前回の記事では、主に中学校の部活動において、文部科学省やスポーツ庁を中心とした”部活動改革”に向けての準備段階としての法整備や、各種ガイドラインが発表されたということをお伝えした。今回の記事では”運動部活動の地域移行”に関して検討されている内容について、改めて整理をする。
文部科学省には様々な審議会があるが、その中の中央教育審議会初等中等教育分科会の教育課程部会で、”運動部活動の地域移行”に関する資料が配布されたのが令和4年7月29日のことだった。
本資料では地域運動部活動推進事業の枠組で大きく3つの取組を進めていき、そのために前年度以上の予算を積み上げているという記載がされていた。
- 休日の部活動の段階的な地域移行
- 合理的で効率的な部活動の推進
- 生徒にとって望ましい大会の推進
休日の部活動の段階的な地域移行
こちらの取組は令和5年度以降に段階的に移行していくことを踏まえて、現在既に行われている拠点校での先行事例・実践研究の蓄積やその事例の検証や分析が行われている。拠点校では全国で114ヵ所が選定されており、以下のような内容が実践されている。
地域人材を確保・研修・マッチングする仕組みの構築
地域部活動の運営団体の確保
平日・休日の一貫指導のための連携・協力体制の構築
費用負担の在り方の整理
生徒のスポーツ環境充実に向けた学校と地域の協業体制の構築等
実践研究の中で、地域部活動の受け皿としては地域スポーツクラブと教育委員会が半数以上を占めるという現状が明らかになった。事例集として掲載されている中には、教員がそのまま指導にあたるケースや、社会人や大学生が指導者として地域スポーツクラブに所属する生徒たちに指導を行っているケースがある。また、地域の体育協会が部活動の受け皿となっているという事例では、学校の顧問教員が休日の部活動には関わらないあり方として地域の社会人が指導者となり指導から大会の引率を実践しているというケースもあるようだ。
まさに実践研究の名の通り、地域特性や資源に応じた取り組みが現在日本各地で行われている。
合理的で効率的な部活動の推進
2つ目の取り組みが、合理的で効率的な部活動の推進である。都市部や過疎地域によってスポーツの活動機会が変わってくるのが実情である。それぞれの地域での問題点や課題に応じて、部活動の形式も変わってもいいのではないかという議論である。その一例として挙げられているのが”合同部活動”という形式である。これはある地域に3つの学校(A,B,C)があり、それぞれの学校には野球をやりたいという生徒がいる。しかし、生徒の人数や、指導できる教員がいないといった問題を抱えているケースで、C校に外部指導員を招き、他のA,B校から生徒を招き合同形式で部活動を行うというものである。生徒にとっての運動機会の損失を防ぎながら持続可能な部活動の形式を探っていく段階である。
また、ICT技術を活用した遠隔指導等の活用という内容も見られる。指導者がある拠点から複数の対象校に対して映像教材や配信を通じて、指導者が各校を回らずとも指導ができる体制を整えるという、教員、指導者側の働き方の改善という側面もこの取組には含まれている。
生徒にとって望ましい大会の推進
3つ目がいわゆる大会のあり方の見直しである。これまで中学生の大会(中体連主催大会)では参加資格が学校単位と限定されており、地域のスポーツ団体等の参加が認められないという現状があった。しかし、これまで述べてきたような”運動部活動の地域移行”を推進するにあたっては地域スポーツクラブの存在は切っても切り離せないものがある。

そこで、今後大会のあり方を見直す形が検討されており、スポーツ庁が大会主催者に対して、地域スポーツクラブの参加を認めるよう要請を行っているとのことである。
また、全国大会という存在が本当に生徒たちにとって望ましいものなのかという問題提起もなされており、今後は全国大会の開催回数の精選を要請しているという動きも見られる。
部活動の地域移行については、前回の記事も含めて色々なことが現在検討をされており、その検討の数だけ課題も出ているというのが現状である。本記事を読んで感じたことや実際に読者の皆様の現場で起きていることをHomebaseのコメント欄を利用して議論の場としても本メディアを活用していただきたい。
(了)

