「選手の能力を引き出す指導を 今話題のボディチューニング専門家とは」

野球界でデータ活用を用いて、パフォーマンスを上げようという考えが浸透してきた中で、技術だけでなくコンディショニングや身体操作能力向上にも注目が集まり始めている。

プロ野球でもパルクールやヨガを取り入れる選手が増える中、オフシーズンに多くの野球選手が訪れる「DIMENSIONING」という場所がある。

ボディーチューニングという本来のパフォーマンスを最大限出すための基本動作を追求するメソッドを提供するDIMENSIONING代表の北川雄介 氏にHomebase編集部が話を聞いた。

第一弾では、北川さんの指導実績などを聞きながら指導の考え方に迫ります。

プロ野球選手も訪れる「次元を超える」体験

-本日はよろしくお願いします。まずは自己紹介をお願いいたします。

 初めまして。DIMENSIONINGの北川です。よろしくお願いいたします。私たちの会社では筋肉や関節の正しい動かし方や、最新の機材を使うことでデータに基づくアプローチも行なっております。

 また弟子制度をとっており、40名ほどの弟子の中には、アスリートに限らず、日常の生活の中で身体が思うように動かないあるいは動きにくいというような一般の方にもエクササイズを通じてより良い状態になってもらえるように活動をしています。

 個人としては、現在大学生、社会人、プロ野球選手を中心に野球に特化して施術やエクササイズを行なっております。

-「DIMENSIONING」という会社の名前の意味を教えてください。

 「DIMENSION」という単語自体には「次元」という意味があります。その言葉に対してINGを付けることで、次元を超えていくという意味になれればと思い、今の社名にしました。

ここに来ることで、その場でレベルアップすることはもちろんレベルアップのきっかけを掴むことで選手が今の次元を超えていってもらいたいと考えています。

私としても今までその選手が見えていた景色や世界が変わっていけるような場にしたいと思っています。

-現在はプロ野球選手も実際に施術されているということですが、これまでの指導実績を教えてください。

ヤクルトの奥川投手やファイターズの髙濱選手、タイガースの及川投手などが、実際に来てくれています。2021年のドラフト会議では、会社として関わりがあった選手9名が指名されました。

僕自身が担当していたのは3名になりますが、その中でいちばん印象的だったのは読売ジャイアンツに2位指名された山田龍聖(高岡商業高ーJR東日本)投手です。2020年の11月ごろから利用いただき最もエクササイズに来てくれた選手です。

 また、サポートをさせていただく中で最も変化があった選手でいうと千葉・幕張総合高校の村山亮介選手が挙げられますね。プロ野球選手輩出実績0の高校でしたが、今回のドラフトで千葉ロッテ育成4位で指名されました。

 他にも大学生では、東京六大学野球連盟の立教大学の荘司康誠選手(新潟明訓高-立大)も担当しています。

彼は長期間肩を痛めていてボールをしばらく投げられない状態でうちに来ましたが、施術と痛みが出ないような身体の使い方を指導したら全力で投げられるようになり、次の日にはMAXタイの球速を出してその1週間後には144キロを投げるようになり1ヶ月後には149キロと順調に球速が上がり、今では151キロまで出るようになりました。今年のドラフトで注目になるかもしれない選手だと思います。

-選手が「DIMENSIONING」に来るきっかけはどんな事が多いのでしょうか?

 荘司投手は、大学2年生の冬ごろから来てくれたのですが、当時は全く投げられる状態ではなく、3年生までに投げられるようにならなければ、選手を諦めて裏方に回ることになるかもしれないという状況の時に初めてお会いしました。

その後は、先ほどお話ししたように急激に良くなって3年春から投げられる状態になりました。指導する際の自分のポリシーとして、お客さんと初めてお会いするまではその選手について変に調べないようにしています。

あくまで、その場で見た状態や感覚を大事にするように心がけています。変に先入観を持った状態で接してしまうと、その選手に対して適切な言葉掛けや身体を触った時のアプローチができない可能性があるので、施術をする中で今までどういう怪我をしたのかといったヒアリングをするようにしています。

基本的に選手の今の状態に合わせてその場で色々なアプローチをしています。

選手を変えるのではなく、選手が変われるよう能力を引き出す

-今までのお話を聞くと北川さんの選手への向き合い方が垣間見えた気がします。

 荘司投手の例でもそうですが、元々素晴らしい才能を持った選手たちなので自分が人を変えたというようには思いたくないです。

僕個人としては、本来出せるパフォーマンスが出せてない状態で、その障害となっている引っ掛かりのようなものを取ってあげることが僕の仕事なのかなと思います。

他にも、継続するのが苦手な選手やすぐフォームがコロコロ変わってしまうような選手に対しても上手くマネジメントをすることで選手の本来持っている力を出せるようにする、そんなことができればと考えています。

 プロ野球選手の場合でも、コーチやトレーナーの方など多くの方がその選手に関わっています。そういった状態の中で、色々な要素が複雑に絡まり、偶然自分が関わったタイミングでいい方向に転べばそれはそれで嬉しいことですね。

 選手にも行動特性がそれぞれあるのでそれを理解した上での声かけを心がけています。例えば、東京ヤクルトスワローズの奥川投手のような例だと、自分のことを客観視できていて、まだまだ改善できるポイントがあると考え、常に向上心を持っているという選手です。

選手自身が違和感を覚えている部分を客観的にピンポイントで分かっている場合は、こちらとしても施術をやりやすいです。

 一方、少し見ない間にフォームがコロコロ変わるような選手もいます。その選手自身は研究熱心で色々なものを調べたり発見するのが得意なタイプなんだと思います。

そういった選手には、フォームにアプローチをするのではなく、自分がやりたい動きや力の伝え方を考えた際にどこの筋肉が動くようになれば良いのか、どういう感覚を持てるようになれば良いのかを考えるほうが良いのでは?という話をしたりします。

 その人の行動特性を変えることはとても難しく、本人が本気で変わりたいと思ったタイミングでしか行動特性や思考パターンは変わらないものです。そこを踏まえた上で、目の前にいる選手の思考パターンや本当の課題と向き合いアプローチをしている形になります。

目的は選手が所属チームで輝くことができるようになること

-ひとつとして同じ指導は無いわけですね。先程の話でも少し出てきましたが、施術を受ける選手にとっては、北川さんは所属するチームの外部にいる立場ですがその点で意識されていることはありますか。

 毎日選手を見ることは厳しいという前提でコミュニケーションを取るようにしています。個人的に施術をする上で難しいと感じる選手のタイプとしては、先程話をした、発見型でフォームがコロコロ変わるタイプの選手です。

そういった選手は毎日向き合うことができれば理想ですが、外部という立場にいるためなかなかそうもいきません。

 コミュニケーションの取り方としては、フォームではなく身体の部位や筋肉の動かし方に目を向けてもらえるように意識しています。不安を感じやすいような選手の場合はその不安一点に集中しないように、他の部位に目を向けさせたりもします。

 不安を感じるとコルチゾールというストレスホルモンが分泌されます。そこで血流を良くするようなエクササイズを取り入れることで、身体の状態を整えるようにしています。不安になって色々考えすぎてしまう選手にはあえて早く寝ろとだけ伝えることもあります。

 外部という立場ゆえ、選手が所属しているチームの指導者批判も耳にすることもありますが、あまりにも度が過ぎている場合はこちらから選手に対して言わせてもらうこともあります。

 あくまで私の目的は、その選手が所属しているチームで輝くことができるか、見える景色や次元を変える事ができるのかということであり、この点を念頭に置いて接するようにしています。この考えが指導をする方の中で浸透していってほしいですね。

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