1月20日・21日の2日間、2023年度の野球指導者講習会 (BASEBALL COACHING CLINIC)が行われた。
年に一度行われる本講習会では、カリキュラムに実技講習が組み込まれている。全4項目(投手・打撃・守備・捕手)あり、NPBでプレーしたOB陣がそれぞれ講師を務めた。
本編は打撃編として、今浪隆博氏による講義をお送りする。
(文:白石怜平)
日本ハムとヤクルトで活躍し、現在はメンタルコーチも務める
打撃編の講師を務めたのは今浪隆博氏。
平安(現:龍谷大平安)高校から明治大学を経て、2006年の大学・社会人ドラフト7巡目で日本ハムに入団。2014年途中にヤクルトへ移籍し、内野全ポジションを守れるユーティリティプレイヤーとして活躍した。
2016年には94試合に出場し、打率は.279、得点圏打率は.344をマークするなど打撃でも勝負強さを発揮した。
2017年に引退後は、現役時代に病気を患った経験などから翌年に「スポーツメンタルコーチ」の資格を取得した。

講師を務めた今浪隆博氏
現在はアスリートやチームのサポートを行う傍らで、軟式実業団「ゴリラクリニックベースボール」の監督を務めている。
今浪氏は冒頭、大切なことは「自分に合うもの・(指導者は)選手に合うものをチョイスする引き出しを多く持つこと」とし、「今日はみなさんのレパートリーが増えるお手伝いができたらと思います」と話し、スタートした。
今浪氏が重要と考えるバット軌道は”後ろ”
この打撃編のメインテーマとして伝えたい事は”バットの軌道”であるとした。
今浪氏が大切と考えるバットの軌道、それは体の中心から後ろ(トップからインパクトまで)であると語る。
「バットとボールが当たる瞬間は一瞬です。この時までにバットを加速させて力を伝えられる状態で迎えたい。なので、いかに効率よくヘッドスピードを上げてインパクトを迎えられるかが重要だと僕は考えています」

スイングの軌道は”後ろ”と今浪氏は考える
振り始めの力を最大化することで遠心力とバットの重さが加わることで、ヘッドスピードが上がっていくと説いた。同席した学生選手が実演した際、もう一つのメリットを解説した。
「前の軌道を意識するときと比べて、(ミート)ポイントが違ってきます。バッティングってここ(※下図参照)で一番力が発揮できることが重要。俗に言う、体の中でボールを捉えられている状態になります。前すぎると変化球に対応することが難しくなってきます」

最も力の伝わるミートポイントを示した
さらに、「後ろの軌道を意識したスイングを習得することで”手を残す”ことができるため、動く球や落ちる球も見極めやすくなります」と加えた。
”後ろの軌道”を意識づける練習方法
今浪氏はスイングを身につけるにあたり、「感覚を変えることはすぐできるが、実戦で使えるレベルになるには時間が必要です」と語る。ここからはその意識づけをするための練習方法を紹介した。
「普段ティーバッティングは斜め前から投げると思いますが、横から上げてみます。この時に意識してほしいのは『うまく打とうとする』のではなく、『スイング軌道だけをイメージ』してください。実際の試合では横から来ることはないので、試合では意味はないです。あくまで意識づけの練習です」

スイングの意識づけのために行う横からのティーバッティング
講義の最後はバットの出し方。これまで解説したスイング軌道で振るための方法を明かした。
「グリップエンドを前に出すのではなく、少し下に動かしてからスイングを始めるイメージ。すると、バットの軌道は後ろから加速させやすくなります」

グリップを一度下げることでヘッドスピードを高められると説いた
再度学生選手が実践すると、強い音と共に鋭い打球が上がっていった。今浪氏も打球の変わり具合に「すごく動揺しています」と驚きを隠せなかった。
最後に改めてこの回のまとめとして、バットの軌道・その中でも後ろの軌道を意識する・ボールを呼び込むことで選球眼が向上する。この4つを整理して講義を終えた。
その後は質疑応答に。約30分間、オンラインで受講者の質問に答えていった。

