部員が150名を超える埼玉県の浦和ボーイズ。野球人口が減少の一途を辿る中、なぜここまでの大所帯となったのか。父母会や当番は一切なし。試合には部員全員が出場し、グラウンドでは笑顔が絶えない。
自身は東北高校(宮城)で甲子園に3度出場、明治神宮大会でも優勝するなど野球エリートだった中山典彦監督。
野球に必要なのは「人間力」と話す指揮官。第2弾では、中学野球という思春期を過ごす中での子どもとの接し方、チームビルディングの意識、を中心にお話を聞いた。
モチベーションを保たせ、責任感を育む組織作り
―ポジションの決め方はどのように?
ほぼ各個人の希望で、2つ以上のポジションはやってもらいます。自分で希望したポジションじゃないと、モチベーションが上がらないので。
チーム事情で、最終学年の時にこのポジションがいないとか弱いというときには、個別にやってくれないかって話はしますが、基本は自分でやりたいところです。
やりたいところだから一生懸命取り組めます。ピッチャーなんてやりたいって手を挙げた子が投げているだけです。
チームに入る際に、最初に「3年まで競争して最後の夏ベンチ入りできるように頑張りなさい。」と説明します。
それまでは全員出してあげるけど、最後の大会は負けたら終わりだからその時点でのベストメンバーを選ぶと伝え、それぞれが自分を客観的に見てチームで活躍できるポジションを自分で考えられるように導いています。
加えて、最後は誰よりもチームを想ってる25名にしたいよということも子供達には伝えています。
―キャプテン制度など、チームビルディングについても教えてください。
キャプテンと4人くらい副キャプテンがいます。それ以外に内野、外野、ピッチャーの責任者みたいなのも置いています。
役割を与えるとその役が選手を育ててくれるのでトイレ係、倉庫係とか組織図的にしてリーダーがいてその下に係がいてというところまで落とし込みます。責任感を持たせることも含めて。
例えば先日あったのが、トイレ掃除係が5人いるんですけど練習前からいたのが1人のみで、他の4人が遅れてきた。だけど私がトイレ見たときにトイレットペーパーがなかったわけですよ。
あとから来たとしてもなぜ責任者もしくはやった人に今日はトイレ掃除をやったかって確認をしないの?と。全員がどこかの係に所属しています。全員に責任感を持たせることが大切です。
―中学生でここまで役割を持たせるチームは、そう多くない気がします。
トイレ掃除は子どもだけでなく、私もするようにしています。子どもは大人を見ています。大人がやらないで子どもがやるわけないじゃないですか。やってみせることは大事ですよね。
こうやって掃除するんだよって。紙でトイレを拭くことすら子どもたちって嫌がるわけですよ。でも、大人が目の前で見せたらやらざるを得ないじゃないですか?
ただやれって言っても大人は信用されないですよ。私も子供たちに伝えることは、自分でも全部やろうと思いますね。ゴミを拾えっていったらゴミも拾うし、スパイクを磨けっていうなら自分の靴も綺麗にしています。

―進路指導についても選手たちに考えさせるのでしょうか?
浦和ボーイズには、成績がいい子も多いんです。慶應義塾や慶応志木、早大本庄や早大学院、開成高校など、進学校へ多く進学します。
そうかといえば甲子園常連校の東海大相模や二松学舎もいます。進路に関しては、子どもたちの選択と努力を重要視しています。私が誘導するのではなく、彼らが努力して入れてくださいとなるので、縁を繋ぐようにします。
進路相談をする中で、まずは自分できちんと考えなさいと。なぜそこに行きたいのか、どうしたいのか。どうしても甲子園に行きたいのか、それとも勉強して大学にも行きたいのか、レギュラーとして試合に出たいのか。
本人の中で何を重要視するかを考えないと進学先って選べないですよね。それを考えさせる2年半でありたいと思っています。中にはいますよ。「俺、監督に紹介してもらってどっかいれてもらうから」って子が。
聞こえた瞬間にその選手には「いれないからね」って。努力をしない限り入れません。
毎年成績表もコピーでもらっています。通知表の(成績評価の)数字ではなくて、授業中の態度や提出物がちゃんと出されていないとか意欲がないとかそういうところをみます。
夏休みの宿題なんかもこの日までに終わらせなさい。終わってなければ宿題が終わるまで帰れといって練習に参加させないこともあります。達成するために、努力する感覚を養っていくことも人間育成では必要だと思っています。

