日本社会の就職市場において、野球界が考えるべき人間育成

「体育会出身の人材」

 日本のビジネスシーンにおいて野球部出身者やスポーツ経験者がよく有利と言われることがあります。これはデータにも出ており、体育会系出身者はそうでない人に比べ、就職活動において内定獲得率が高くなっています。

今後の野球界として、スポーツの特性をきちんと理解した上で指導にあたることも、今後の育成指導に置いて非常に重要になっていきます。

 では、なぜ日本社会において体育会出身者は好まれるのでしょうか。大きく理由は4つにわかれます。

1.レジリエンスが高い
2.組織での立ち振る舞いを経験している
3.目標設定と達成に対するアプローチの経験がある
4.「声」を出すことに慣れている

今回はこちらについて、解説していきます。

1.レジリエンスが高い

「レジリエンス」

 皆さんはお聞きしたことがありますか?この言葉は、一般的に「回復力」や「復元力」、「弾力」などと訳される言葉で、ここでは難しい状況に直面した場合にうまく適応できる能力やストレスがかかっても諦めない精神力という意味で使われています。

 一般的にスポーツを本気で取り組んだ経験がある選手は、競技人生の中で壁にぶつかることが多々あります。

 「試合で結果が出ない時」、「調子を落として試合に出られない時」、「理想の動きができない時」など、スポーツをやっていると上手くいくことは圧倒的に少なく、大半の時間をうまくいかない自分と向き合う時間になるのです。

また、そういった時間を過ごす際にチームスポーツの傍ら、調子の良い選手、難しいことを簡単にこなす選手など他人と比べてしまう時間も多くなります。

そのような内的要因と外的要因に大きく影響を受ける環境こそがスポーツでは、日常なのです。この経験は、普段の生活でも訪れる機会はありますが、スポーツの場面では圧倒的に多いことが特徴です。

 この難しい状況を経験し、解決に向け取り組み成果を出した経験こそが、スポーツの価値であり、この難しい状況にうまく適応し突破する能力は現在の日本では非常に重要な能力で、様々なハラスメントなどが大きく取り上げられる社会だからこそレジリエンスを備えた人材は評価が高くなる傾向にあります。

2.組織での立ち振る舞いを経験している

 野球はチームスポーツであり、組織で動くケースが多くあります。野球で言う組織で動くということは、チームとして試合に勝利するために、その時々において各々が自分の立場を理解して、主体的に行動するということです。

 わかりやすい例としては、打順には役割があり、トップバッターは出塁することが1番の目的でありますが、全ての試合、打席で同じ役割が必要なわけではありません。

打ち取られる時でも、なるべく多くの投球を見て相手投手の情報を収集することであったり、2打席目以降にはチャンスであればランナーを還すことが仕事になります。

また出塁したときには盗塁で進塁することやリードで相手投手にプレッシャーを与えることなども重要な仕事です。

 そういったプレーをしながら、自分の役割を考え今自分にできることを考える習慣が身につくため、社会に出たとしてもその場その場で与えられる役割を理解し、組織全体への貢献が考えられるようになるのです。

3.目標設定と達成に対するアプローチの経験がある

 これはスポーツ全体における共通の経験ではありますが、練習をする際に何を目標にしそのために何をすべきかを考えるということは社会において非常に重要なスキルです。

 目標を無しにスポーツに取り組む人はいないと思います。「世界で活躍したい」「県で1番になりたい」「レギュラーになりたい」「健康になりたい」など、規模の大小はあるもののスポーツをやる上での目的・目標は皆が持って取り組みます。

 そして、実際にスポーツを行うときには「レギュラーになる」ためには自分に何が足りないのか。克服するために何の練習をするのか。など目標を達成するためのアプローチに何が最適か考えるのです。

 仕事に対する取り組みも同様で、目標設定と達成に向けアプローチする経験は非常に重要な取り組みとなります。

4.「声」を出すことに慣れている

 ここでの声は、2種類の意味を持っています。

・挨拶や返事など、礼儀に関する「声」

・自分の意見としての「声」

上記の二つがあり、礼儀に関する声としては、社会人の一般マナーであり、ビジネスの基本となります。基本的な部分ではありますが、スポーツを行うことで他人と接することが増え、挨拶や返事をする機会が増え、自然と「声」を出す習慣ができるようになります。

また、自分の意見としての「声」ですが、これが重要で、先にご紹介したレジリエンスや組織での立ち振る舞い、目標設定でも共通しますが、自分で考えたことをアウトプットすることがスポーツでは多くなります。

そういった自分の意見を言える人材は近年では少なくなっており貴重な人材となり得るのです。

 ここまで大きく4つに分けて、体育会出身者が会社に好まれる理由を解説してきました。そして、この4つに共通することが「自分で考える」ということです。

これまでの野球界では野球の特色として一球一球、監督がサインを出して選手が実行するスポーツというものがありました。しかし現在の日本社会で求められている人材は「自分で考える」ということが非常に大きな要素となっています。

 この本質を理解した上で、どんな指導をするのか、どうやって選手と接するのか。指導者の方々には考えて取り組んでいただきたくと思います。

編集:Homebase事務局

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