指導者へのアンケートを通じて分かった食事指導の現状

 スポーツにおける体づくりは、主にトレーニングによるものと食事によるものがあり、厳しい練習やトレーニングを積んでも食事を疎かにしては十分な効果は得られない。

 BFJとNPB共催で毎年1月に開催している野球指導者講習会では、食事・栄養に関する講義を開設し、指導者への知識の提供や、意識の向上をはかっている。

 しかし、これまで、指導者からその食事指導に関して実際に聞き取った調査事例は多くはなかったため、2020年度野球指導者講習会における「スポーツと栄養~成長期野球選手を例に~」の講義受講者を対象に、選手への食事指導についてのアンケートを実施。

 食事指導の現状と今後必要なことが明らかになったため、今回はその内容を紹介していきたい。

 アンケート回答者は455名。指導者を対象としており、40代が全体の41.1%を占め、続いて50代が30.8%、30代が18.7%という年代の分布を示していた。また、今回のアンケートでは主に小学生の指導者が全体の7割を占めているという点にご留意いただきたい。


 実施したアンケートではまず「これまでに選手に対し直接食事に関する指導をしたことがありますか」という質問に対し、指導したことが「ある」と回答した方が31.6%、「ない」と回答した方が68.4%ということで食事指導経験者が半数以下という結果になった。 

 食事に関する指導内容については、これまではとにかく米飯を食べるという米飯指導(一律の米飯摂取量を強制)をしているという報告がされてきた印象であったが、米飯の量ばかりでなく、副食や栄養価、摂取タイミングなどの回答が見られた。

 「あなた以外に、チームの食事に関して指導をしている人はいますか」という質問では、「いない」という回答が全体の6割以上で、続いて「コーチ」や「トレーナー」等の指導者が多いという結果になった。

 栄養に関する有資格者(管理栄養士・栄養士、公認スポーツ栄養士、栄養教諭、家庭科教諭)がチームの食事に関する指導を行っているという回答は10%未満に留まっていた。専門家から指導を受ける機会の確保が今後の課題と考えられる。

 また、「あなた自身、食事に興味・関心はありますか。自身の食生活に自信はありますか。自分で料理することは好きですか」という質問への回答を分析すると、多くの指導者が食事に興味・関心を持っていることが分かる一方、実際に選手に対する食事指導を行っている 指導者の方が、自身の食生活に自信があり、料理が好きである…というように、より食事に対して肯定的解釈をもっている可能性が明らかとなった。

 今回の調査から、今後も野球指導者に対し、科学的根拠のある情報を基に、各チームの環境にも配慮しながら、選手への正しい食生活の在り方を伝えるサポートが必要であると考えられる。

 Homebaseにおいても、食事指導や栄養に関する知識の情報提供を積極的に行っていきたい。

より詳しい調査結果は下記より

「野球指導者への食事指導に関するアンケート調査結果について」〔PDF〕

(立命館大学大学院 スポーツ健康科学研究科 海老研究室 首藤由佳)

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