(サムネ画像提供 SAMURAI JAPAN/Gettyimages)
今年7月28日から8月6日にかけて台湾・台南市で行われた「第7回 WBSC U-12 ワールドカップ」。井端弘和監督が率いた侍ジャパンU-12代表はオープニングラウンドでチャイニーズ・タイペイとベネズエラに敗れたものの、スーパーラウンドでは韓国、アメリカ、ドミニカ共和国に3連勝。3位決定戦ではベネズエラに敗れたものの4位入賞を果たした。
その背景には、井端監督が選手たちのことを思った様々な施策と、それに応えた選手の理解力があった。
スマートフォンの利用を時期によって制限した理由
――監督就任2年目ということもあって、選考において昨年の経験を生かした部分はどのようなところでしょうか?
今回から選考の際に親御さんも交えて選手と面談させていただいたことは大きかったですね。「日頃、家庭ではどんなことを重要視しているのか」などを聞き、こちらからも「侍ジャパンに選ばれたからには、言動において、大人のカテゴリーでも子供のカテゴリーでも変わらない責任がある」ということを伝えました。選考から集合まで1ヶ月あったので、そうしたことを親子で話し合って理解して来てくれたのではないかと思いました。
――このU-12世代は、やはり親御さん理解があってこその部分は大きいですよね。
体は大きくなってきても、まだまだ子供の部分もありますからね。今回はほとんどの親御さんが台湾まで来てくれて、一歩二歩引いたスタンスで見ていてくれたことは指導者側もやりやすかったですし、子供たちもやりやすい距離感だったのではないかと思います。

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――各選手のスマートフォン使用を時期によって制限していたのも印象的でした。
特にオープニングラウンドの間は彼らに1回も返していません。あくまで選手たち同士でコミュニケーションを取って欲しかったからです。一方、スーパーラウンドに進んでからは、3人部屋でずっと同じメンバーでいることにストレスを感じるだろうと思って、親と食事に行く時間やスマートフォンを返してリフレッシュしてもらう時間を設けました。そのメリハリの使い分けができたことも大きかったです。
――そうしたメリハリに応えてくれる選手たちでもありましたよね。
こちらの意図としていることを理解してくれましたよね。例えばスマートフォンをずっと返さなくてもストレスを感じたでしょうし、すぐに渡してもコミュニケーションが疎かになって上手くまとまらなかったと思います。良いタイミングで使い分けができました。
――あらためて、そうしたメリハリのあるチームを作れた要因はどんなことでしたか?
こちらも考えながら、時期によって「会話をなるべくさせる」「ストレスを取り除く」など使い分けることができました。疲れていると思えば練習を休みにしましたし、こちらが最善と考えて選択していたことの意図が選手たちにも伝わったのかなと思いました。
ホテルで同じメニューが続いたら外食させに行きましたし、そこにスタッフがいても邪魔だからと思い、スタッフは前日に下見へ行って、翌日は選手たちだけで行かせました。あとは上手く親を使いながら、リフレッシュして戻ってくることもできました。
大切なのは「ミスをした後」
――試合に向かうにあたってもメリハリに気を配っているように見えました。
「早く試合をしたい」という思いが先行して、疲れてしまう選手もいましたので、試合に向けてどう状態を高めていくかということを大事にして欲しいですね。どんなに高い能力を持っていてもグラウンド上で出し切らなければ意味がありませんから。投手の試合の入りはあまり上手くなかったですね。助言はしたのですが落ち着きが無い投手もいて、グラウンドに出て行かないよう一時的に別部屋で隔離したくらいです(笑)

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――井端監督から大切にされてきた「戦う姿勢」という点では、最後のミーティングで「ミスした選手がその後にした気迫あるプレー」を褒めていたことが印象的でした。
あれは本当に良かったですね。ミスは誰でもするし、その後の姿勢をずっと見ていました。その前の守備で打球を後逸していた藪内雅也(堺ビッグボーイズ)の打席を見ていると、「こんなに振れるんだ」と「こんなに気迫を出せるんだ」と驚きました。普段はどちらかというと淡々とプレーする選手だったのですが、そんな彼が気の入ったスイングをしてフェンス手前まで運んだ。僕はこれが彼の中の今大会1番の打撃だったと思います。だからこそ「これをいつもやるんだ」ということを伝えました。そうしたら凄く良い選手になると思いますよ。持っているものはすごいのですが、内気で周りに遠慮して野球をするようなことがあったのですが、あれで変わってくれればいいですね1930
――今回のチームは本当に「成長を感じる」チームでしたよね。
どの選手もそうですよね。駒勇佑(湖南ビッグボーイズ/6本塁打を放つなど個人賞4冠)も最初は端っこの方でミーティングを聞いていたのに、大会が進むに連れて前の方で聞くようになりましたし、自分から声を発するようになりました。最初は早生まれの中学生より、しっかりとした小学6年生が引っ張るようなチームでしたが「それではいけない」と途中から早生まれの中学生が引っ張るようになったことも良かったです。

