/h)

(2)アメリカ 96.2マイル(約154.8km/h)

(3)ベネズエラ 95.8マイル(約154.1km/h)

(4)メキシコ 95.1マイル(約153.1km/h)

(5)日本 94.6マイル(約152.2km/h)

日本のレベルが極端に落ちたというわけではなく、トップメジャーリーガーをそろえる各国が急速に伸びているのだ。

では、データ活用で遅れを取る日本は今後どうしていけばいいのか。

そのヒントを探る意味でも、関口さんが昨季までアナリストとして在籍していた日本ハムの好例を後編で紹介したい。

(文・撮影/中島大輔)

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