【Baseball5を学ぼう】 5STARs主将 小暮涼 「ベストな感覚を掴んだ」更に研ぎ澄まし狙うは日本代表の座とチームの栄冠

野球型アーバン(都市型)スポーツ「Baseball5」の特集企画。

今回は日本初Baseball5のチームである「5STARs」の主将を務める小暮涼選手。

春日部共栄高時代には二塁手として3年夏に甲子園に出場し、昨年はアメリカのトライアウトリーグでもプレーした。

現在は地元である深谷市で野球スクールを運営する傍ら、Baseball5で日本代表入りを目指し日々練習に励んでいる。

そんな小暮選手にBaseball5との出会いから目指す目標を伺った。

(写真 / 文:白石怜平:以降、敬称略)

きっかけは日本代表選手からの誘い

小暮が最初にBaseball5と出会ったのは昨年の始め。母校・八戸学院大の先輩である秋山翔吾(広島)の自主トレに同行していたときだった。

「秋山さんと自主トレをしていた數田(彩乃:Baseball5日本代表)さんから、『こういう競技があるからやってみない?』と誘ってもらったのが最初でした」

(小暮をBaseball5へと導いた數田彩乃)

聞いた当時は「全く知らなかったです」と言い、のちに日の丸を目指すまでを想像するには至らなかった。

その春に初めて5STARsの練習に参加した小暮は、瞬く間にBaseball5の虜になった。自身が邁進してきた野球とは似て非なるところにどんどん吸い込まれていく。

「”Baseball”とついているので野球に近いと思ったのですが、いざやってみると違いました。バットやグラブを使わず素手でボールを捕る・打つというのが想像つかなかったので難しい印象が最初でした」

(全て”手で行う”のがBaseball5の特徴)

5STARsには国際大会で数々のタイトルを獲得している六角彩子や數田など、日本代表経験のある選手を複数輩出しているチーム。

練習でそんな選手のプレーを間近で見て驚きの連続だったという。

「僕は最初しっかり捉えるとかはなく、みなさん壁まで打球が行くのでそれが想像つかず、『どうやったら壁まで行くの?どうやったら強く打てるの?』って思いました。

守っても短い距離で速いスピードで来ますし、野球では考えられないので、スピード感や細かく体を使うことに驚きを感じました」

(競技に出会った最初は驚きの連続だったという)

ただ、その驚きが逆に小暮の向上心をかき立てた。

難しかったからこそ「上手くなりたい気持ちが強まりましたし、日本代表を目指せることを知ったのでここも挑戦したいと思いました」と語り、5STARsへの入団を即決した。

開始半年で日本代表選考会に召集

その後は動画やチームメートの動きを見て研究を重ねた。また、スキルアップには強力な援軍が近くにいた。

「5STARsは立正大と提携していて、学生さんたちに教えてもらいながらトレーニングができます。僕も隔週で通っていて、Baseball5の動きに必要なトレーニングが何かを考えながら一緒に取り組んでいます」

実際にどんなトレーニングを行っているのか、内容を一部明かしてくれた。

「瞬発力系のトレーニングが多いです。例えばジャンプであったり、ベンチプレスをやるにしてもとにかく重い重量ではなく、体重に合わせた重さをどれだけ速く上げられるかをテーマにやっています」

(瞬発性を高め、パフォーマンスアップへと繋げた)

本格的に競技を始めて約半年、研究とトレーニングを重ね掴んだものがあった。その感覚をこう話した。

「僕の中では”投げる感覚”だなと。”打つ”だと野球でそれは道具を使うからなので、Baseball5だとバッティングでも投げる感覚だと思ったんです。

それで試行錯誤を重ねて自分なりのベストな感覚を掴みました。それが昨年末の日本選手権前ですね」

日本選手権で5STARsはライバルであり、共に日本代表としても国際大会を戦った「ジャンク5」と初戦で対戦。ここでは敗れてしまったが小暮は活躍が評価され、2月の日本代表選考会に選出された。

(鋭い打球を広角に打ち分ける)

この春、主将に就任し新たな自覚も

打撃でも壁に悠々と到達するほど速い打球を放つなど、スキルは着実に上がっていった。そんな小暮に大きな役割が加わった。それは5STARsの主将就任である。

「前任の宮之原健さんが東京にいる関係でチームを卒業されたので、僕が引き継ぐことになりました。

毎週参加してBaseball5の熱は変わらず持っていましたので、六角さんから指名をいただいてありがたく受けました」

(六角(写真右)から直々に指名を受け主将の座に就いた)

5STARsにはユース(15歳以下)チームがあり、小学生も在籍している。オープン(15歳以上)も合わせると30名以上が所属し、幅広い年代で構成されている。

その中で心がけていることがあると語った。

「積極的によく会話するようにしています。年代が違えば考え方も違うし、人によっては楽しみたい人もいれば勝ちたい・上手くなりたい人もいます。

どちらかの熱量に偏りすぎてもよくないので、両方下がらないようにしたいと思ってコミュニケーションを取っています」

(練習や試合後には輪の中心で振り返りを共有している)

ユースにおいてはBaseball5が26年のダカールユースオリンピック公式種⽬に追加され、世界の舞台で戦う土壌がつくられている。

日本の未来を担う仲間に向け、こんな想いを寄せた。

「Baseball5でもユースの日本代表ができた時に、繊細さといった日本人らしさを磨いて野球などのように世界のトップを獲ってほしいと願っています」

プレースタイルと感じた野球との違い

Baseball5を始めて約1年半、日本代表候補に挙がるなど今も実力を伸ばしている小暮。自らのプレースタイルについて訊いた。

「僕はアグレッシブな守備を持ち味にしています。元々野球でも守備が好きなのもあって、どれだけ早くアウトにするかを常に意識しています。

打撃では相手守備の間を抜くこと。Baseball5はうまいサイズ感でできているので、しっかり捕ればアウトになるようになっています。なので相手に捕らせない・投げる体制をつくりにくい方向に打つようにしています」

(アグレッシブな守備が魅力の一つ)

続いて訊いたのが野球との違い。Baseball5は野球と両立可能な競技で、実際に高校生や大学生でも野球部に入りながらプレーしている選手も多くいる。

野球に活かせる部分はどんな点にあるか、小暮はこう説明した。

「守備で話すのですが、ボールを捕る際には体に近い位置で捕球した方が確実性が上がりますし、手が伸びてしまうと特にBaseball5は捕れないです。その意識は野球やソフトボールでも活かせると思います」

(”体の近くで捕る”という基本が野球に活きる一つと語る)

チームそして自らが目指す未来

Baseball5は5STARsやジャンク5などを中心に、普及活動を積極的に行っている。小暮は競技の普及については「認知度は広がってきていますが、まだまだ伸び代があると感じています」とし、自らの考えを明かした。

「今は首都圏が多いので、地方にも広がっていくとさらに活性化すると考えています。特に寒い地域に適した競技ではないかと。

例えば雪が積もってグラウンドでできない時期は、体育館での練習に加えてBaseball5もできます。両方スキルアップできるのでいい相乗効果が生まれるのではないかと感じています」

(普及にも伸び代があると語った)

そして5STARsの魅力について。チームには日本が国際大会に参加し始めた時から代表経験のある選手が在籍してきた。

10月に行われるワールドカップの代表選手にも六角と數田が選出されるなど、世界を知る選手がいるのが大きな強みの一つである。

「お2人も(4月の)アジアカップ優勝など国際大会を経験しています。日本と海外だと打つ方向やポジショニングなど戦略が違うそうで、そこも共有してもらいながらやっています」

小暮を始め、チームは6月に発足したリーグ戦「B5.LEAGUE KANTO 2024」を戦っている。日本選手権で敗れた悔しさを晴らすべく毎月1回の真剣勝負に向けてモチベーション高く臨んでいる。

(リーグ戦でも活躍を見せている)

最後に自身とチームの今後について語ってもらった。

「チームとしては、日本選手権で優勝することです。ジャンク5が相手とはいえ、初戦敗退してしまったので次こそはジャンク5に勝って優勝したい。

選手としては日本代表になることはもちろんのこと、それをより多くの機会を経験したいです」

小暮の次なるアピールの舞台は日本選手権。そこに向かって牙を研ぎながらチャンスを掴もうとしている。

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