【「Baseball5を学ぼう」】 80以上の国・地域で普及 ユース五輪の正式種目入りしたアーバンスポーツ「Baseball5」とは?

現在、世界的に普及が進んでいる野球型のアーバン(都市型)スポーツがあることをご存知だろうか。

その競技の名は「Baseball5(ベースボールファイブ)」。

4月に日本が「第2回 Baseball5 アジアカップ2024」で優勝し、26年にはユース五輪(15歳から18歳までを対象にした五輪)の正式競技として承認されるなど、世界約80カ国・地域で普及している。

今回より競技の概要から誕生、大会模様等を「Baseball5を学ぼう」という新連載でお送りしていく。

5人で行う野球型のアーバンスポーツ

Baseball5は野球・ソフトボールの国際振興の一環として、世界野球ソフトボール連盟(WBSC)によって考案・公式競技化される形で2017年に誕生した。

各チームは5名で対戦し、5イニング制となっており、この「5」が競技名の由来にもなっている。

ボールはゴムボールを使用し、グラブやバットといった道具は不要。”ボール1つでできる野球”であることが大きな特徴の一つである。

日本でも古くから行われてきたハンドベースボール(手打ち野球)のイメージに近く、打者は自らトスを上げて手で打つ。速い打球でスピーディーに試合を行えるため、新世代のアスリートに向けた競技でもある。

(グラブやバットが不要という気軽さが最大の特徴 ©BFJ)

また、守備では投手と捕手・外野手のポジションが存在しない。野球・ソフトボールでの内野手4人と、本競技独自に2塁ベース前方または後方に「ミッドフィルダー」が配置され5人で隊形をとる。

フィールドのサイズは野球場に比べて約1/5になっている(野球場の両翼と比較)。形は正方形でファールゾーンを含めると全体で21m、そのうち塁間は13m・ファールゾーンは3mとなっている。

プレーゾーンは縦横ともに18mであるため、野球のマウンドから本塁までの距離(18.44m)とほぼ同じである。

(Baseball5のフィールド図 ©BFJ)

プロ野球の球場は両翼約100m・中堅約120m、塁間も27.431mあることと比較すると、格段に小さいスペースで行えることが分かる。

これがアーバンスポーツとして、”どこでもできる”と定義される所以でもある。

Baseball5のルール

Baseball5のチームは男女混合で、試合に出る選手の5名に加えて控え選手3名の計8名で構成される。

野球同様に表裏それぞれ3アウト制で1イニングとし、上述の通り5イニング制で、5イニング終えるのにかかるのは20分程度である。

打撃について解説すると、バッターボックスは3mの正方形で、下図のように配置されている。

(バッターボックスは黄色塗りのエリア ©BFJ)

ボックス内であればどのように動いても問題ないが、ボックスから少しでも外で打ってしまうとアウトになる。

自分で打ちたい方向に打てる一方で、ホームランや三振という概念は存在しない。一度空振りをしたり、打球が場外に出た場合やフェンス直撃となってしまえばアウトとなる。(15歳以下は反則打球やファウルボールを打った場合、もう一度打ち直しができる)

また、打球がフェアゾーン方向に放たれた場合でも、本塁から4.5mの位置(15歳以下は3m)に引いてあるラインの手前(ノーヒットゾーン)でバウンドしてしまうとこちらもアウトになる。

(打撃は自分で打球方向を狙ってスイングする ©BFJ)

打者走者は、一塁のみファウルエリアに専用のベースがあるため打ったらそこに向けて走る。ただし、野球やソフトボールのような駆け抜けは、ベースから1.5mのセーフエリア内までしか認められていない。

もし、セーフエリアから完全に出てタッチされた場合はアウトに、仮にエリアから出てもタッチ前に片足でも戻ればセーフとなる。

(一塁ベースは衝突を避けるため2枚置きになっている ©BFJ)

走塁についても野球・ソフトボールと基本的に同じであるが、異なる点はスライディングが禁止されていることである。Baseball15は様々な場所で試合が行われる可能性があるため安全面に配慮してこのようなルールが設けられている。

守備は上述の通り5人で行うことが最大の特徴であり、ゴロの打球が来れば捕球して塁へ投げる。バウンド前に捕球すればアウトになる。フォースプレーやタッチプレーは野球・ソフトボールと同様である。

なお、守備に就く選手はチーム戦法に合わせて都度ポジションを変えることが可能となっている。

(5人で連携してポジションを変えながら守る ©BFJ)

Baseball5の誕生からユース五輪競技まで

この章では、競技の誕生から現在について記していく。

Baseball5のルーツは野球が盛んな国の一つであるキューバにある。国内で親しまれている遊びで、”4つの角”という意味である「クアトロ・エスキーナス」が発想の起点となった。

17年にWBSCの幹部がキューバを訪れた際、この遊びを見たことがきっかけにアレンジして公式競技化された。

18年1月からはガンビア共和国・ウガンダ共和国を始め、アフリカでの普及がスタート。同年5月にはチェコでセミナーを行い、初のトーナメント大会をローマで開催し、欧州へも拡大していった。

19年にはスイス・ザンビア・イスラエルなどでイベントが続々と開催され、

同年4月にはコロンビアで「WBSC Baseball5アメリカ大陸オープン」が開かれた。

7月にはアジア野球連盟(BFA)とソフトボール・アジア(SA)により「WBSC アジアベースボール5委員会」が設置され、野球の主要国でも広がりを見せていった。

そして20年1月にはIOC理事会で、22年開催予定だったダカール・ユースオリンピックに追加されることが決定(26年に延期)。

野球・ソフトボール競技がユースオリンピック種目となるのはBaseball5が初で、オリンピック競技としては初の男女混合競技でもあった。

(国際的な広がりを見せるBaseball5 ©BFJ)

Baseball5は野球・ソフトボールの国際的発展への鍵を握っている。

16年のロンドン五輪から野球・ソフトボールの2種目が外れ、21年の東京五輪で限定的に復活するも、パリ大会では再び五輪競技ではなくなった。

その背景として考えられるのは、野球はアジアやアメリカでは国技とも言える競技ではあるが、欧州やアフリカでは馴染みが薄いことが一つとしてメディアでも報じられてきた。

また、競技人数が1チーム20人以上(控え選手含む)と多いことや専用球場が開催国に必ずしも存在しないこと、そして放映権の関係上、試合時間の終わりが読めないことなども背景として挙げられる。

これに対しBaseball5は競技人数・コートの規模・試合時間といった部分は全てコンパクトとなっており、現在は80カ国・地域以上で普及が進んでいる。

(省スペースで開催できるアーバンスポーツとしての注目も高まる ©BFJ)

また、競技者の経済面における負担もないことが国際化に向けたプラス材料になっている。

野球は道具やユニフォームに費用がかかるため、近年様々なスポーツが子どもたちの選択肢に加わった日本においてもデメリットの一つとなっている。

特に、経済的に豊かではない国や地域ではさらにハードルが高くなってしまっていた。しかし、Baseball5はゴムボール1つで行えるため、まさに誰でも気軽に始めることができる。

これらの観点から、今後五輪競技への進出の期待が高まっていると言うことができるのではないか。

次回は、日本におけるBaseball5について深堀りしていく。

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