「スポーツ医療の現場に必要なものは?」。そう聞かれたら、あなたはどう答えるだろうか。最新鋭の設備、最先端の技術と知識。これらも当然必要であるが、より必要なのは、“スポーツの現場”を知っていることだろう。この夏、オープンしたMTXスポーツ・関節クリニックはそのどちらも兼ね備えたスペシャリストたちによる医院である。スポーツ医療の最先端には、頼もしき“チーム”が存在した。
アカデミー運営を通じて得た“現場感”をもとに。
スポーツにケガはつきものである。特に野球においては、投げる動作の特異性などから、肘や肩に故障を抱えてしまうことが多く、それがそのまま競技の引退に直結してしまいがちだ。正しい知識を持った上で指導をするということはもちろんのこと、その後の“処置”や“予防”が必要となってくる。
「未来ある若い子たちを支えたいと思っています。そのためにみんなで力を合わせてやっています」
そう語ってくれたのは、この夏に東京都・千代田区にオープンした『MTXスポーツ・関節クリニック』の院長・富岡氏だ。同クリニックは『“再生医療”と“運動療法”を組み合わせた治療』を強みとする、最新鋭のクリニックである。

(8月末日にオープンし、早くも多くのトップアスリートや学生たちが足を運んでいる)
ただ、最新鋭なだけではない。同クリニックは、多種多様なスポーツの動き方や、それに紐づくトレーニングをサポートするMTXアカデミー(https://mtx-academy.movetex.co.jp/ ※運営は別会社)と連携しており、昨今のアスリートたちの課題を共有している。最新鋭の治療を、アスリートたちのいまの実態に合わせて展開すべく、クリニックとアカデミーの連携によって、その効果を最大限にしようという心算だ。
技術指導から処置までの一貫指導で選手たちをサポート
一般的には、技術指導はチームで行い、ケガをしてしまったり、リハビリが必要なときはチームを離れて近所の病院や整骨院に通院したりするのが普通だろう。もちろん、プロチームや強豪チームであれば、チームに専属のトレーナーがいて、選手の健康管理を行いながら日々の練習に臨むことができる。ただし、特に育成年代においては、それは非現実的だ。
MTXスポーツ・関節クリニックは、アカデミーと連携をすることによって、技術指導とトレーニング、さらにはリハビリから処置まで、アスリートの状況を横断的に把握しながら、一貫した指導・処置を行うことができるのが強みである。例えば、右肘に違和感のある選手がいるとして、どの程度の強度でトレーニングをしてよいのか、今後の予防のためにはどのような技術を身につけるべきか、といったことをわかった上で指導ができるのである。
一見すれば当たり前かのように思える話だが、それが簡単でないのは、前述のとおりだ。指導の現場と医療の現場が別な以上、どうしても相容れずにきた部分に、同クリニックは挑戦している。

(設備も最新鋭の機器を導入。写真は日本に4台しかないというトレーニング器具)
同クリニックの院長を務める富岡氏は、元々アメリカンフットボールをプレイしていた元アスリートだ。高校時代の大怪我をきっかけに、「怪我に苦しむ人たちのサポートをしたい」という思いを持つようになり、東京警察病院の整形外科勤務などを経て、直近では東京五輪の選手村にも派遣された実績を持つ。「自分の知識を、これからのアスリートたちのために使えるのであれば」ということでクリニックを開業した。
「非常にやりがいを感じました。当院のひとつの特徴…というより、私のわがままではあるのですが、診察室は広めのスペースを用意してもらいました。患者さんたちに実際にスポーツに合わせた動きを確認してもらったりしながら処置をしたいと考えています」

(富岡院長こだわりの診察室。写真に写っていないスペースには大きめの鏡も設置されている)
現場にも生まれている相乗効果。チームで取り組める強み
トレーニングや技術指導を行うトレーナー・インストラクターと、医師がともに仕事を行うことでの相乗効果もある。連携先のMTXアカデミーでチーフトレーナーを務める木村氏はこう語る。
「いままで技術的なアプローチだけしかできなかった部分に後ろ盾ができること、加えて、より正しい指導ができるということに充実感があります。クリニックとアカデミーが力を合わせることによって、アスリートのみなさんにとっては本当に何倍も力になれると思います」
9月某日には、少年野球チームの一斉診断を行った。肘や肩の検診も行いながら、選手たちの関節の可動域の測定と、最新鋭の機器を用いての補助トレーニングなども実施。今後はこういった取り組みも積極的に行い、多くの子どもたちを支えていきたいと考えている。

(チームの選手たちを一斉診断。故障の予兆がある選手も見つかった)
「我々は東京にいますが、ゆくゆくは日本全国の選手たちをサポートできるような取り組みを実現できればと考えています。はじまったばかりのクリニックですが、未来あるアスリートたちを支えるために、MTXグループが一体となって、取り組んでいきたいと思います」(富岡院長)
ただの“最新鋭”ではなく、スポーツ医療に必要な知識とメンバー、そして施設を持つ“チームMTX”。治療に足を運ぶのはもちろんのこと、スポーツ界を支える彼らの取り組みを今後も注目してほしい。
(了)

