【Baseball5を学ぼう】 アーバンスポーツ「Baseball5」でアジアトップになった日本での普及から現在までの軌跡とは?

アーバン(都市型)スポーツとして、世界約80カ国へと広がりを見せている「Baseball5(ベースボールファイブ)」。

26年ダカールで行われるユース五輪(15歳から18歳までを対象にした五輪)の正式種目として承認されるなど、今後も更なる普及が期待されている。

「Baseball5を学ぼう」と題しお送りしている前回記事(第1回)では、競技の概要や世界での普及を追った。

第2回は、日本でいつから普及され、世界ではどんな立ち位置なのかをフォーカスする。

(文・白石怜平)

普及から約5年、今年アジアチャンピオンに

日本で初めてBaseball5が行われたのは19年1月。WBSC(世界野球ソフトボール連盟)主催の講習会が東京で行われたのがスタート。

同年7月にはアジア野球連盟(BFA)とソフトボール・アジア(SA)が 組み、「WBSC アジアベースボール5委員会」が設立された。

当時既にヨーロッパやアフリカといった野球に馴染みの薄い国で大会などが行われていた。

競技が誕生して2年ほどだったこの年から、いよいよ野球先進国のアジアでも普及の機運が高まった。

国内ではその後も群馬や福島・京都などでも体験イベントが開催されるなど、全国へと広がっていく。

体験会の模様 ©BFJ

WBSCは世界各国で「Baseball5」を野球・ソフトボールの国内連盟が一体となって普及させることを推奨しており、かつ上述のユース五輪の正式種目にも決定した。

そのため、日本でも国内公式事業として推進するべく動き出した。

全日本野球協会(BFJ)は日本ソフトボール協会(JSA)と共同で「Baseball5 JAPAN」を20年3月に立ち上げた。国際大会への日本代表派遣や普及振興の事業はBFJが主事務局となり、運営している。

BFJ・山中正竹会長も、「大勢の人たちが楽しめる、ニュースポーツ。このアーバンスポーツを世界に広げていきたい」(Baseball5 JAPAN 公式YouTubeチャンネル内にて)とその想いを語っている。

さらに今年3月、大きな動きがあった。

第1回日本選手権(同年1月に開催)で冠協賛をしていた侍ジャパンと手を組んだのだ。

以降日本代表チームは「侍ジャパンBaseball5代表」として活動することが決定し、数々の組織・チームが一体となり競技の普及や強化活動を行っている。

©BFJ

日本は、22年以降国際大会へ出場を続け好成績を収めている。

新型コロナウイルスの影響で20年以降の大会が延期となっていたが、22年8月にマレーシアで開催された「WBSC ASIA Baseball5アジアカップ2022」(第1回アジアカップ)にて国際大会初出場。ここで準優勝の成績を収めた。

同年11月にはBaseball5初の世界大会である「WBSC Baseball5ワールドカップ2022(メキシコ)」に出場し、ここでも準優勝を飾った。

©World Baseball Softball Confederation

今年4月には韓国で行われた「第2回 Baseball5 アジアカップ2024」では侍ジャパンとして初出場を果たした。

ここで見事優勝を飾り、10月に香港で開催される「第2回 WBSC Baseball5 ワールドカップ」への出場権を獲得。昨年行われたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に続く世界一を目指す。

©BFJ

日本を代表するチームや選手は?

続いて、カテゴリーやチーム・選手について紹介する。

Baseball5のカテゴリーは、オープン(15歳以上)とユース(15歳〜18歳)の2種類がある。

1月に初めて開催された日本選手権の予選には、ユースとオープンでそれぞれ10チームと32チームが参加した。

大会には高校生や大学生の現役野球部員も参加することができる。と言うのも、両学生は日本高等学校野球連盟(高野連)や所属の大学野球連盟の部員であっても、届出をすれば野球とBaseball5の”二刀流”で活動することが可能だからである。

実際、日本選手権ではユースの部で横浜隼人高校が優勝し、参加した選手は男女ともに現役の硬式野球部員であった。

©BFJ

ここでオープンの部に出場したチームから「5STARs」、「ジャンク5」、「GIANTS」を紹介したい。

「5STARs」は前述の第1回アジアカップから参加(当大会はチームが日本代表として出場)しており、日本におけるBaseball5のパイオニアとも言えるチームの1つである。

現在も代表選手を輩出しており、數田(かずた)彩乃選手は4月のアジア一に貢献した選手の一人である。

パイオニアと言える所以となっているのが、六角彩子選手の存在である。

六角選手は19年3月にキューバで行われた「WBSCコンチネンタル・コーチング・プログラム」に参加し、同年11月のWBSC総会(大阪・堺市)でもBaseball5の可能性を紹介してきた。

WBSC公認インストラクターにも日本人で唯一選出され、現在もアジアを代表する選手として普及活動を行っている。

六角彩子選手 ©BFJ

また、選手としても日本代表の主力として活躍をし続けており、準優勝した上述の第1回アジアカップ、そしてワールドカップでは選手兼監督として日本をけん引。

第2回アジアカップでも「最優秀女性選手賞」を受賞するなど、選手としてもまだまだ進化を重ねている。

5STARsと並び、日本のBaseball5を世界レベルに押し上げているのが「ジャンク5」。

代表選手では三上駿選手や島拓也選手などを輩出しており、常に複数選手が名を連ねている。

今年の日本選手権では、オープンの部を制し日本一に輝いた。

第2回アジアカップでは若松健太GM兼代表が侍ジャパンの監督を務めるなど、選手・首脳の両面で日本のBaseball5を支えている。

日本のBaseball5界を牽引する「ジャンク5」 ©BFJ

そして、もう一つは「GIANTS」。その名の通り、読売巨人軍が結成したチーム。

かつて選手としてプレーしたアカデミーコーチや、女子チームで主に構成されており、日本選手権ではオープンの部で準優勝を果たしている。

中でも辻󠄀東倫選手は日本代表として、今回のアジア一に貢献しており、元NPB選手の新たな活躍の舞台を開拓する可能性も示した。

GIANTS 辻選手 ©BFJ

最後に、チームを新たにつくる動きも出てきている。かつて5STARsに在籍し、22年のワールドカップで日本代表だった宮之原健選手は新チーム「Spirit Bonds」を創設。

さらなる普及と活性化のために、4月に自ら立ち上げて活動を行っている。

次回は、各チームにスポットを当てて追いかけていく。

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