【BCC/野球指導者講習会レポート】ピッチング以外の必要スキルから紐解く“バッターを抑える投球術”

全日本野球協会(BFJ)が主催する「2025年度野球指導者講習会(BCC)」が1月24日〜25日に行われた。

毎年行われる本講習では4ポジション(打撃・守備・投手・捕手)に分かれた実技講習があり、投手編では松沼博久氏(元西武)が担当。

投球動作のみならず、投手として必要なスキルを広く解説した。

“兄やん”が説いた投げ方の基本

松沼氏は1978年ドラフト外で弟の雅之氏と共に西武へ入団。79年に16勝で新人王を獲得するなどプロ通算112勝を挙げ、広岡達朗監督から森祗晶監督によって築かれた西武黄金期の一員として活躍した。

90年限りで現役を引退後は、ロッテや西武でコーチを歴任している。

冒頭で「基本的な形をうまく説明していきたい」と方針を示した松沼氏は、「イップスになってしまったり、肘や肩を壊さない投げ方とは何か」を自身の経験から述べた。

「僕の考えは、軸足に体重をしっかり乗せることだと考えています。右投手であれば左足を上げ、腕が上がる。そこから体重移動をしっかりできたら、最後のフォロースルーでもしっかり(体重が)乗ったままになるので、体が一塁や三塁へ流れることも防げます」

投球動作の基本である足と腕を”上げる”こと

軸足に体重を乗せることで力が蓄積され、スムーズな体重移動へと繋げることを一連の動作を通じて説いた。続けてフォロースルーで体重を乗せることによるメリットについても解説を加えた。

「投げ終わりでバランスが崩れてしまう投手と比較して、しっかり投げ終われるスタイルができれば、ピッチャー返しへの反応もできるはずです。そこもしっかりと念頭に入れてピッチングをすれば、とてもいい投げ方になると思います」

バランスを保つことでピッチャー返しにも対応できる

松沼氏は腕を上げる位置についても言及。最も力が入るとされる場所を紹介しながら、力を逃がさないポイントも添えた。

「この“ゼロポジション”(下図参照)が、一番力の入る位置です。肘が下がってしまうと力が抜けてしまうので、少しまっすぐになっているかどうかをチェックします。このポジションが一番いい投げ方へと繋がってくるので、ぜひその点も見てあげてください」

最も力が入る“ゼロポジション”

クイックで抑えるコツは投球術にあり

ここからは大学生にも参加してもらい、まず投球時に最も意識している点を問うた。そこで“体を開かせない”という回答を受け、体の開きを抑えるために必要なグローブの動きをピックアップした。

「意識するのは、グローブを開かずに畳むこと。体重移動の時はまだ閉じたままの状態で投げます」

開きを抑える動作の一つがグローブを畳むこと

もうひとつ松沼氏が解説したのがクイック。試合で多く活用する動きであるとして、時間を取って丁寧に説明した。

「いくら素早く投げようと思っても、足を上げてしまうと時間が掛かってしまいます。 クイックをやるときは、足を上げずにそのまま体重移動する形で投げると、ランナーに走られるリスクが減ります」

ただ、最初に解説した力を溜める動きが省略されるため、球威はどうしても落ちてしまう。それを補うためには投球術が必要と説いた。

「そのときはコースをしっかり投げ分けることが必要です。 ストレートと変化球を組み合わせてバッターを抑える。ここがポイントになると思います。

注意する点としては、投げる手が後ろに出て見えてしまうとバッターは打ちやすくなるので、できるだけ体の中に入れて投げる。

グローブでも隠せた方が、バッターから見ると嫌なタイプのピッチャーになるので、その点も意識してやってみるのも一つです」

球の出所を隠すことで打者を撹乱させる

バントや牽制といった投球以外の質問も

後半では参加者からの質問を募った。先ほどクイックでの考え方における解説があったが、そこから派生してバント処理・牽制についても問いが寄せられる。まず松沼氏はバント処理の説明から始めた。

「例えば一・二塁のケースでバントしてきたとします。その時は皆さん半身になって、捕って二塁へ投げるんですね。 実は半身で捕ると守備範囲が狭くなるので、イレギュラーした時に弾いてしまって対応ができない。

ですので正面で捕って右足を使って投げる。これが基本になります。必ずしも人工芝とは限らないので、必ずイレギュラーというのが出てくると思います。そういった場面では正面で捕って切り返した方がエラーは少ない、つまりアウトにしやすいです

サードへの送球も同じです。 バント処理は正面で我慢して捕って、二塁や三塁に投げる。 これが基本だと思います」

イレギュラーに対応するため正面で捕るのが基本

続いては牽制。ここでは学生と一緒に考え方や動きの解説を展開していく。

「ランナーも盗塁したい・リードを取りたいので、どこで抑えるかだと思います。ピッチャーとしては目で抑えながら振り向きざまに、足と肩をしっかりと投げる方向に出すのが基本です。

考え方としては、けん制でアウトにするイメージを強く持つと、バッターと勝負ができなくなるので、ランナーを抑えながら投げる意識がいいと思います。

タイミングとしてはホームに投げるよってイメージを持たせたら、ランナーは少し出てくるので、そこで振り向きざまに牽制すると効果は高いです」

腕だけでなく、足や肩を使って牽制球を投げる

フォーム固めに有効なシャドーピッチング

挙がった質問の中には現在の制度に合わせての育成相談もあった。

学童野球の指導者からは、「球数制限に適応するため、チームとして投手ができる選手をより多く増やしたいです。松沼さんの視点から、アイデアがありましたら教えてください」との問いも寄せられる。

ここで松沼氏は、現役時代に行っていた練習方法を披露した。

「僕は広岡達朗監督にたくさん課せられたんですけども、シャドーピッチングです。タオルを持ちながら動作をすれば、ピッチングの形はできますのでとても大事な練習です。

ボールを遠くに投げるとなると確かに負担はかかりますが、距離が近いところでの動作だけであれば、あまり負担をかけずいいフォームができていくと思うんですよね。

ブルペンで投げることと比べれば面白くないかもしれないですが、やった方がもちろん上達します。自宅でもできますのでやりやすいですから、シャドーピッチングをやって力をつけるのは大事です」

シャドーピッチングも有効な練習法と説いた

約1時間の講義を終えた後、指導者そして指導を受ける保護者へのメッセージを送った。

「僕も小学生から社会人まで、様々なカテゴリを見てきました。その中で最も大事な時期は、小学校から中学校に上がる年代だと考えています。

この年代が成長していくには、親御さんの力も欠かせないです。一番近いコーチですから、ぜひ親御さんには食事や睡眠など野球以外の部分でもサポートしていただきたいです。

僕は子どもたちだけを教えるのではなく、親御さんにもアドバイス送ることも大切だと思っていつも指導に当たっています」

技術編の最後は捕手編。黒羽根利規氏が講師を務め、講義が行われた。

(捕手編へつづく)

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