【BCC/野球指導者講習会レポート】「不正解と思われる」打ち方から解き明かす”いいバッター”への道筋

1月24日〜25日に行われた「2025年度野球指導者講習会(BCC)」。全日本野球協会(BFJ)が主催で毎年行われている講習会は、昨年に続いて集合研修として行われた。

目玉カリキュラムの一つに実技講習があり、ここでは全4項目(打撃・守備・投手・捕手)に分けて開催されている。いずれもかつてNPBで活躍した元選手たちが講師を担当しており、今年度も充実したラインナップが展開された。

打撃編では2009年に首位打者を獲得した土谷鉄平氏(元楽天他)が務め、小学生から高校生を教える指導者たちに向けて、技術や教え方を惜しみなく伝えた。

トップでバットが立つことによる影響

鉄平氏は楽天時代の2009年に首位打者を獲得したこともある巧打者。16年間現役生活を送り、15年に引退後は楽天のアカデミーそして一軍・二軍のコーチを歴任した。

24年から昨年までは球団の下部組織として運営する中学生の硬式野球チーム「東北楽天リトルシニア」の監督を務めていた。

鉄平氏は冒頭に「バッティングに関して共通の正解はないと考えている」とし、それぞれ結果の出る打ち方が選手なりの正解であると述べた。

その上で「ここからが大事で、不正解に近いものというのは共通して存在すると僕はずっと野球をやっていて思うことがありました。今日は『不正解ではないか』という動きがどんな動きかもこの後触れていこうと思います」と、方針を示した。

東北楽天リトルシニアの監督時、練習や試合を通じて全国の中学硬式野球選手を見ていた立場から、バットの位置が気になっていたと明かす。

「とても多いなと感じる打ち方がありまして、構えでバットが立っているのはいいのですが、トップに入った時にまだバットが立ったままの状態。そういった選手がとても多いと感じました」

トップに入った際にバットが立ったままである選手が多いことを指摘

トップから振り出す時もバットが立ったままだとどうなるか、以下のように解説を続ける。

「振り出す時にまだバットが立った状態にあると、体の遠心力にバットも負けてヘッドが下がります。(※下図1)

プロ野球選手でもバットが立ったまま振り出す選手もいますが、彼らは腕の筋力や手首の強さがあるので遠心力に負けずにバットが出てきます。

中学生や高校生はこれから体ができてくるので、トップの時は極力バットが寝てくることが大事です(※下図2)」

ヘッドが下がった状態(図1)
バットを寝かす(図2)

バットのヘッドが下がることで速球にも対応ができなくなることを示した鉄平氏。ヘッドを下げないためにも、トップの位置がポイントになると改めて説いた。

「構えはどんな形でもいいと思いますが、トップに入っていく時には自然に頭の後ろ、若干バットが寝たような状態。

ここからバットが何の淀みもなくスムーズに出てくる形に決まっておかないといけないです。 このトップの決めがとても大切になってきます」

最初に述べた“不正解に近いと思われること”としてバットの出し方を例にしたが、これには一つの根拠があった。

「僕は速球に対応できるかどうかが特に中学・高校生のバッターは重要だと考えています。将来いいバッターになっていくことを考えた時に、速球が打てないバッターというのは必ず将来伸びなくなってきます。

これはプロアマ問わずそのカテゴリー、どのチーム・どの選手を見てもそうなっていました。ですので、まずは速球に対して素直にバットが出せるかどうかがポイントなのです」

変化球への対応は軸足の膝がカギに

続いて下半身の動きについての解説へ。ここでは変化球の対応を行うためのレクチャーへとつなげていった。自身が仕えたあの名将からもらったアドバイスをまず明かした。

「楽天時代に野村克也さんの下で4年間やらせてもらいましたが、野村さんがよく話していたことが

『バッターというのはストレートを待っている中で、どれだけ変化球に対応していけるか。変化球を待ってる時にストレートが来たら、どうバットを出せばヒットではなくてもファウルにできるか。そういうところでチャンスを広げられるんだぞ』

という話をされて、本当にその通りだなと思って今も大切な考えとして持っています」

変化球にどう適応するかも打撃における重要テーマであり、中学生や高校生も壁に直面しているのではないかとも述べた鉄平氏。始めに参考になるポイントとして足の使い方を挙げた。

「足の使い方で一番大事なのが軸足の膝です。変化球が来た時にスイングが崩れてしまう子で多いのは、テイクバックを取って打ちに行きますという時に、膝が中に入ってしまっている選手は変化球が苦手だと思います。(下図1)

あとそうなった時にきっと手は顔の前まで来ているのではないでしょうか(下図2)」

図1
軸足の膝が内に入ってしまい(上図1)手が顔の前まで早く来てしまう(下図2)と変化球の対応が困難になる

変化球によって崩されないようにするアプローチとして、自身がチェックしていた軸足の位置をこのように伝えた。

「基本をお話しさせていただくと、テイクバックしてトップに入った時に膝は中に入らない。 自分のつま先と同じ向きを向いてるぐらいです。 僕はつま先と同じ向きになっているかを必ずチェックしていました。

この形が取れてかつ、手をしっかり引けた状態で残っているか。これが取れるかどうかです」

図2
軸足がつま先と同じ位置を向いているかをチェック

現役時代に行っていたギャップを埋める練習とは?

後半は受講者からの質問に答える形でインタラクティブに進められた。

これらの講義を踏まえて、『鉄平さんは「ストレート待ちの変化球」と変化球待ちのストレート」のどちらがより有効であると考えていますか』と言う質問が一つ寄せられた。

鉄平氏は「基本的にはストレートを狙って変化球に対応していく形がスタンダードだと思います」と最初に回答。

「変化球を待ってストレートが来た際、瞬時にバットを出すことは、プロ野球選手も当然あります。もちろん器用な選手はできると思いますが、中学や高校のカテゴリーではすごく難しいです。

2つのアプローチでは全然違うスイングの感覚、さらには反射神経も必要になってきます。なので変化球から真っ直ぐへの対応を意識しすぎてしまうと、バットに当たることも難しくなってきます。

まずはストレートを待つ中で変化球にも対応する力を広げていく方が、いいバッターへの道筋に沿っていると考えています」

ストレートを待って変化球に対応することが基本と説いた

もうひとつ挙がった質問が意識と現実の動きの差について。自身が現役時代にそのギャップを利用してあえて大げさな動きで練習をしていたかを鉄平氏に問うた。

ここで鉄平氏は「ありました」と答え、ひとつだけ行っていたと明かした。

「僕はバッティングに関して言うと、上から下に落とすだけの素振り。それしかほぼしなかったです」

上から下に振り下ろす動作を行っていた

実演でほぼ真上から振り下ろす動きを見せながらその意図についても続ける。

「打席でやりたいスイングを実際のティーや素振りでやってしまうと仰る通り、現実は違ってきてしまいます。どうなるかというと、大体ヘッドが下がってしまう。 ほとんどのバッターはそうです。

素振りよりも試合での打席の方が、バットが下がらない選手はいないです。これはもう仕方ないことだと僕は思っています。 素振りやティーと本番で全く同じ動きはできないですから。

なのでその違いを逆に分かった上で練習をやるということで、上から下に振っていました。この感覚で実際に試合で打って、少し違う感覚があれば現実とのバランスを調整してました」

その他寄せられた多くの質問に答え切り、約1時間の講義を終えた鉄平氏。最後に技術の他に実践してほしいことをメッセージとして参加者に伝えた。

「僕は小学生や中学生に教える機会があってよく『どんなバッターになりたいの?』って聞くとホームランバッターになりたいと答える子がすごく多いです。

その時に返す言葉があって、それは技術の話じゃないです。『しっかりご飯を食べなさい』と。仮に線の細い子が大谷翔平選手と全く同じスイングができたとしても、おそらくフェンスは越えないです。

なので、遠くに飛ばしたい・強い打球を飛ばしたいっていう選手がいたら、技術練習も大事なんですけどもご飯をしっかり食べて体が強くなることで、よりいい選手に育っていくと考えています」

(守備編へつづく)

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