【Baseball5を学ぼう】 日本代表 六角彩子(後編) 「競技を通じ、世界平和へとつながる可能性も」 自身が語るBaseball5の未来

本編で連載企画としてお送りしている野球型のアーバン(都市型)スポーツ「Baseball5を学ぼう」。

六角彩子選手特集はいよいよ最終回。本編では24年に入ってからの活躍と今後のBaseball5が持つ可能性について語ってもらった。

(中編を読む)

(取材 / 文:白石怜平、表紙写真:本人提供、以降敬称略)

4月、国際大会を初制覇

今年に入り2年ぶりの世界大会を控えていた。まずは4月13日~16日に韓国で行われた「第2回 Baseball5 アジアカップ2024」である。

代表選出に関わる大会が2月に開催された「第1回 Baseball5日本選手権」だった。同選手権で活躍した選手を選考会へと招待し、さらに絞り込みを行うものだった。

六角は順当に代表へと選出。また、今回監督は選手権で優勝した「ジャンク5」の若松健太監督が指揮を執ることになったため六角は選手専任で出場した。

24年のアジアカップでは選手一本で出場した(©️BFJ)

これまで選手兼任監督だったこともあり、本音ものぞかせた。

「監督はスタメンの選手を決めるのと、途中で起用や戦略を考えます。やはり選手との兼任は大変だったので、監督は誰かほしいなとずっと思っていました(笑)今回は選手のみだったので、自分のやるべきことに集中できました」

今回のアジアカップ日本代表は5チームから選出され、バラエティ豊かな構成になった。集まった時から早くも手応えを感じていた。

「最初の合同練習の時から、『絶対負けないでしょ!』という感覚でした。チームワークもあって、コミュニケーションが取れているので”世界一になれる”と今でも思ってます。当然他の国もレベルが上がっているのは実際に海外に行って理解はしていますが、それでも自信が揺らぐことはなかったです」

大会期間中も宿舎で自然とチームで集まって語り合うほどの絆を持った「侍ジャパンBaseball5代表」。六角の言葉通り、準決勝まで一度も負けることなく決勝へ進出した。

その自信は結果となって表れた(©️BFJ)

決勝の相手は2年前に敗れたチャイニーズ・タイペイ。2年越しで同じく頂上決戦でのリベンジマッチとなった。

初戦は1点差で落とすも、その後連勝し侍ジャパンが初のアジアチャンピオンに輝いた。国際大会で初の優勝を成し遂げた。

期待に違わぬ活躍を見せた六角は「最優秀女性選手賞」に輝き、ワールドカップに次ぐタイトル獲得となった。

世界を代表する地位は揺るがない(©️BFJ)

この時の心境を問うと、決して満足などせず先を見据えた答えが返ってきた。

「もちろん嬉しいです。ただ、ワールドカップでも感じた女子選手の強化をしたいと。もっともっとやることはあると感じましたね」

「伸びしろは無限大です」

22年・今年と国際大会を戦ってきた六角。日本のBaseball5を普及・強化していきたい想いは誰よりも強く持っている。今後、国際大会で勝っていく上で必要なことは何かを訊いた。

「フィジカルやスピードももちろん必要なのですが、戦略やチームワークをという長所を磨いていきたいです。日本は他の国と比べてもこの2つはトップレベルだと思います。後は競技者をどんどん増やすことです」

上記を踏まえて、日本のBaseball5は「もう伸びしろしかないです」と笑顔で断言してくれた。その伸びしろについても語った。

Baseball5に大きな可能性を感じている(筆者撮影)

「まだ競技を知らない人がたくさんいます。ただ、やってみるとみなさん”楽しい!”という声をいただくので、やる場所が増えていけばもっと多くの方にそう感じてもらえるのではないかと。

野球は女子野球もありますし、女性がダイヤモンドスポーツに挑戦することのハードルは高くないと思います。Baseball5も面白いと感じてもらえる人は今後増えていくと信じていますし、伸びしろは無限大です」

Baseball5が持つ世界平和への可能性

日本でのBaseball5の伸びしろについて語ってもらったが、世界を知る六角だからこそ、競技が世界を変える可能性を秘めていることを感じている。ある国に行った際のエピソードを紹介してくれた。

「Baseball5ってすごいなと思った一つで、ミャンマーの学校で体験してもらった時でした。Baseball5をやってみた子どもたちが、今まで男子と女子が絶対分かれていたのに、休み時間に一緒に遊ぶようになったんですよ。

小さい頃に男女で遊ぶことを経験した子と、全く経験しないで遊んでた子では、大人になったら世界観が違うと思うんです。それってすごく大きな話で、これは世界平和につながるなと私は強く感じたんです。

男女格差のある地域も、まだ世界中を見渡すと0ではないと思います。男女が共同で仲良く協力することで、平和に向けた一助になるんじゃないかと私は感じていて、だからこそこの競技をいろんな国に広めたいなと思ったシーンでした」

海外での経験で想いがさらに強くなった(筆者撮影)

女子野球そしてBaseball5のさらなる普及を

現在、5STARsでBaseball5に取り組みながら、野球においても「茨城ゴールデンゴールズ」の女子チームで活躍している六角。

それぞれの目指す姿をインタビューの最後に語ってもらった。

「野球人として私は女子野球の面白さっていうのを伝えていきたいです。いろんな伝え方があると思いますが、プレーで見せるのも一つですし、発信するのも一つです。練習や試合での様子を通じて、”女子でもこんな技がある”ことを見せたいです。

女子野球を取り上げてもらえるような活動というのをしていきたいと思います。普及活動に今後も力を入れていきたいです」

今後も高いパフォーマンスを示し続ける(筆者撮影)

そして、Baseball5では10月に香港でのワールドカップが控えている。日本が世界一になるため、よりたくさんの人に魅力を伝えるための想いを語った。

「競技人としては日本を世界一に導くこと。そしてプレイヤーとして世界を引っ張っていくという気持ちが強くあります。それは常に目指しています。

そのためにも、特に女子選手の強化に力を入れていきたいです。

男子のトップレベルのプレイヤーよりも速い打球を打つのは難しい部分もあると思います。その分コントロールや繊細さ、相手の裏をかくボレーを打つであったり、守りがいない場所に打つなど練習したらできることを重ねて、より細かなプレーを鍛えることが一つあると思っています」

Baseball5はまだまだ大きな可能性を秘めている。その可能性を世界で輝かせるべく、六角はさらなる高みへと上っている。

(おわり)

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