1月下旬に都内で行われた「2025年度野球指導者講習会(BCC)」では座学に加えて実技講習も行われている。
実技では毎年4項目(守備・打撃・投手・捕手)に分けて展開されており、守備では中日の外野手として活躍し、2004年にゴールデングラブ賞にも輝いた英智(蔵本英智)氏が担当した。
講義では自身が学んできた知見や、練習方法についても共有された。
中日が誇る名外野手によるレクチャー
英智氏は中日一筋で14年間現役生活を送り、04年にゴールデングラブ賞を獲得するなど堅守の外野手として活躍した。
12年に引退すると翌年から中日のコーチに就任。22年まで10年務めたのち、23年からは解説業に加えて中京大学でテクニカルアドバイザーとして活動している。
現在も体の使い方など学びを深めている最中とした上で、以下の前提を示した。
「今日皆さんも正しいと考えて伝えていながらも、半信半疑な点もあって悩まれていることも多いかと思います。
僕自身今でも日々悩みながら取り組んでいますし、選手たちにはさまざまな情報提供して、上手くいけばそれが正解ですし、逆に上手くいったことを選手から教わる形で今前に進んでいるので、僕の中で大切にしてることをお伝えできればと思います」
英智氏がレクチャーしたのはまず投げ方。自身が意識していたポイントについてまず解説した。
「地面からまずたくさんのエネルギーを受けることです。そのエネルギーをロスなくもらってきたものを、末端の指先に伝えるか。ここだけに意識を置いています」

エネルギーのロスについて「いわゆる手ですくった水を目的地までこぼさずになるべく運んでいったら、強いボールが投げられる」と例えを用いながら説明を進めていく。
特に大きな体格でなくても強く、遠くに投げられる体の使い方をさらに説いた。
「腕を下ろすイメージのまま体を回転させていくと、その腕がボールが投げれる方向に出てきます。その際に体をダイナミックに回転、エンジンをフル可動させてボールを到達させます。
その際、足の裏がベタッとついてますと体の可動範囲が限られてきます。体をダイナミックに動かすために、足の裏の支点も内側から外側に移動させながら体を回す動きを数多くやって身につけていきました」

現在大学生を指導している英智氏。アマチュア選手のある傾向を挙げながら、あるアドバイスを送っているという。
「目標をしっかり見過ぎるがために体が曲がって右肩が下がってしまっています。こういう選手に対しては、まず目を切って投げる練習から行います」
ゴロ捕球の足は「どちらも正しい」
英智氏は約1時間の講義のうち、40分近くを質疑応答の時間に充てた。ここから互いに会話を交わしながら疑問を解消していく。
質問の一つとして、「外野手でスタートの構えから、捕球さらにはスローイングまで一連の流れを教えていただきたい」というもの。現役時代は「僕もさまざまな構え方に挑戦してみました」として、時間を使って全体の流れを説いた。
「最初はフラットに高い位置で動きやすい位置から始まって、そこから上体を少しずつ少しずつ下げていきました。
スタートは車のアクセルで言う遊びの部分を膝でつくってあげる。右と左の反応は素早くなれればなれるほどいいのですが、前後の打球はそうも行かなくなります。レベルが上がれば上がるほど詰まっているのかバットの先なのか、泳いでも芯なのかなどで変わってきますので、半呼吸グッと我慢するイメージで判断の時間を設けてました」
構えの次は捕球に移った英智氏は、フライを捕る練習方法を紹介した。
「自分がシグナルを5mほど前からシグナルを選手に出して、右に出したら右に切ってボールを投げたのを捕る。その後反対方向にも投げて切り返して捕る。これを反復でやっていました。
他にもクロスオーバーで切り返したり、右と思ったけども左に切り返して捕るといった動きも加えていくことでさまざまな打球に反応できるようにします」

続いてゴロ補球の際では、外野手でよく議論となる「右足を前にするか、左足を前にするか」についても言及。
これについては、「どちらも正解です。なのでどちらかで捕らなきゃいけないという強制だけはしないようにしています」とし、このように続けた。
「両方やれるようにならないといけないです。僕もセンターを守ってて、右中間の打球を捕ってサードに投げる時は右足が自然に前になりますし、レフト線に来た打球では左足が前で捕った方が小回りが利きますから」


そして最後のスローイング。まず心構えとして、「外野手は長い距離を投げなければならないので、自分自身の移動距離でスピードを上げてから投げることをとにかくやってほしいです」と述べた。
「捕った後すぐ投げようとするのではなく、捕った後はまず自分の勢いをつけて投げる。肘や肩を痛めないようにするためにも、強いボールを投げるためにも必要なことです。
まず自分の移動距離を生み出して、勢いをつけることを大事にしてください。あとはジャンプするなという教え方もあるそうですが、右投げの人なら左でまずジャンプして投げることもやっていただきたいです。
捕って左足に上半身ごと重心の全てを預けて、そこから投げたい距離と強さの分だけの力を右足の方に一瞬で移します。その後にすぐさま投球動作と同時に左足の方へ再び重心を移し返すイメージです」

野球ボール以外を活用した練習法も
質問が多く寄せられた中で、もうひとつ代表的な質問は打球判断について。参加者は小学生を中心に、打球判断を磨くために効果的な練習方法があるかを英智氏に問うた。
コーチとしてプロの選手にも長く指導してきた英智氏だが、打球判断はプロでも難しいと語る。特に投手から外野手に挑戦した選手など、コンバートされた選手がノックを受けてみても感覚を掴む大変さを感じているという。
「じゃあ感覚掴めないから諦めるかと言うと、決してそうではないです。やはり数をこなすしかなくて、ノックでフライを捕るだけでは数は追いつかい。なので、例えば近い距離でまずフライを投げてあげるところからでいいと思うので、そこから始めてみてください。
それが打球になると難しくなるので、新聞紙をガムテープで包んであげたりすると滞空時間が延びて確保されますし、怖さも消えますのでそれを素手で捕ってみる。
遊びの中からスタートして、グローブと軟式ボールになるとハードルが急に上がってかしこまるかもしれないので、テニスボールもとてもいい練習になります。
テニスボールを外で打ったりするとものすごく風で動いて、(ZOZO)マリンスタジアムの強風のような現象が起きますので、野球ボール以外でフライを捕る練習もおすすめします」

約1時間の講義を終えた英智氏は、受講した参加者に向けて最後に自身の考えを述べて締めた。
「インターネットを開くと多くの情報がありますよね。選手も上手くなりたいと思えば思うほど、そういう情報をキャッチしてグラウンドでトライしている人が多いと思います。
なのでそれを一概に否定することなく、やる気があるなと思えばいいですし、それで失敗はあるかもしれないという覚悟の上で見守ってあげる。そこから何がダメだったかを一緒に解き明かしていくような目線でコーチングをしてあげればいいのかなと考えています」
この後も実技講義は続いていく。次は松沼博久氏(元西武)による投手編をお送りする。
(投手編へつづく)

