大学世代におけるバッテリーの適正を考える 〜信頼を得られる指導者になるための極意 〜

野球はもちろん、多くのスポーツにおいて世代ごとで指導法は異なります。なぜなら、体の成長具合も異なるだけでなく、プレーに対する考え方や練習量なども違ってくるからです。

そのため、指導者は教える選手の世代に合った指導法を取る必要があります。このコーナーでは、世代別に指導者が知っておくべきポイントをレクチャーしていきます。

今回は、筑波大学の准教授で硬式野球部監督の川村卓氏が、大学世代でのバッテリーの適正について解説します。

 大学生でピッチャーを任される選手は、ピッチャー側から野球を見ることに慣れているケースが多く見られます。そのため、大学世代のピッチャーには、相手のバッターが何をしてくるかといった考え方を身につけることで、ピッチングにも変化が生まれるということをわかってもらいたいです。

 長年、大学で指導をしてきましたが、この世代のピッチャーの多くは、いい球、速い球を投げたい、さらにいいコースに投げきりたいという意欲が強い傾向にあります。

しかし、実戦においては、ど真ん中に投げて勝負しなければいけないケースあります。だからこそ、バッターが何をしてくるかを考えて投球する必要があるのです。

バッターがどうしたいかを考えることによって、ピッチャーの負担度は大きく変わりますし、いつも全力で投げる必要がないことにも気付かされることでしょう。

 以前あるプロ野球球団の方に、中継ぎタイプのピッチャーばかりが増え、先発タイプのピッチャーが少なくなっていると相談をされたことがあります。

先発タイプのピッチャーになるためには、球種が多いということも重要になりますが、相手を見てどのように押し引きをできるかが重要になります。相手の身になって考えることが、大人のピッチングなんだって私はよく学生に指導しています。

 キャッチャーの適正でいえば、冷静さを保てる選手かということです。キャッチャーは野手で唯一フェアゾーンにいない存在でもありますし、一歩引いた立場で野球を見る視点も必要となります。

そのため、今自分たちがどういう立場に置かれているのか、相手ベンチや選手の様子、表情はどうかといった部分も見られるかが大事になります。

そして全体を見ながら今何をすべきかという視点を持つことがキャッチャーに大切なことです。これを指導するのは難しいですが、指導者としては、「こういうときに何を考えている?」「どういったことで落ち着かせられる?」「相手の表情はどう見えてる?」という問いかけをして、視野を広げる重要性を気づかせることが大事になります。

 現代野球ではピッチャーの役割分担が明確化されており、ピッチャーによってキャッチャーを交代させることもよく目にします。相性の良さを重視したバッテリーを組むことは間違いではないと思います。

しかし、私の考えとしては、キャッチャーは、ピッチャーが投げやすいように声掛けをはじめ、自分自身がどのような態度で対応すればいいかを考えられることが重要ですので、一人のキャッチャーが複数の捕手をうまくリードできればそれでいいと思います。

 私の経験上、普段仲が良すぎないバッテリーのほうがいい結果を残している印象があります。ほどよい距離感を保っていたほうが、ドライに状況を見られるのではないでしょうか。

ピッチャーと一緒に心中するんだという意気込みを持つキャッチャーもいますが、冷静にピッチャーを見られる関係性の方がいいのではないかと思います。

だから私はピッチャーの状態を確認するときは、必ずキャッチャーに聞いているので、いい距離感を保つバッテリーがいいと思うのかもしれません。

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