「第3回 Baseball5日本選手権」 ユースの部は花咲徳栄が初出場初制覇!侍戦士らが考え実践した“取捨選択”が勝利の決め手に

1月17日〜18日、横浜武道館で「侍ジャパンチャレンジカップ 第3回 Baseball5日本選手権」が行われた。

年に一度行われるアーバンスポーツ「Baseball5」の全国大会。15歳から18歳が対象のユースの部では、新鋭チームの台頭で新たな可能性に光を照らす結果となった。

(写真 / 文:白石怜平、以降一部敬称略)

「ボール一つでどこでも・誰でもできる」アーバンスポーツ

「Baseball5」は野球・ソフトボールの国際振興の一環として、2017年に世界野球ソフトボール連盟(WBSC)によって考案・公式競技化され誕生した。

現在は90以上の国や地域で急速に普及しており、今年ダカールで行われるユースオリンピックの正式競技となるなど、さらなる発展が期待されている。

ルールは男女混合の5人制で行われ、内野手4人加えて打者の正面で最も近く守る”ミッドフィルダー”と呼ばれるポジションで守る。5イニング制で行われ、2セット先取制で勝敗を決める。

大きな特徴はグローブやバットを使用せず、「ボール一つでどこでも、誰でもできる」こと。21m四方のフィールドで屋内外問わずプレーでき、1試合の時間は3セットで1時間未満というスピーディーさがある。

男女混合で行われるのが特徴の一つ


野球やソフトボールで世界で上位に位置する日本は、Baseball5でも国際舞台で好成績を収めている。

オープンの部(15歳以上)では24年にアジアチャンピオン、「WBSC Baseball5 ワールドカップ」で2大会連続準優勝の成績をマーク。そしてユース(15歳〜18歳)もアジアチャンピオンに輝いた。

WBSCが発表している世界ランキングでは、25年末時点でキューバに次ぐ2位に位置し、世界的にもその実力を証明している。

日本のBaseball5では、選手権が年に一度開催されている。24年からスタートし今年で3回目、2年ぶりに初開催の地である横浜武道館に帰ってきた。

12月の予選を勝ち抜いたオープン12チーム、ユース8チームがこの地に集まり、2日間にわたり頂点を争う戦いが繰り広げられた。

[オープンの部参加チーム]

(Baseball5 JAPAN 公式サイトより)

[ユースの部参加チーム]

(Baseball5 JAPAN 公式サイトより)

横浜隼人高校勢に挑んだ「HANASAKI5」

ユースの部では、ここまで2年連続で選手権を制覇している横浜隼人高校勢が今回も躍進する。ベスト4には「横浜隼人Clovers」「横浜隼人Agressive」「横浜隼人Brave Heart」の3チームが進出した。

しかし今年は新鋭ユースチームが台頭し、新たな風を吹かせた。それが花咲徳栄高校のBaseball5チームである「HANASAKI5」である。

HANASAKI5は同校の硬式野球部・女子ソフトボール部・女子硬式野球部だった3年生の有志で結成されたチーム。Baseball5へ進出した経緯はあの高校野球の名将がきっかけだったと、大西伸明監督が明かしてくれた。

「硬式野球部監督の岩井(隆)先生からBaseball5の話を伺ったのが最初です。男女混合で行う競技ということで、顧問の先生たちにも共有いただいたことから立ち上げようという話になりました」

HANASAKI5を率いた大西監督


岩井監督は同じ加須市に拠点を置く5STARsに相談。女子ソフト部監督・女子野球部監督そして5STARsの六角彩子らと協議し、チームは夏の大会終了を終えた2学期から本格始動することとなった。

ほぼ全員が昨年9月から初めて取り組むことになったのだが、大きな牽引役がいた。

それが、昨年メキシコで行われた「第2回 WBSC ユースBaseball5ワールドカップ」の侍ジャパンBaseball5ユース日本代表の岩村敬太朗。大西監督は岩村の経験とリーダーシップに全幅の信頼を置いていた。

「始めはそれぞれの球技の特徴を持ち寄った形になっていたので、このBaseball5に適応させていくところに苦労したかと思います。

でも我々には岩村くんという日本代表選手がいて、競技に精通しています。なので、その経験を仲間へ伝えてくれたのが大きかったです」

岩村は世界で戦って磨いた技術、そして心構えを惜しみなく注入した。

「野球やソフトボールとも違ってスピード感があるので、そのスピードについていくための練習を打撃・守備の両方で共有していました。

あと、メキシコでは自分の思ったようなプレーができなかったので、一球、ワンプレーで本当に勝負が決まるんだというのを伝えました」

昨年侍ジャパンBaseball5代表として戦った岩村敬太朗

選手権までの約4ヶ月半、時には休日も返上で集まって自主的に練習を重ねていた中、5STARsも全面サポートした。

昨年オープンの部で優勝し、この大会でも決勝に進む強豪と練習試合や合同練習を重ね、技術や戦術を吸収。地元で開催した大会にも出場するなど、交流も深めていった。

岩村は自身も含めて日に日に上達していく実感が沸いていたといい、その変化も肌で感じていた。

「最初は自分が声かけした時のアンサーも少なかったですが、一日一日重ねるごとにチームも一つになっていき、互いの声かけも増えました。

男女一緒に勝利を目指すスポーツは少ないと思いますが、そういった楽しさにもみんなで気づいていけたと思います。もう自分がいなくても本当に頼もしい存在です」

横浜隼人勢に次々と勝利し、初出場初優勝の快挙に

予選を勝ち上がり迎えた選手権。HANASAKI5は予選で前年覇者の横浜隼人Brave Heartに勝利するなどで、準決勝へと駒を進める。大会そして準決勝のトーナメントに臨む際、並々ならぬ想いを岩村たちは持っていた。

「ベスト4は自分たち以外は横浜隼人高校勢でしたので、何としても勝ちたいというのと、初出場初優勝を目標にしていました」

準決勝では横浜隼人Agressiveに勝利し、決勝へと進出。頂上決戦で横浜隼人Cloversと相対した。

横浜隼人Cloversは3年生で構成されているチームで、前年の選手権でBrave HeartやAgressiveでプレーした選手たちで構成されている。

メンバーはその前回大会で男女それぞれでMVPを獲得した星優大や蛭田真白、さらには平野将梧・渡辺隼人など昨年の侍ジャパンBaseball5ユース代表たちが名を連ねた。

前回大会MVPの蛭田(写真中央)と星(同右)

試合は全セット1点差ゲームになるなど決勝に相応しい試合となった。HANASAKI5が5回に追いつきタイブレークの末に第1セットを先取すると、横浜隼人Cloversは次セットを2−1で今度は逃げ切り最終第3セットへと持ち込んだ。

1点が互いに重くのしかかる展開の中、大西監督は冷静に戦況を見守っていた。

「岩村君そして浅見(陽向)さんが、うまくいかないプレーの中でも試合の流れを引き寄せられるように淡々とプレーする姿であったり、失点を引きずらない切り替えができるメンタル。これがとても強いと感じていました。

失点を続けずに、自分たちでプレーを完遂できる。これが我々の持ち味だなという思いました」

浅見(8)ら全員が一つひとつのプレーを大切に積み重ねた


最終セットも4回を終え4−4の同点で、最終回の5回を迎える。表の横浜隼人Cloversが0点で終えると、裏のHANASAKI5が1アウト満塁とサヨナラのチャンスで打席には岩村選手が立つ。

岩村選手はミッドフィルダーへ強襲の安打を放ち、その間に三塁ランナーが生還しゲームセット。HANASAKI5が劇的なサヨナラ勝ちで初出場にして初優勝を成し遂げた。

表彰ではユースの部男子MVPが岩村、女子MVPは横浜隼人Cloversの髙木梨々花が受賞した。

ユース部門MVPの髙木(写真左)と岩村(同奥)

それぞれが挙げた優勝の要因とは?

チームを牽引し、そして優勝を決める一打を放った岩村は勝利の要因について以下のように語った。

「一人一人が緊張せずに、当たり前のプレーを当たり前にできたところが一番大きかったと思います。

あとはフィジカル面において、三年間野球やソフトボールを続けてきたので決して負けてはいないと思っていました。そこにスピードなどがついてきたので、自分たちは自信を持って試合に臨んでいました」

大西監督は試合を通じて選手たちの成長を感じており、それが勝利につながったと述べた。

「僕がいいなと思ったのは、失点をしたくないけどもアウトのカウントは稼ぎたいという局面があった時、選手たちで『1点取られたとしても次の攻撃で返すから、アウトカウントを一つ取ろう』など、取捨選択の判断をしていたことです。

僕らが何も言わなくても、彼らが自分たちで考えて取り組んでいたので、これは大事なことだと思いました」

試合前に円陣を組んで送り出した5STARs。六角もその戦いぶりを見てこのように語った。

「元からポテンシャルの高い選手が多かったので、試合形式での練習を多く行って試合勘を一緒に磨いていきました。みんなとてもBaseball5を楽しんでくれて、“なんとか勝ちたい”と練習を熱心にやっていたと聞いています。

選手一人一人が部活で培った集中力やチームコミュニケーションを活用し、短期間でも素晴らしいチームを作り上げた徳栄の選手達は本当に素晴らしいと思いました。日本選手権で本当に楽しそうにプレーしている姿をみて嬉しくなりましたね」

切磋琢磨した5STARsもHANASAKI5に賛辞を送った

今回の優勝で、花咲徳栄高校が新たな歴史を刻んだとともに、ユース世代の更なる競技普及の可能性を開いた。

大西監督は最後、Baseball5の発展のために学校を挙げて取り組んでいきたい想いを述べた。

「たくさん部活で頑張ってる生徒たちがいます。Baseball5をやっている選手の中には、ハンドボールとかバレーボールなど他競技をやりながら今回の全国大会に出てきた選手がいると聞きました。

我々はパイオニアになれると思いますので、ベースボール型に限らず全ての生徒の中から挑戦した選手を集めて、複数チームでも出場できるよう学校内で連携していきたいです」

優勝を決めたHANASAKI5のメンバー

そしてオープンの部でも熱戦が繰り広げられ、過去2大会の選手権優勝チーム同士が今回決勝で対することとなった。

(つづく)

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