3月20日と21日、都内で行われた侍ジャパンBaseball5代表の公開練習。27日から31日までの5日間、香港で行われる「第3回 Baseball5 Asia Cup 2026」(以降、アジアカップ)に向けての最終調整の場でもあった。
10人の代表選手のうち半数の5人が初選出された今回のメンバー。1月の日本選手権で躍動した選手たち、そして日本のBaseball5の未来を担う選手たちが新たに日の丸を背負った。
(写真 / 文:白石怜平、以降敬称略)
1月の日本選手権両MVPが代表初選出に
今大会の新戦力5名のうち2人は、今年1月の日本選手権で男女でMVPに輝いた選手たち。共にジャンク5エレメンツでチームの躍進に貢献した東翔紀と安立梨子が選出された。
東は前回の代表選考会にも参加しており、2年越しで目標であった侍入りを果たした。本池監督は選考の理由についてこう述べている。
「全てにおいてハイレベルのプレーができるところが彼の強みです。打撃では広角に打てたり、守備も複数ポジションを守れます。あとは走れますし、体力もあります。
以前からユーティリティ性が高い選手であることは知っていましたが、そこに引き出しであったりとか、あとは強さ。とても打球に迫力が出てきたと感じて選出しました」

同じく選手権でMVPに輝いた安立には直接話を聞くことができた。昨年も横浜隼人高校の3年生から構成される「NEXUS6 5」で選手権に出場し、卒業後ジャンク5エレメンツに入団すると、瞬く間に頭角を表した。
侍ジャパンの前監督でチームの代表を務める若松健太氏も入団当初から、「次の侍ジャパンの女子メンバーには絶対入ってほしいですし、入れる素質は間違いなく持っています」と評しており、1年以内に実現させた。
取材では充実した表情で応えてくれたが、その明るさと貪欲さがプレーの源に感じることができた。
「六角さんや數田さんは、前回大会の悔しさや世界一を獲りたいという気持ちが全面に出ていると感じますし、一緒にいて常に勉強になっています。私たちも一緒に戦うからにはついていくしかない。そんな想いです。
あとは、私の中で『遠慮せず質問していったもの勝ち』だと思っていて、見て学ぶことももちろん大事ですけども、言葉を聞いて一緒にやってもらう方が吸収しやすいんです。
打撃でも『こっちの方がいいんですか?』と聞いたら、快く二人が答えてくださるので、本当に嬉しいですしありがたいです」

パワフルな打撃が持ち味である安立。選手権でも広角に強い打球を打ち分け、相手の間を抜ける安打を放ってきた。世界の舞台でも自分らしさを表現したいと意気込みを語った。
「私は打ち方が独特で、みなさん腕を曲げて打っている中で、私は腕を伸ばして打っています。日本や世界を見てもいないので、そこを特徴にしたいです。
と言いますのも、女子のバッティングは(走者を)送ることじゃないことを表現したいなと思っているんです。男子だけではなく、女子もヒットを打って走れるんだというのをアピールしつつ、笑顔で明るくプレーしたいです」

男子としては唯一、学生での代表入りした上村
女子選手の新戦力でラインナップに加わった2人目が衞藤奈菜。本池監督は、同じ東京ヴェルディ・バンバータで共にプレーしており、今年の日本選手権ベスト4進出に貢献した選手である。
間近で見ているからこそ長所を熟知しており、指揮官は選出理由を以下のように述べた。
「衞藤選手の強みは、男子の強い打球もしっかりと捌けるところです。フィールドでは女子3・男子2と女子2・男子3で出場するのですが、女子選手が3人出場する時は、三塁方向が狙われやすい傾向にあります。
彼女はメンタルも強いですし、そういった場面でパフォーマンスを発揮してくれると期待しています」

男子で唯一の学生選手となったのが上村(かみむら)将大。桜美林大学Baseball5部に所属しており、日本選手権でも学校単位では最上位であるベスト8入りも果たしている。
拠点としている同大の体育館ではジャンク5エレメンツと一緒に活動しており、日本代表常連の島拓也や三上駿らと毎週練習を積むベストな環境でスキルアップを図ってきた。

代表選手が身近にいることから、侍ジャパンに入ることが自然と目標になっていた上村。日本代表としての経験が自身そしてチームの底上げになっていると実感している。
「前回のアジアカップやワールドカップでの例を挙げながら教えていただいています。国内で試合する際のセオリーもあるのですが、海外だと違う手法をしてくると聞いて、新たな発見になっています。
僕は桜美林の練習でも実践するのですが、それが桜美林のメンバーたちのいい刺激になって、引き出しが増えていると思います」
初の代表入りとなったが、練習でも臆せず攻守に思い切りのいいプレーでアピールを重ねていた。アジアカップに向けては打撃を軸に貢献したいと意気込んだ。
「僕の持ち味は、どの方向にも力強くかつ正確に打てるところです。海外選手に対して自分の打球がどのくらい通用するのか楽しみですので、全力で自分のプレーをしたいです」

16歳のユースオリンピック主力候補も選出
そして新戦力の最後はHi5 Tokyoの城久美。城は16歳の現役高校生であり、ユースの対象年齢ながらオープンの部で侍ジャパン入りという快挙を成し遂げた。
部活動で野球も行っている城選手は、競技歴は約半年ほど。ただ、本池監督は「守備では十分通用するレベルだと思いますので、もちろん大会でも出場してもらいます」と戦力として選んだと明かした。

城がBaseball5と出会ったのは、昨年夏の甲子園がきっかけだった。開会式後の始球式で森本愛華が登板したのを見て知ったことで、自らも挑戦を決めた。
競技を始めてから、日本代表入りは将来の目標に置いていたそうで、選出を聞いた際は「驚きました」と当時の心境を明かした。アピールポイントは本池監督が評価した通り、自身も守備を挙げた。
野球では二塁と遊撃を守っていることからその経験も活かし、打撃も先輩たちの教えを請いながら確かな成長へとつなげていた。
「どんな打球にも食らいついていくところが自分のアピールポイントです。素手でボールを捕ることにも慣れましたし、打撃も始めた当初よりも打球が強くなっていますので、全体的に自分として成長していると感じています。
でも、皆さんに比べて守備力も打撃の正確性もまだまだ伸ばせるところがたくさんありますので、そこは続けていく中でしっかり高めていきたいです」

なお、この夏ダカールで行われるユースオリンピックで初めてBaseball5が正式採用されており、日本も昨年アジア一になった際に出場権を獲得した。
現在16歳である城選手には、早くもオリンピックでの代表入り並びに活躍が期待されている。
日本のBaseball5は“総合力”で勝負
27日のアジアカップまで残り数日。21日を持って侍ジャパンBaseball5代表は最終練習を消化し、離脱者を出すことなく練習期間を完走した。
この2日間は公開練習という形を取っており、観客も入れて行われた。時にはボールが壁に当たる音だけが響き続けるなど、活気とともに緊張感も会場を包んでいた。
「2日間とても良い練習になったと感じてます。皆さんに見られながらプレーする経験が少ない選手もいますので、より引き締まった時間でした」(本池監督)
本池監督を始め侍ジャパンのユニフォームを着る者全員が、アジアカップ連覇そしてその先のワールドカップ制覇を目標に掲げる。その実現のために、日本は“総合力”で勝負したいと指揮官は語っている。その意図をこう説いた。
「我々は22年も24年もキューバに負けて準優勝でした。そのキューバにはパワーで負けたとか、スピードで負けたとかいう印象ではなかったです。
引き出しの多さやミスをしない。そういった点がキューバの強みだと私は感じました。世界で勝つためには総合力が必要だと考えていて、Baseball5における引き出し・たくさんの戦術を持って戦いたいです」

侍ジャパンはアジアカップ連覇を通過点とし、その先に見えるワールドカップ制覇を見据えながら、世界の舞台でも躍動する。
(了)

