「好きな野球を楽しみたい」150名が在籍する浦和ボーイズの取り組み(中山典彦監督)

 部員が150名を超える埼玉県の浦和ボーイズ。野球人口が減少の一途を辿る中、なぜここまでの大所帯となったのか。父母会や当番は一切なし。

試合には部員全員が出場し、グラウンドでは笑顔が絶えない。自身は東北高校(宮城)で甲子園に3度出場、明治神宮大会でも優勝するなど野球エリートだった中山典彦監督。

野球に必要なのは「人間力」と話す指揮官。第1弾では、浦和ボーイズの取り組み、大切にしている考え方を聞いた。

「勝つことを目的としない」非勝利至上主義の浦和ボーイズ

―2008年に発足された浦和ボーイズですが、大切にされている理念は何でしょうか?

 自信のない子というか、野球は好きなんだけどなかなか前に出られないような子をたくさん見てあげて自信をつけさせてあげるということですね。

そうしないと高校野球に繋がらないので、そういう想いでやっています。あくまで子供たちが成長する為に指導したり野球を教えたりはしますが、勝つことを目的とはしていません。

―非勝利至上主義を掲げる浦和ボーイズが発足した経緯を教えてください。

 同じ埼玉のボーイズチームで手伝いをしていたんです。そこでやっていく中で色々な問題点って見えますよね。

私は監督でもなく雇われコーチだったので、保護者や子どもたちからの相談、別のスタッフからの相談を聞いていく中で「もっとこうしたらいいのにね」ということがどんどん出てきて。

そこにいた保護者から弟たちを入れるチームがないからやってくれないかって言われて、保護者からこういう方針でやってくれと求められたことが、きっかけで作りました。

父母会はなし。子どもたちに「失敗」を経験させる

―父母会も当番係もないチームは珍しいと思います。

 私がチームやりたくて子供を集めようと活動しているのに、自分たちがやるべきなんじゃないか?と思って。会社に例えると、会社を運営している人がふんぞり返ってなにもしないで社員に働かせる組織って良くないですよね。

同じようにチームで親たちを働かせるってどうなんだろうって思ったんです。だったら当番係もないし父母会もないし、煩わしいものを一切取り払ったらうちに入ってくれるんじゃないかと。

―父母会がないことで選手たちへはどのような影響があるのでしょうか。

 うちのチームはとにかく経験を大事にしていて失敗をOKとしています。大人は子供の失敗を恐れる、失敗をさせたくないから先回りする傾向にあります。これ持ったの?やったの?って。

そうすると失敗をしないわけです。失敗しないから実際に失敗した時にどうしていいかわからなくなってしまう。

例えば今日ここに来るまでに、当然車で送ってくれるご家庭もありますが、うちは「基本的に送らなくてもいいですよ。」と保護者に通達していて、最寄りの駅まで何時の電車で来てくれって連絡網をまわすんです。

そうすると電車の乗り方も覚えます。下級生のころは結構、失敗するんですよ。乗り換えを間違えたり逆に乗っちゃったりとか。そうやって失敗することですごく勉強になると思っているので、(失敗は)想定内なんですね。

それを大人がフォローしてあげるという体制を作れば、子供はどんどん成長していくという考え方です。

野球は、(確率論で言うと)ほぼ失敗するスポーツなので。失敗すれば怒られるとか外されるとか、そういう勝利至上主義の考え方が野球離れの要因で、どんどん野球をやりたくない子が増えてしまうと思います。

そういう意味でも私は、子供には失敗して欲しいと思っています。

―浦和ボーイズでは、すごく“自ら行動する・考える”ことを大切にされているように感じます。

1,2年生の頃は、実際には遊んでいるような練習です。その中で勝ちたいって自分たちで思っていくとこんな練習したいあんな練習したいと言ってくるんですよ。目標も高くなってくるし。

そうなってきたら(指導者側としても)しめたもんで、「じゃ、やろう。」と。でもこっちから押し付けることはしません。

ただルールは教えます。例えば「道具を綺麗に並べる」とか「道具をきれいに磨く」とか「身なりをきちんとする」とか「挨拶をする」とか。ちゃんとやらなければならない意味を教えます。

こういった話は野球あるあるで、やって当たり前とよく言いますけど、中学生からすると、意味が分からなかったらできないじゃないですか。

グラブの磨き方もどうやって磨いたらいいかわからないのにやれと指示されても磨けるわけないがない。だから浦和ボーイズでは、全部勉強会をします。

スパイクの磨き方、グラブの磨き方、なぜ返事をするのか、なぜ道具を並べないといけないのか。「チームの中で楽しく気持ちよく野球ができるように」というためのハウスルールを徹底して教える。

野球の技術に関しては、下手な子もいればうまい子もいる。それは運動神経が関係するものだから人それぞれです。責めるのではなく、なぜエラーしたか考えなさい、なぜミスをしたか考えなさい。

じゃあ、どんな練習が必要なのか考えなさい。自分で考えることを教えてあげないから、今の子たちはどんどん指示待ち人間になってしまうんですよね。

浦和ボーイズでは、失敗することを恐れずに自分から動ける人間になってほしいと思い、指導を心がけています。

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