日本が初参戦した「第2回 WBSCユースBaseball5ワールドカップ」世界の舞台で見えたユース世代における今後の伸びしろ

9月24日〜27日の4日間、メキシコ・テピクで行われた「第2回 WBSCユースBaseball5ワールドカップ」。

3月の「2025 II YOUTH BASEBALL5 ASIA CUP」(アジアカップ)を制し、アジアチャンピオンとして臨んだ侍ジャパンBaseball5ユース日本代表は、初めてワールドカップの舞台に立った。

世界最高峰の大会で重ねた激闘の軌跡、そして今後日本のBaseball5における将来の可能性などを、本池太一監督(東京ヴェルディ・バンバータ)・六角彩子コーチ(5STARs)に伺いながら2回に分けてお送りする。

(取材 / 文:白石怜平 、 サムネイル写真:World Baseball Softball Confederation、写真提供:BFJ)

フィジカルそして経験の差を感じた本大会

日本としては初参戦となったユースワールドカップは、参加した14カ国中7位で終えた。本池監督はまず、全体を以下のように総括する。

「優勝を目指して臨んだのですが、他国のフィジカル面を比較した時に海外のレベルとは差があると感じました」

技術面でも差を感じたと続けた本池監督。日本のユース世代は高校生であることから、高校野球または他の部活との兼務であり、競技歴も3ヶ月〜半年の選手で構成された。

ただ、他国を見ると大きな違いがあったと語る。

「日本は出ていないですが、前回の第1回ユースワールドカップに出場していた選手、あとはオープンの部でのワールドカップに昨年出ていた選手が今回の大会に出場している選手が多くいました。

特に開催国のメキシコはこのユースに合わせて来たのかなと感じるラインナップでした。なので、競技歴が長くて国際経験を積んだ選手が他国にはたくさんいることを感じさせられた。そんな大会でもありました」

他国には国際大会の経験が豊富な選手が多くいた ©World Baseball Softball Confederation

六角コーチも世界のユース世代のプレーを見て、感じたことを以下のように語った。

「世界のユース世代のレベルの高さに圧倒されました。また、どこの国の選手たちも競技歴が長いことに驚きました。

日本でユースカテゴリーはまだ始まって日も浅いので、今後ユース世代の育成が必要だと強く感じました」

侍ジャパンのメンバーはアジアカップから半分の4人を入れ替えた。

選考のポイントは前回同様「男子はパワーとスピード、女子は守備力に長けた選手」を挙げ、合宿を数日行い大会へと臨んだ。

首脳陣はコミュニケーション面をアジアカップ時同様に重視。まだ16歳〜18歳の高校生が初対面の中でつくられる急造チーム首脳陣やスタッフらもお互いのことを短期間で知る必要があった。

アジアカップの際は、台湾への出発前日に空港近くに宿泊することで結束を深めた経験も踏まえ、今回はさらにチームが一つになるための工夫を凝らしていた。

「土日の練習会だけでは、選手同士そして我々もお互いの人となりを知るのには限界があると思いました。

前回も台湾に行く前の宿泊でチームがまとまる瞬間を感じたので、合宿を早めに設定するよう協会にお願いするなどして準備を進めていきました」

オープニングラウンドではトルコ・ベネズエラと対戦

日本はオープニングラウンドでは、グループA〜DのうちグループCに所属。トルコ・ベネズエラと戦った。※フィジーには不戦勝

初戦のトルコには2−1で勝利し幸先のいいスタートを切ったが、この時点でアジアカップの時とは違う、世界の壁を感じつつあったという。

「トルコは特に女子選手の打球が強くて切れ目がない印象でした。大会ベスト5に女子選手が選ばれていて、ファーストの(女子)選手も15〜16歳だったと思いますが、身長が179cmありました。なので、ここでフィジカルの強さを早速感じましたね」

初戦のトルコ戦では2セット連続で1点差ゲームを制した ©(一財)全日本野球協会

しかし同日トルコ戦の後に行われたベネズエラとの試合、2セット連続で11点を奪われるなど苦戦し0−2で敗戦。相手選手の攻撃力の高さを感じた試合だった。

「ベネズエラは全体的に打球速度が速くて、他国の中でも群を抜いていました。ベネズエラだけ打ち方が違うんです。上から投げるような感じで速い打球を打ち込んで来ました。

体がすごく大きいわけではないのですが、選手一人ひとり見てもすごいバネがあって、特にベネズエラの攻撃陣は全チームを見ても抜けていたと思いますね」

ベネズエラ戦では世界を代表する攻撃力が大きな壁に©World Baseball Softball Confederation

アジアカップ決勝以来の再戦となったライバルとの対決

2勝1敗で進出したプレーオフ。ここでは本池監督が全体を通して最も印象深い試合に挙げたチャイニーズ・タイペイとの試合。

アジアカップでも頂点を最後まで争ったライバルは、今大会でキューバに次ぐ準優勝を果たすなど、ユースにおいて世界を代表する力を持ったチームでもあった。

チャイニーズ・タイペイは男性選手のパワーと技術が高いのが特徴で、今回も「合宿の時は台湾の打球を想定して練習を行っていた」と指揮官が語るほど意識を置いていた相手だった。

日本はプレーオフ初戦でプエルトリコに勝利。この2戦目がアジアカップ決勝以来、約半年ぶりの再戦となった。

「台湾はワールドカップに相当注力してきたんだなというのが伝わってきました。ただ、日本としては細かいBaseball5を展開できれば勝機はあると考えていました」と、対戦した印象とポイントを語った本池監督。

しかし第1セットを0−3と落とすと、第2セットはさらに猛攻を受けてしまい0−11と連敗。相手にリベンジを許す結果となった。

「1セット目は最終回に2点取られて0−3だったのですが、そこは想定内でした。しっかり守れましたし、次のセットに向けて焦らせることができました。

ただ、2セット目から勝負となった時に、台湾の女子選手がいわゆる“チョン打ち”といった小技を絡ませるなど細かな工夫をしてきた。その時に対応できなかった形でした。

あと全体的に言うとやはり台湾の男子選手。世界的に見ても高いレベルに3選手がいて、その3選手が体も一回り大きくなっていてさらに強くなって大会を迎えていた。そんな印象を持ちました」

「危機感を感じて帰ってきた」大会での他国の印象

日本はチャイニーズ・タイペイ戦の後はトルコとの再戦。ここでは0−2で敗れたが、リトアニアに2−0で勝利しプレーオフでは2勝2敗の5割で終えた。

本池監督らは、試合がない日でも他国を視察していた。その中であることを感じていた。

「おそらく野球が盛んではないであろう国の強さが目立ちました。例えばケニア。女子選手にパワーがありましたし、全体5位に入っていました。

あとヨーロッパの国でも野球ってアジアやアメリカと比べて盛んではないと思いますが、トルコやフランスのフィジカルの強さを感じました。

バレーボールやクリケットなど他の競技をやっている選手もいたのですが、プレーを見ているとBaseball5の競技歴が数ヶ月という感じではなかったです。

何年もかけてしっかり取り組んでいるんだろうなという女子選手が多くいたので、我々も相当な危機感を持って帰ってきたのが率直な思いです」

7試合を戦い抜いた侍ジャパンBaseball5ユース日本代表。異国の地で連戦をこなす過酷な環境を乗り越えた先に見えた、日本の更なる伸びしろが明らかになっていく。

後編へ続く)

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